「なんで入ってきたの?」から東京Vユースの大きな武器に。“異色の韋駄天”MF木下晴天が魅せる、最高時速34.4キロの破壊力
ただ、ほかの選手との違いが、チームの大きな大きな武器になっているのは間違いない。今年の東京Vユースは中央に主将のMF下吉洸平(3年)、MF若月蓮(2年)といった技術力の高い選手を配置。彼らが作ったタメから推進力のある右の木下と左のDF原田爽潤(2年)がサイドを崩すのが得点パターンだ。
前半7分には、自陣でボールを奪ったDFカマラ・シェック・セザール(3年)からのパスを受けるとドリブルで対面するDFをかわし、シュートまで持ち込んだ。
「最初のプレーで抜け出しから相手をかわして、ファーに打つことができた。シュートは外れたのですが、あのプレーで今日は行ける日だと思い、そこからガンガン行こうと意識していました」(木下)
ファーストプレーの感触が木下のバロメーターになっていて、仕掛けた際にグッと前に出ることができた日は身体が軽く、自信を持って思い切った突破ができるという。プレーに確かな手応えを感じた木下は直後の9分に右サイドをぶち破り、MF広瀬怜音(3年)の先制ゴールをお膳立て。以降も快足を活かした突破を繰り返し、相手の脅威になり続けた。
縦一辺倒にならないことも彼の特徴だ。トップ下から右ウイングバックに持ち場を移した昨年はプレミアリーグで19試合に出場し、3ゴール。自身のプレーに自信をつかむ一方で、上には上がいると思い知らされたという。
「FC東京の佐々木将英(現・筑波大)とマッチアップしたら、馬鹿ほど速くて吹き飛ばれた。中を見せて縦を仕掛ける。縦を見せて中を仕掛ける。そうしてジグザグに見せないといけないと気付けた」
今季は9節を終えて無得点とゴールには恵まれていないが、ドリブルのキレは増しており、「今のところプレミアで抜けなかった試合はあまりない」。警戒されていても簡単には止めることのできない韋駄天の活躍は今後も続いていくだろう。
最高時速34.4キロを計測するスピードの速さ、チーム1と呼ばれる持久力はサッカー以外でも活かされており、中学2年生の頃は世田谷区の陸上大会に出場し、1500メートル走では中学3年生を押しのけ1位になった。そうした称号を誇りつつ、「でも、中3になったら全国9位の選手が世田谷に転校してきて、2位になった。バケモンでした」と話にちゃんとオチを付けるキャラクターも彼の良さかもしれない。
そうした走力は小学生の頃から際立っていたが、当時は周囲と比べても身長が小さかった。中学に進学する際、Jクラブのアカデミーへの加入を希望したものの、サイズ感を重要視するチームも少なくない。そうしたなかでも小さくても取ってくれたチームが東京Vだった。
「ヴェルディの特徴である上手い選手ではないから、ジュニアユースの頃は『なんで入ってきたの?』みたいな雰囲気があった」と振り返るが、上手いチームだからこそ彼の走力は際立っているのは確か。技巧派たちに揉まれたことで足もとの技術も格段に上がっている。
この秋からはU-21Jリーグがスタートし、今の活躍を続けることができれば出番も訪れるだろう。「高卒でプロになりたい。ここから頑張るしかない」と意気込むスピードスターの飛躍はここから本格的に始まっていく。
取材・文●森田将義
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