(※写真はイメージです/PIXTA)

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多くのマネジャーが陥る罠があります。それは、膨大なデータを分析し、誰が考えても導き出せる「正解」を探す作業に忙殺されてしまうことです。しかし、論理的な正しさに基づく「判断」と、正解のない不確かな状況で道を選ぶ「決断」は、全く別物です。吉野家HD会長・河村泰貴氏は、「リーダーにしかできない役割」を明確に定義しています。同氏の著書『自分以外のすべてがわが師 高卒バイトが2000億円企業の社長になれたわけ』(日経BP)より、リーダーに不可欠な「決断力」の磨き方をみていきましょう。

2種類の意思決定…「判断」と「決断」の違い

皆さんが今着ている洋服や身につけているもの、または持ち歩いているもの、それはどんな理由で選んだのでしょうか? 「急に何を聞くのか?」と思われたかもしれませんが、実は「判断と決断」というテーマにとても関係がある問いなんです。

正確に行う「判断」は、間違いや失敗の確率を低く抑えることができる

意思決定には「判断」と「決断」の2種類があるとわたしは考えています。「判断」とは、原則として誰が考えても同じ答え、選択になるような意思決定です。

AとBという1000万円の投資案件が2つあるとします。人的資源の投入など、その他の条件はほぼ全く同じですが、Aは毎年100万円の利益が見込め、Bは毎年50万円の利益が見込める場合、誰が意思決定をしてもAを選択しますよね。これが「判断」です。

会社、特に本部と呼ばれるところでの仕事のほとんどは、意思決定を「判断」の領域に近づけるためのものと言っても過言ではありません。「判断」は、正確に行えば、間違いや失敗の確率を極めて低く抑えることができます。

出店を検討する際の売上予測も、売上計画と実績の差異分析もすべて、次に実行する会社としての意思決定を間違えないようにするため、成功確率を高めるため、すなわち意思決定を「判断」にするために行われているのです。

結果が読めない「決断」は、リーダーにしかできない

一方、「決断」はこれとは異なります。どちらも正解かもしれないし、不正解かもしれない。けれども、どちらか一方を選択しなければならないとき、あるいは、不確かな情報しか得られない中での意思決定も「決断」です。

先ほどの投資案件の例で言えば、投資額と予想リターンが同じ案件が2つあり、そこから1つしか選べない、あるいは、短期的には利益を生まない(赤字になるかもしれない)が長期的には大きなリターンが見込める案件にゴーサインを出すかどうか、といった意思決定です。

2種類の意思決定のうち、リーダーにしかできないのが「決断」です。

リーダーにしかできない「決断」に伴う説明責任

何が正解かわからない中で決めなければいけない「決断」には、頭と心に負担がかかります。わたしの場合、「それはリーダーである自分にしかできない意思決定か?」と考えた上で、そうでない場合は部下に任せるようにしています。本当に重要な「決断」を下すときのために、自分自身の時間や思考を節約しておきたいからです。

また、「決断」には、「こういう理由でこの戦略を選択した」というように説明責任が伴います。特に、わたしたちの業界は、事業規模に比べて関わる人の数が多いという特徴を持っています。だからこそ、「なぜ、何のためにそれをするのか」という説明責任が求められるのです。目的を共有しなければ、それは単なる「やらされ仕事」になってしまいます。

ここで、冒頭の質問に戻ります。皆さんが今着ている洋服や身につけているもの、または持ち歩いているもの、それはどんな理由で選んだのでしょうか?

日々の「決断」を言語化すると、説明するための訓練になる

人は、毎日数々の小さな「決断」をして生きています。無意識のうちに、数々の選択肢の中から何かを選択しています。そのことに少しだけ意識を向け、言語化してみると、それは自分がリーダーとなったときの説明責任の訓練になるんです。

「決断」には頭と心に負担がかかると書きましたが、わたしたちが何かとルーティンをつくって行動するのも「決断」の負担を軽減するためです。毎日、朝の身支度の順序や通勤ルートを変えたりしていたら疲れますからね。

決断力は「現場」で磨かれる

では次に、どうすれば決断力が磨かれるか。実は、最も決断力が磨かれるのは店舗などの「現場」だとわたしは思います。店での仕事は、毎日同じことの繰り返しのように見えても、実際は突発的な出来事の連続です。そのたびに、店長やスタッフは「決断」を迫られます。目の前にお客様がいらっしゃる以上、じっくり検討したり相談したりする時間はありません。

自身を振り返ってみても、店舗時代に「決断力」が培われたと感じています。失敗もたくさん繰り返しながら、「決断」する際の自分なりの基準のようなものを段々と習得していきました。

もちろん、「判断」も大切です。正しく「判断」するには一定の知識が必要なことも多いのですが、それは、その知識が必要とされたときに学習すればよいのです。

リーダーの方は、何かを選択する際、自分の意思決定がいったいどちらなのかを意識してみてください。そして、自分にしかできない「決断」の割合を高めるようにしましょう。

河村 泰貴

吉野家ホールディングス

会長