【金 敬哲】K-コスメ、K-POP…韓国「ソフトパワー企業大躍進」でも「大企業指定」リスト入りで奈落に落ちる罠
「重厚長大」から「ソフトパワー」へ
2026年、韓国経済は史上初となる「大企業集団100社時代」の幕を開けた。韓国では、系列会社の資産総額が5兆ウォン(約5600億円)を超える企業集団を、公正取引法に基づき「公示対象企業集団(通称:大企業集団)」に分類し、特別管理を行っている。2024年の88社、2025年の92社に続き、今年は歴代最大規模となる102の集団が選定された。
今回の発表で最も注目すべき点は、世界的な韓流ブームに乗り、韓国経済の柱が「重厚長大」型の製造業から「ソフトパワー」中心へと移行していることだ。
まず、今年初めて大企業集団に名を連ねた企業の中で目を引くのが、Kフードの先駆者「オリオン」だ。代表的なヒット商品である「チョコパイ(日本の森永製菓のエンゼルパイに似たチョコレート菓子)」は、2025年の1年間で23億個が販売された。これは1秒間に70個ずつ売れた計算になる。韓国内よりもロシア、中国、ベトナムなどの海外で圧倒的な人気を誇る。特にロシアでは、現地の茶文化に合わせ、様々なジャムを入れた12種類のローカライズ商品を発売し、爆発的なヒットを記録した。
Kビューティーの象徴である「韓国コルマ」も新たに大企業集団に選定された。化粧品の世界的ODM企業である韓国コルマは、1990年に日本コルマとの合弁で設立されたが、2022年に日本側の持分をすべて買い取り、100%韓国資本の企業として生まれ変わった。現在は日本コルマと世界市場で受注を争う「師を超えた弟子」として、その地位を確立している。
ファッション流通企業として新規指定された「大明化学(テミョン化学)」は、日本の若者の間でも絶大な人気を誇る「マタンキム(Matin Kim)」や「キルシー(KIRSH)」などを傘下に置く、Kファッションの代表格だ。文在寅政権下の「ボイコット・ジャパン」運動当時、ユニクロの代替商品として脚光を浴び、韓国国内での認知度を高めた。現在はK-POPアイドルの宣伝効果もあり、世界的な売上を急速に伸ばしている。
変動する韓国経済の重心
日韓間の政治・通商的対立の中心にある「LINEヤフー」も、ネイバー(NAVER)系列の大企業集団として括られ、71位で新規参入した。2023年の個人情報漏洩事故を機に、日本政府からネイバーとの資本関係の見直しを迫られているものの、韓国の公正取引委員会は依然としてネイバーが実質的な支配力を行使していると判断し、リストに掲載した。
2024年にBTSの所属事務所「HYBE」がエンターテインメント企業として初めて大企業集団に指定されたことは、象徴的な事件だった。2026年現在、HYBEは資産約5兆5000億ウォン規模で財界順位89位にランクインしている。純粋なエンタメ企業としてはHYBEが唯一の大企業集団だが、CJ ENMを筆頭とするコンテンツインフラの巨人「CJ(13位)」、SMエンタテインメントの筆頭株主となった「カカオ(16位)」、ウェブトゥーン(スマホ向け漫画)やメタバースで武装した「ネイバー(22位)」と「LINE(71位)」などが、すべて「広義のエンターテインメント系列」として括られ、グローバルな韓流ブームの勢いを証明している。
財界上位の地殻変動も、韓国経済の現状を如実に物語っている。2025年に7位だった韓化(ハンファ)グループは、防衛産業とエネルギー事業を武器に、ロッテやポスコを抑えて史上初めて財界5位に浮上した。サムスン(1位)、SK(2位)、現代自動車(3位)、LG(4位)が不動の地位を守る中、5位の座が流通(ロッテ)や鉄鋼(ポスコ)から、安保・エネルギー(韓化)へと移ったことは、韓国経済の戦略的な重心がどこに移動したかを象徴する出来事として受け止められている。
「規制の網」の中へ
ただ、大企業集団に指定されることが、企業にとって決して喜ばしいことばかりではない。韓国で「大企業」の名簿に名を連ねた瞬間、網の目のように張り巡らされた「財界上位の地殻変動」に組み込まれることになる。系列会社間の資金・資産の流れや、商品・サービス取引に関する公示義務が課せられ、支配構造や債務保証の現況など、内部事情を余すところなく公開しなければならない。さらに、内部取引や「仕事の割り当て(身内への利益供与)」に対する厳格な管理が行われるなど、大企業集団に指定された瞬間から、50を超える規制の対象となる。
これに関連し、最近、公正取引委員会が韓国最大級のEC企業であるクーパン(Coupang)の「同一人(総数、すなわち企業の実質的支配者)」を、クーパン法人から金範錫(キム・ボムソク)議長に変更したことを巡り、韓米間の通商摩擦の兆しまで見えている。
クーパンは米国に本社を置く米国企業の韓国法人であり、2021年に大企業集団に指定されて以来、一貫してクーパン法人が「同一人」に指定されてきた。しかし、最近の大規模な顧客情報流出事件をきっかけに、韓国政府による規制と圧迫が強まり、「同一人」が法人から創業者である金範錫議長へと変更された。
「同一人」に指定されれば、本人だけでなく親族が運営する小規模会社の取引内訳まで詳細に公開しなければならないなど、一挙手一投足が公正取引委員会の監視下に置かれる。また、労働災害事故が発生した際には刑事責任まで問われる可能性がある。外資系企業の場合、法人が同一人に指定されるのが一般的だが、異例にも米国人である金範錫議長に「同一人」としての義務を課したのである。
これに対し、クーパン側は行政訴訟を準備中であり、米国政界からは米国企業に対する差別だとして強力な抗議の声が上がっており、韓米間の通商摩擦に発展しかねないとの懸念が出ている。
韓国企業を待ち受ける「規制の予測可能性」
大企業集団100社時代の韓国企業は、特有のダイナミズムと独創性で世界的な企業へと成長した。米国の「ムーンパイ」からインスピレーションを得て誕生したオリオンの「チョコパイ」は、ローカライズ戦略によって本家はもちろん、森永の「エンゼルパイ」までを軽々と追い越した。
日本コルマを母体とした韓国コルマは、世界的に類を見ない独歩的な「提案型ODM(製造者が単なる下請けではなく、製品の企画・設計・部品調達・生産・検査までを担う形態)」システムを構築し、グローバル・ビューティー産業の強者として確固たる地位を築いた。
日本のアイドル文化から学んだ韓国のK-POPシステムは、アジアを越えて全世界のアイドル産業の標準モデルとなった。元祖である日本が作った既存の成功モデルを完璧に吸収・再解釈し、グローバル市場の主導権を掌握しつつあるのだ。
しかし、主導権を握り巨人へと成長した企業に対し、韓国社会は「大企業集団指定」という名の緻密な規制網を被せている。韓国経済界からは「成長が即、足かせになっている」との批判が上がっている。さらに、韓国政府がクーパンに加えている異例の圧迫は、「規制の予測可能性」を重視する海外企業にとって、投資の魅力を半減させる要因となっている。
過去の慣行と硬直性に囚われ、成長のモメンタムを逃した日本と、成功の結実がむしろ規制という名の足かせとなって跳ね返っている韓国。この二国は今、異なるようで似通った「成長の逆説」に直面している。
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