高齢者は、本当に折り紙を楽しんでいる?(mapo/stock.adobe.com)※画像はイメージ

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高齢者が集うデイサービス(通所介護)や老人ホームでは、脳を活性化させるためのレクリエーションとして、「童謡」や「ぬり絵」などが採用されている。

【写真】かつて、競馬を楽しんだ人もいるのでは?

だが、笑顔で対応する介護士さんたちに反して、当の高齢者の多くは無表情で「レクリエーション」の時間を過ごしている場合もあるという。

そんな介護業界の「古いままの常識」に疑問を呈するポストをX(旧Twitter)に投稿したのは、有料老人ホームなど14年以上介護の現場を経験している、ケアの言葉屋(@Carekoto17)さん。

「こんな子どもだまし、やらせるな」

「『お年寄りは、折り紙とぬり絵が好き』

 介護業界に蔓延るこの呪い、そろそろ終わりにしないか。

介護の現場で働いてきて、ずっと強烈な違和感があった。フロアに集められ、童謡を流され、ぽんぽんと風船を打ち合う時間。これに参加しないと「意欲低下」と記録される。

いや、ちょっと待ってくれ。 若い頃はバリバリ働いて、週末は競馬場で怒号を飛ばし、夜は酒をあおっていたような人が、施設に入った途端『ちゅーりっぷ』を歌って喜ぶと本気で思っているのか。

以前、ある80代の男性入居者が、スタッフから渡されたぬり絵を床に叩きつけたことがあった。 『こんな子どもだまし、やらせるな』と。 

周りのスタッフは『認知機能の低下による易怒性』と片付けようとした。でも、違うと思う。プライドの問題。

僕は翌日、その人に競馬の専門紙を渡してみた。 すると、老眼の目を細めながら血統や過去のデータを見比べ、『この馬は前走のパドックがどうのこうの』と、僕と1時間以上も熱く語り合った。 その時のギラギラした目の輝き。これこそが『生きる意欲』じゃないだろうか」

<ケアの言葉屋さんのXの投稿より>

介護業界の「悪き習慣」

ケアの言葉屋さんのポストは、835万以上表示され、「よくぞ言ってくれました」といった共感の声が殺到した。

投稿についてケアの言葉屋さんに詳しく聞いたところ、「高齢の方を無意識に子ども扱いしてしまう幼児語」や、「一律に童謡を歌うようなレクリエーション」に長年強い違和感を覚えていたという。

「介護業界では、幼児語での声かけや、一律で童謡を歌うような『子ども扱い』が推奨されているわけではまったくありません。むしろ厚生労働省の指針でも、『尊厳の保持』が最重要視されており、1人の人生の先輩として、高齢者への敬意を持った対応が求められています。

では、なぜそれが現場に残っているかというと、かつての『介護=お世話・保護』という価値観の名残です。認知機能が低下した方に対して、『わかりやすく、優しく接しよう』とするあまり、『子どもに接するような態度』へと歪んで定着してしまったという、悪しき慣習だと捉えています」(ケアの言葉屋さん)

介護現場で働く方々の中には、ケアの言葉屋さんと同じく、現状の「レクリエーション」や「言葉使い」に疑問を感じている人は少なくないという。

「特に他業界から転職してきた方や、現場に入ったばかりの新人職員は強い違和感を覚えることが多いです。しかし、ベテラン職員が悪気なく(むしろ良かれと思って)幼児語を使っている環境下ではなかなか指摘しづらいのが現実です。

また、日々の業務に忙殺されるうちに、その違和感が麻痺してしまったり、『おかしい』と思いながらも声を上げられない葛藤を抱えていたりする介護職は少なくありません」(ケアの言葉屋さん)

相手を「大人」として接すること

認知機能が衰えていたとしても、相手を「大人」として接するべきだと、ケアの言葉屋さんは言う。

「言葉使いについては、『親しみやすさ』と『馴れ馴れしさ』を明確に区別した、敬意のある丁寧な言葉(敬語)が基本だと考えています。過剰にかしこまる必要はありませんが、ベースには必ず『大人の関係性』があるべきだと思います。

レクリエーションに関しては『選択の自由』と『その人の歩んできた人生(生活史)』に対する尊重が理想です。幼稚園のような一律の集団レクではなく、ご本人が本当に好きなことを見つける個別対応が重要です。

例えば、かつて好きだったプロ野球のナイター中継を一緒に楽しむ時間を作ったり、その方の趣味嗜好に合わせた『大人としての余暇』を提供できるのが理想だと考えています」(ケアの言葉屋さん)

その人の人生に対して「誠実に向き合うこと」

今回の投稿に対して多くの反響があったことについて、「介護のあり方について、疑問や関心を持ってくださっている方がこれほど多くいらっしゃることに確かな希望を感じています」と、ケアの言葉屋さん。

「介護は決して『ただのお世話』ではなく、相手の尊厳を守り、その人らしく生きるための『専門的なサポート』です。現場は多忙で、常に完璧なケアができるわけではありません。僕自身、質を求めるあまり葛藤することがあります。

しかし、完璧でなくても目の前の方の人生に対して、『誠実に向き合うこと』だけは妥協してはいけないと、今回の反響を受けて改めて感じています」(ケアの言葉屋さん)

現在の70代はユーミンや矢沢永吉らと同世代の、いわゆる「ビートルズ世代」。

デイサービスや老人ホームの利用が可能になる65歳なら、「24時間戦えますか」を地で行く時代を働き抜き、バブルを謳歌したW浅野世代だ。

そんな世代にも、「ぬり絵」や「童謡」や「折り紙」が「脳を活性化させるもの」になり得るのだろうか。

ケアの言葉屋さんの投稿通り、介護業界もそろそろ「古いままの悪習」を一新すべきタイミングにあるのかもしれない。

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ リュウ)