ミセス「音漏れ問題」、M!LK・キュースト「緊急生配信」…GWライブをめぐる2大ニュースから見えてきたもの
業界内の議論がGWライブで顕在化
ゴールデンウィークはエンタメ業界のかき入れ時。大型イベント開催だけでなく、サブスクの動きも大きく、SNSの再生回数も伸びるため、どのジャンルでも活発な動きが見られた。
なかでも、最も力の入っていたのがアーティストとその関係者。千葉の『JAPAN JAM』、埼玉の『VIVA LA ROCK』、宮城県の『ARABAKI ROCK FEST.』、富山の『ONEFES』、大阪の『OTODAMA』、大分県の『ジゴロック』などのメジャーアーティストが集うものだけでなく、中小型の音楽フェスも全国各地で開催された。
もちろんアーティスト単体のライブもあり、これらは全国からファンを集結させやすい連休ならではの現象にほかならない。連休中のフェスやライブは既存ファンを満足させるだけでなく、ライト層の格上げや新規ファンの獲得という点での重要度が上がっている。実際、連休中ネットニュースが次々にアップされたほか、SNSには参加者らのコメントをあがり続けていた。
その中でも目立っていたのが、「ミセス、音漏れ鑑賞禁止令」「大型フェス強風中止で落胆と歓喜」というニュースとそれに対する反響。ただ、2つのニュースの論点である“アーティストとファンの距離感”と“ビジネスとファンサービスのバランス”は以前から業界内で議論されていたことだった。
「今回のゴールデンウィークをきっかけに変わっていくのではないか」というムードが生まれているだけに、その具体的な内容と今後の行方を掘り下げていく。
「音漏れ目的」をめぐる対応の是非
前述した2つのニュースを大まかに書いておくと、まず「ミセス、音漏れ鑑賞禁止令」は、Mrs. GREEN APPLEが4日・5日のヤンマースタジアム長居公演についてXで発表したコメントとその反応。
4日、ミセスの運営サイドが「【音漏れ目的のご来場は禁止】フォトスポット以外で会場外に滞留されている方におかれましては、ATTENTIONでご案内しております通り、『音漏れ』を目的とした鑑賞や滞留は禁止とさせていただいております。公園および周辺通路は近隣住民の方々の生活動線となるため、チケットをお持ちでない方の鑑賞および滞留は通行の妨げになる行為かつ近隣住民の方々への生活に影響が出る可能性があり、ご迷惑となりますのでご遠慮いただけますようお願いいたします」と呼びかけ、これに賛否の声があがった。
このところミセスに限らずライブにおける音漏れ目的の来場が増え、近隣住民への迷惑行為などが問題視されていただけに、当然の対応に見える。しかし、現実は「音漏れ狙いの人々が騒がしかった」「多くの人々がいて注意する人の声にも耳を傾けない」などの批判があったほか、「会場内に外の声が聞こえてきてライブに集中できなかった」という来場者のコメントも見られた。
ただ、その一方で「あれくらいなら問題ないレベル」「サッカーのほうが声は大きい」「公園内のスタジアムならどんな目的で来るのも自由」などの擁護もあり、多少の問題こそあっても全面的に対応が不十分というレベルではなかったのかもしれない。
それでも、屋外の会場なら音漏れがあるのは当然であり、不快に思う人がいるだけでなく、「チケット代を支払っている人に対してもフェアではない」という指摘もある。さらに「ライトなファン層は運営サイドによるSNSの発表では気付かずに来場してしまう」などの問題点をあげる声もあった。
しかし、人気アーティストのライブにおける問題は音漏れだけではない。
ファン絡みのイベント対応に課題
ミセスの運営サイドはライブ終了間際にもXに「【ヤンマースタジアム長居周辺での滞留禁止:直ちにご移動ください】「終演後は退場されるお客様で会場周辺が大変混雑いたします。周辺通路での滞留は、退場されるお客様の流れに支障をきたし、思わぬ事故が発生するおそれがあり、大変危険です。お客様の安全確保のため、会場外での滞留は改めて、固くお断りいたします。直ちにご移動をお願いいたします。周辺通路や公園は近隣住民の方々の生活動線となっており、 チケットをお持ちでない方の鑑賞および滞留は通行の妨げになる行為かつ近隣住民の方々への生活に影響が出る可能性があり、ご迷惑となります」と投稿した。
この“滞留”はライブ参加者だけでなく、グッズ購入者、音漏れ目的の来場者などが加わるため、おのずとトラブルのリスクが高くなる。ライブ終了直後の興奮もあるため、事故や事件の発生、近隣住民への迷惑行為などが起きやすい状態と言っていいかもしれない。運営サイドへの「もっとしっかり誘導や警備、注意や通報などをすべき」というムードが高まっているのは間違いないだろう。
とはいえ、運営サイドにしてみればファンは重要な存在であり、迷惑行為をする一部の人に合わせて善良なファンにも我慢を強いることは避けたいところ。また、少しでも対応を間違えたら運営サイドが容赦なく批判され、アーティスト本人にも飛び火してしまう危険性があるため、身動きが取りづらいところがある。
音楽業界、引いてはエンタメシーンにおいては、このようにファン絡みのイベント対応に弱いところがあり、「様子を見ながら対処方法を決める」「一応何らかの動きをネット上で発表しておく」という消極的な姿勢が目立っていた。
ところがミセスはその人気と知名度の高さから、良くも悪くもネットメディアにとって最重要なアーティストとなっている。「ミセス」を含む記事をアップすれば一定以上の結果を得やすい上に、ネガティブな内容ならさらに数字が上がりやすいため、ネット上が過熱しやすい。
「緊急生配信」で運営も株を上げた
彼らのファンにしてみれば、「他のアーティストも同じような問題があるのに、なぜミセスばかり目の敵にされるのか」という気持ちになるのも無理はないだろう。しかし、ミセス本人というより運営サイドに向けられる目は日増しに厳しさを増している。
昨年7月26日・27日に横浜山下ふ頭特設会場で行った野外ライブの音が広範囲に響き、多数の苦情が寄せられ、謝罪する事態に至っていた。また、今年4月18日・19日にもMUFGスタジアム(国立競技場)での花火演出で神宮球場のプロ野球公式戦を一時中断させ、野球ファンを中心に疑問の声があがったことは記憶に新しい。
いずれにしても、ミセスの運営サイドに積極的かつ健全な対応が求められていることは確かであり、今回の反響も含めて、すでに「注意喚起」だけでは済まない状況になりつつあることは理解しているのではないか。
一方、「大型フェス強風中止で落胆と歓喜」は、4日開催予定だった『JAPAN JAM2026』が強風で中止になったことへの対応と反応。同日の出演予定だったM!LK、CUTIE STREET、ILLIT、ME:IらがYouTubeやInstagramなどで緊急生配信を行い、ファンたちを喜ばせた。
M!LKはフェスの出演予定時刻に合わせて生配信をはじめて楽曲を披露し、CUTIE STREETはセットリストや新衣装を紹介したほか振り付けクイズなどを行い、ILLITはフェスのパフォーマンスを実演。さらにILLITの生配信中にCUTIE STREETがサプライズ出演し、レアな共演がネット上を沸かせた。
いずれも音響やスペースなどの不足をいとわない行動力とサービス精神が「神対応」などと称賛を集めたが、ポイントは来場できなかったコアなファンだけでなくライト層にも向けた対応だったこと。さらにその迅速な対応はアーティストとスタッフの関係性が良く意見が一致しなければできないことだけに、運営サイドへの高評価にもつながった。
今回の緊急生配信は、単なるコア層へのファンサービスではなく、ライト層の好感度アップ、動画再生やリリース収益などの点でビジネス的な成果も得られるのだろう。これだけの好結果がそろった以上、今後は他のアーティストも同様の対応が間違いなく浸透……というより、「自分たちだけやらないわけにはいかない」という状況になっていくのではないか。
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【つづきを読む】ミセス、M!LK、CUTIE STREET…GWライブトラブルで露わになった、ファンが求める「神運営」の条件
