もっと早く相談して来いよ…吉野家HD会長が部下の「やらかし隠蔽」をきっかけに、チームに徹底させた〈たった一つのこと〉
仕事をしているうえで、トラブルはつきものです。責任が重くなればなるほど、一度のミスが大問題へと発展し、最悪の場合、企業の経営まで揺るがしかねません。本来であれば、こうしたトラブルの深刻化を防ぐのが「報告」ですが、実際には言いづらい場面も多いもの。本記事では、吉野家ホールディングス会長の河村泰貴氏の著書『自分以外のすべてがわが師 高卒バイトが2000億円企業の社長になれたわけ』(日経BP)より、部下が起こしたトラブルへの対処法について解説します。
「やらかし報告」は、先延ばしにすればするほど大ごとになる
皆さんには、「やらかし経験」はありますか? 全く言い逃れや言い訳のできない、何をどう説明しても明らかな自分の過失、失敗のことです。誰しも一度や二度、いやもっとかな。身に覚えのあることですよね。わたしにだってたくさんあります。
誰でも、失敗や自分に都合の悪いことは報告しづらいものです。ましてや業務上のことであれば、評価が下がるのではないかとか、ある意味、保身のような心理が働いてしまう。大事なのは、やらかしてしまったその後なんですね。
やらかした直後は、それほど大した問題ではないと判断し、自力で対処しようと試みるも、実はそう簡単に解決できることではなく、時間が経過したことでもはや自分の手に負えなくなるほど、大きな問題になってしまう。こうなってからでは遅いのです。自分の失敗は失敗として素直に認め、恥を忍んで、迅速に、正直に、報告することが何より大切です。
部下の「トラブル隠蔽」をきっかけに、チームに徹底させた「合言葉」
わたしにも思い当たる経験があります。「もっと早く相談して来いよ」というやつです。
記憶に残っているのは、賃貸借契約の解約絡みのトラブル。それまで何の報告も受けていなかったので順調に進んでいるとばかり思っていたら、実は家主様と解約条件でもめにもめていて(それもこちらの応対に失礼があったことが発端)、わたしが相談された時点では、もはや取り得るオプションが限られてしまっていました。
せめて問題発生の初期段階で報告してくれていれば、ここまで問題が大きくならなかったのに、という案件です。
でも、今振り返ると、抜き差しならない事態になるまで、彼がわたしに報告してこなかった(できなかった)のは、「報告しづらい関係」を放置していたわたしに責任があったのです。それ以来、わたしは自分のチームで「バッドニュース・ファースト」という言葉を意識的に使うようにしました。
あえて「悪い報告」を笑って聴く理由
悪い報告ほど、笑って聴く。そのうえで、悪意や故意は許さないが、過失や未熟は叱責しない。この点を強く言い続けました。最も重い罪は隠蔽です。失敗や問題の大小を問わず、隠蔽した事実そのものに対して厳しく対処する。だから悪い情報から先に報告してほしいと言っています。
この「バッドニュース・ファースト」を奨励していくと、チーム間の信頼関係が醸成されていきます。なぜなら、結果だけで評価をしなくなるからです。
過失や未熟を許す風土は、個人攻撃が起こらず、挑戦を促進します。そして、チーム全員で、「バッドニュース」から逃げずに向き合うことができれば、そのチームメンバーの学びの総量は大きくなります。なぜなら、「バッドニュース」の影響を受けることになったチームメンバー全員が、その原因を考えるようになるからです。
「バッドニュース・ファースト」をぜひ意識してみてください。
河村 泰貴
吉野家ホールディングス
会長
