値引きではなくもとから安いのがBYD流! 他の中華メーカーとは一線を画す巧みな戦略とは

この記事をまとめると
■タイでBEV販売トップを独走しているのが中国・BYDだ
■BYDのBEVはガソリン車並みの価格で市場の常識を破壊している
■BYDの値引きではなく「最初から安い」という価格戦略で支持が拡大している
タイでのBEV販売ではほぼ一強のBYD
タイ国内でのBEV(バッテリー電気自動車)販売で圧倒的な強みを見せるのが、中国のBYDオート(比亜迪汽車)。2025暦年(2025年1月から12月))締めでのタイ国内での車名別BEV年間販売台数ランキングをみると、トップは1万2435台を販売したBYDドルフィンとなり、以下シーライオン 7が3位、ATTO 3が4位に入っている。

そのBYDは、2026年3月25日から4月5日の会期で開催された「第47回バンコク国際モーターショー」にて、BEV3台(シール 6、ATTO 2[日本ではPHEV導入予定だがタイではBEV]、ATTO 1)とPHEV1台(シーライオン 5 DM-i)を発表した。
モデル自体の魅力だけではなく、その価格設定もかなり戦略的であった。コンパクトBEVとなり、タイでBEV販売ナンバー1となるドルフィンは、ほかの複数の中国系ブランドも同カテゴリーのモデルをラインアップしており、コンパクトBEV自体が販売激戦クラスとなっている。そのなかでドルフィンよりサイズが小さく、インドネシアで大ヒットしているATTO 1をタイでも市場導入し、新たな層の囲い込みを狙ってきたようだ。

価格は標準航続距離車で42万9900バーツ(約215万円)となっている。ATTO 1より小さいマイクロコンパクトBEVというカテゴリーがあるが、たとえば長安汽車のルミンL(ATTO 1より全長が655mm短い)の標準レンジの価格は47万9000バーツ(約233万円)となり、ATTO 1のほうが安くなっているのである。
BEV普及率が20%を超えるタイでは、とくに量販モデルをラインアップする中国系ブランドの間で大幅値引きなどのBEV乱売傾向が顕在化している。BYDはそのなかで、大幅値引きを避ける代わりに車両価格の値下げを行うことで再販価値の維持を図ってきたが、ここ最近は発表当初から驚くような車両価格を設定するようになっている。マイクロBEVより安いATTO 1の価格はそのひとつの例に過ぎない。
BEVなのにトヨタのハイブリッドよりも安い
タイでは、ICE(内燃機関)車も含むクロスオーバーSUVの販売台数では、トヨタ・ヤリスクロスがトップとなっている。BYDのATTO 2はBEVながら、そのヤリスクロスサイズ(全長同じ)を採用するクロスオーバーSUVタイプBEVとなっている。ヤリスクロスのタイでの廉価グレードとなるHEVスマートの価格は80万9000バーツ(約404万円)なのに対し、ATTO 2の廉価グレードであるダイナミックの価格は62万9000バーツ(約314万円)となっている。

シール 6は、カローラより全長や全幅は若干サイズアップしているものの、ほぼカローララスのRWD(後輪駆動)となるラグジュアリーBEVセダンとなっている。そのシール 6の廉価グレードであるダイナミックの価格は89万9900バーツ(約449万円)。カローラ(現地名カローラ・アルティス)の廉価仕様は純ガソリン車となる1.8Gで90万9000バーツ(約454万円)、HEVでの廉価仕様となるHEV スマートで94万9000バーツ(約474万円)となっている。
「安かろう悪かろうでは?」との疑問が出そうなところだが、シール 6を実際にチェックしてみると、シール5 DM-iよりも明らかに質感がアップしており、とくに重厚な音とともに開閉するドアには感動してしまった。

タイでも圧倒的なシェアでブランド別販売トップとなるトヨタをベンチマークとしているかは定かではないが、BEVでさえHEVや純ガソリン車並みの価格戦略で挑むBYDは、タイでの売れ方を見ても全クラスで好調な販売を続けている。ほかの中国系ブランドのような期間限定での大幅値引きよりも、BYDの「いつでもお値打ち価格」というのが、タイの消費者には受け入れられているようである。
再販価値を意識するタイでは、確かに大幅値引きで乱売するよりもお値打ち価格設定で販売するほうが再販価値維持に有効なのは間違いない。もちろんBYDが目立ったインセンティブ(購入特典)を用意していないわけではないが、ほかの中国系ブランドとは一線を画す価格戦略をとっていることは間違いない。


