【中川安奈のFRIDAYReport】フェンシング・江村美咲が明かす「集大成の次期五輪」への想い

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異彩を放つブロンドの五輪メダリストが登場!メンタルとの向き合い方から「集大成」と語る次の五輪への想いまで明かした。

試合当日をいかにご機嫌な状態で迎えられるかということは意識するようになりました。結果的に試合のパフォーマンスにも直結することに気がついて。短期的にも長期的にも、ご機嫌でいることを大切に…

--フェンシング漬けの日々に限界がやってきて、身体にも影響が出始め、休息すること、切り替えることの大切さを学べました。

「今」「ここ」「自分」に集中

中川 それでも試合前にはやっぱり緊張が高まってくると思いますが、いつもどうされているんでしょう。

江村 メンタルの先生に教えてもらったメソッドを取り入れています。その先生もご機嫌でいることを重要視していて。最初に教えてもらったのは、まずご機嫌の価値を書き出してみる。私の場合は、足がよく動くとか、疲れにくいとか。人によってメリットが色々あるはずなので。

中川 私も今すぐに書き出したいです。

江村 イライラしてしまった時にはその状態を自覚する。そして、気づいたからといってダメだって思わない。とにかくご機嫌の価値を思い出す。

中川 自己否定しないようにするんですね。切り替えることに集中する。

江村 イライラするだけで損だなって思うと、切り替えられるんですよ。それともうひとつのメソッドが「今」「ここ」「自分」に集中するということ。過ぎたことや、未来のことではなく、「今」、「ここ」にいる、「自分」だけがコントロールできるものだから。終わったことや「負けたらどうしよう」みたいに、これからのことを考えても仕方がないじゃないですか。

中川 江村さんは団体でもキャプテン的な立ち位置です。トッププレーヤーでありながら後輩を指導するのは大変ではありませんか? 自分もまだまだ現役で上を目指したいし、後輩に簡単にポジションは渡せないぞ、というような気持ちもあったりしないですか? これは局員時代の私の話なんですけど(笑)。

江村 私もそれが現在進行形の課題ですね。まだまだ負けていられないという思いがある反面、チームの士気も上げていかなければいけない。みんながもうちょっと全体のことを考えてくれないと厳しいなって。自分もそこにすごい精神をすり減らしていたこともありました。自分がペースを乱してしまっては元も子もないので、具体的なストレスを減らす3つの考え方を実践しています。

中川 ぜひ教えてください。

江村 「期待より応援」「同意より理解」、そして「正誤より相違」。この3つです。たとえば、誰かに注意や指導をした時に、その後改善されることを「期待しない」。そして、相手の主張に同意はできなくても、「理解」は示してあげる。正しいか正しくないかを争ってもキリがないので「違い」をまず認めていく。

中川 中間管理職が全員知るべきメソッドですね。正直、後輩や部下と関わるうえで、自分が一番ラクなスタンスは「無関心」だと思っていた時期もありました。

江村 他者と向き合うことってエネルギーを使いますからね。自分より若い世代だと気もつかいますし。

中川 これを指摘したら私がうるさいおばさんになっちゃうのかな、なんて。

江村 言わなきゃよかった、って思う時ありますよね。だから線引きじゃないですけど、今お伝えしたくらいのバランスでやるのが、自分が集団でやっていくうえで居心地がいいなと感じます。

次の五輪が集大成になる

中川 最後に、次のオリンピックは現時点でも強く意識されていますか。

江村 もちろん一番大きな存在です。

中川 今はどんなふうに気持ちを調整されているんでしょうか。

江村 結果も大切ですけど、戦っている瞬間を楽しめている状況が選手として一番充実している瞬間で。舞台が大きくなればなるほど、充実感が増していくものなんです。パリではそれが満足にできなかったという反省もあります。金メダルは五輪では獲れていないので。日本フェンシング女子の歴史のなかでも金メダルはありません。やはり人が達成していないものをやり遂げたい気持ちはありますよね。年齢、キャリア的にも最後の五輪になるかもしれない。その後のことはその大会が終わってから考えようと思っているので、一旦そこが最後のつもりで集大成として挑みたいなという気持ちです。

中川 あと2年強。長く感じますか?

江村 あっという間だと思います。練習を詰め込んで自分を追い詰めていた時と、時間の感じ方も変わりました。

《取材後記:中川安奈》

今回、江村選手と話していて特に心に残ったのは「本番を楽しみたい」という言葉。

「戦っている瞬間を楽しめている状況が一番充実している」ということでしたが、その領域に辿り着けるのはそれ相応の努力と時間を積み重ねて準備した人だけ。

私も緊張する仕事の直前は「よし、あとはもう楽しもう!」と思うのですが、やっぱり少しでも不安な点や心配事を残したままだと、そんな心の余裕は全く生まれてきません。

それでも無理矢理に楽しもうとすると、ヘラヘラしたふざけている人みたいに見えてしまうことすらあります。

大事な本番に向かう前は周りからも「楽しんでね!」と声をかけられることがありますが、実はそれはとても難しいことで、悔いのない準備ができた人のみが味わえる感覚だと思っています。

穏やかな笑顔とまっすぐな眼差しで語ってくれた江村選手からは、自身3回目となるオリンピックに向けての強い覚悟をヒシヒシと感じました。

《えむら・みさき/大分県出身。’21年に中央大学法学部を卒業後、フェンシングで日本初のプロ選手となる。’24年パリ五輪では団体で銅メダルを獲得。2024-2025シーズンの国際フェンシング連盟ランキングで日本女子サーブル史上初の1位に輝いた》

《なかがわ・あんな:東京都出身。幼少期をフィンランドやプエルトリコで過ごす。’16年にNHKにアナウンサーとして入局し、『サンデースポーツ』やパリ五輪の現地キャスターとして活躍。’25年春に同局を退局後、芸能事務所のホリプロに所属しフリーアナウンサーやタレントとして幅広く活躍する》

『FRIDAY』2026年5月1・8日合併号より