脳科学者の中野信子先生が子どもの「感情のコントロール」について教えます。

■「嫌な思い、ネガティブな感情は、成長に欠かせない材料です」

「友達から意地悪された」
「自分は悪くないのに先生に叱られた」
「算数のテストができなかった」

子どもが落ち込んでいるとき、嫌な思いをしているとき、親としては何とかしてやりたくなるでしょう。でも、その「嫌な思い」、負の感情は、子どもにとっては成長のチャンスです。

そもそも人間の脳は、強い不安を感じるように進化してきました。扁桃(へんとう)体という部分が主にその役割を果たしています。ここは危ないぞ、そろそろ嵐がくるぞ、そんなネガティブな思いがあるからこそ、生きながらえてきたのです。また、失敗して「恥ずかしい」と感じることも、同じことを繰り返さないよう脳に学習させるために必要なことです。

親にとって大事なのは、子どもが失敗しないように先回りして、何もさせないことではありません。さらに、親が失敗を怖がりすぎると、子どもは挑戦しなくなり、安全圏から出なくなります。

子どもの頃の失敗は、柔道でいう「受け身」を覚えるレッスンと考えるといいでしょう。本当は投げられないほうがいいに決まっていますが、どんなに強くても投げられることはある。そのときに大けがをしない転び方を知っているかどうかで、ダメージが変わります。人生も、失敗しないことより、リカバリーの方法を知っているほうが重要です。

学校から落ち込んで帰ってきたときは、相談相手になってやると、子どもにとって大きな安心材料になります。親自身が体験したことを聞かせるのもいい方法です。「点数を取るだけなら、カンニングという方法もあるけど……」など、選択肢としての禁じ手を教えるという手もあります。「でも、今はごまかせても、将来の自分のためにはならないけれどね」とフォローを付け足すこともお忘れなく。損得を考えさせるプロセス自体が、脳の「前頭前野」を鍛えるトレーニングになります。

ただし、特定の人に嫌なことを言われていたり、いじられていたりする場合は、注意が必要。相手の言うことを黙って受け入れてしまうと、どんどん言い返せなくなり、「いじり」から「いじめ」に発展する可能性があります。ひどいことを言われたときは、はっきり言い返すよう伝えましょう。言葉で身を守れることを教えてください。

※本稿は、『プレジデントFamily2026春号』の一部を再編集したものです。

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中野 信子(なかの・のぶこ)
脳科学者、医学博士、認知科学者
東京都生まれ。脳科学者、医学博士。東日本国際大学特任教授、京都芸術大学客員教授、森美術館理事。2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。著書に『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)、『サイコパス』(文藝春秋)、『毒親』(ポプラ社)、『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』(サンマーク出版)、『エレガントな毒の吐き方』(日経BP)、『脳科学で解き明かすあの人の頭のなか』(プレジデント社)など。
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(脳科学者、医学博士、認知科学者 中野 信子 構成=大島七々三 イラストレーション=深川 優)