1日1回・室内・20秒からでいい…歴35年のトレーナーが「最も嫌われ、最も効果的」と断言する時短筋トレの中身
※本稿は、澤木一貴(著)、國本充洋(監修)『体力おばけへの道 超ハードモード編』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■体が本気で変わるトレーニング
HIIT(High Intensity Interval Training)という言葉は、いまやフィットネスの世界だけでなく、一般的な健康情報の中でも広く使われるようになりました。
しかし、その中身が正確に理解されているかというと、必ずしもそうではありません。「短時間で追い込む運動」「とにかくきついトレーニング」といったイメージだけが先行し、なぜ体が変わるのか、どの条件がそろえば本当に効果が出るのかという部分は、あいまいなまま語られていることが多いのが現状です。
本稿で扱う「超HIIT」は、流行のトレーニング方法を紹介するものではありません。運動生理学の研究、トレーナー団体が整理してきた理論、そして競技フィットネスの現場で繰り返し検証されてきた共通条件をもとに、「体が本気で適応する条件」を整理し、日常の中で再現できる形にまとめたものです。
その理解のために、まずはHIITという言葉そのものを、正確に整理しておく必要があります。
HIITとは、高強度の運動と休息を交互に行うトレーニング様式の総称です。
運動時間、休憩時間、セット数、種目内容に決まった形はなく、「高強度であること」「インターバル構造を持つこと」が大枠の定義になります。
30秒運動・30秒休憩でも、40秒運動・20秒休憩でも、あるいは複数の種目を連続して行うサーキット形式であっても、条件を満たしていればHIITに含まれます。
■「高強度の運動」であることが重要
ここで重要なのは、HIITが一つの決まったやり方ではなく、上位概念だという点です。HIITという言葉の中には、強度設定、動作選択、回復の取り方など、非常に幅広い設計思想が含まれています。そのため、同じ「HIIT」という名称が使われていても、体に入る刺激の質は大きく異なります。
だからこそ、「HIITをやっているのに体が変わらない」という人が出てきます。時間が短いだけで強度が曖昧な運動や、インターバル構造はあっても全身が十分に動員されていない運動では、体が適応を起こす条件が満たされません。
体力がある人が、比較的ゆっくりとしたテンポの腕立て伏せや自重スクワット、腹筋運動などをサーキット形式で行うこと自体は、決して無意味ではありません。
ただし、その場合に体が受け取っている刺激は、本書で扱う「高強度域への進入」を狙ったHIITとは異なるものになりやすい、という点は押さえておく必要があります。
HIITで重要なのは、「きつそうに見えるかどうか」ではありません。心拍数、筋出力、神経系の動員が、体が適応を判断する強度領域に入っているかどうか。見た目のきつさや疲労感があっても、その条件に達していなければ、体は大きく変わりません。
HIITは万能な方法ではありません。しかし、体が本気で適応を起こす強度領域に入り、その刺激が回復と結びついたとき、HIITは非常に効率の高い体力づくりの手段になります。

■「20秒動く→10秒休む」を繰り返す
本稿では、HIIT研究で示されてきた原理と、現場で再現性が高い条件を整理し、筋肉・心肺・神経・脳が同時に動員される強度領域に、意図的かつ安全に入るための設計を「超HIIT」と呼んでいます。
超HIITは、きつさを競うものでも、短時間で消耗するための方法でもありません。体が変わる条件を理解し、その強度を必要な分だけ使い、壊れずに積み上げていくためのシステムです。
HIITという考え方が世界に広まるきっかけとなったのが、短時間・高強度・インターバル構造を用いた運動生理学研究です。20秒間の高強度トレーニングと10秒間の休憩を繰り返すプロトコルでは、ごく短時間にもかかわらず、有酸素能力と無酸素能力の両方が大きく向上することが示されました。
この研究の本質は、「短時間でも効果がある」という点そのものではありません。重要なのは、体が一定以上の強度領域に入ったとき、有酸素系・無酸素系・神経系を含めた全身のシステムが、一体として動き出すことが明確に示された点です。
■体全体にスイッチが入る
体は、筋肉・心肺・エネルギー供給を個別に切り分けて反応しているのではありません。一定の強度を超えた瞬間に、「全体」としてスイッチが入ります。この原理を、極めてシンプルな構造で示したことが、高強度インターバル研究の最大の価値だと言えるでしょう。
ただし、ここで示されたのは、特定のプロトコルをそのまま再現すべきだ、という話ではありません。示されたのはあくまで、「体が本気になる強度に入ったとき、体がどう反応するか」という原理です。本稿の超HIITは、その原理を年齢や体力レベルを問わず、現実的に継続可能な形へと再構成したものです。
高強度トレーニングの効果は、筋肉や心肺機能だけでは説明できません。ここで重要になるのが、「神経系」という視点です。
私たちの体には、常に安全側へ調整する仕組みが備わっています。どれだけ筋力や心肺能力があっても、体が「この出力を続けるのはリスクが高い」と判断すれば、無意識のうちに出力は抑えられます。
これは意志の弱さではなく、脳と神経による正常な制御です。高強度トレーニングでは、運動時間が延びるにつれて、神経系を含めた出力調整が強まりやすくなります。動作を安定させ、無理のない方向へ誘導することで、体を守ろうとするからです。

■「神経系」が全身運動を司る
超HIITが短時間で設計されている理由は、体を追い込むためではありません。
高い出力と動作の質を保ちやすい時間帯に、集中的に刺激を入れるためです。一定以上の強度に入ると、筋肉・心肺・循環・姿勢制御・呼吸が同時に動き出します。
この状態で体は、「これは適応すべき刺激だ」と判断します。つまり、超HIITにおける短時間設定は、「楽をするため」でも「時短のため」でもありません。体が本気で反応しやすい条件を、最も無駄なく使うための設計なのです。
神経系の役割は、単に筋肉を動かす命令を出すことではありません。
・どのタイミングで力を入れ、どこで抜くか
・姿勢をどう保ちながら動くか
こうした動作全体をまとめ上げているのが神経系です。全身運動では、この統合作業の負荷が一気に高まります。部分的な運動では届きにくい刺激を、短時間で効率よく体全体に伝えられる点が、超HIITの大きな特徴です。
■全身をフル稼働させる「最高の運動」
最高の運動 フルバーピー
「バーピー」という名前は、実は人の名前です。アメリカの生理学者ロイヤル・H・バーピー博士が、1930年代に一般人の体力を簡単に評価するためのテストとして考案しました。もともとの目的は、短時間で、誰でも、特別な器具なしで、心肺機能と全身の動きを評価すること。
原型は「立つ→しゃがむ→脚を後ろに伸ばしてプランク→脚を戻す→立つ」という、ジャンプもプッシュアップ(腕立て伏せ)もないオリジナル・バーピーでした。

その後、体力テストとして広まり、やがてフィットネスの現場に取り入れられました。
現代ではさらにジャンプとプッシュアップが加わり、フルバーピーとして「最も嫌われ、そして最も効果的な自重トレーニング」の一つになりました。
フルバーピーは、次の動作を一気にこなします。
●手で支える(肩・胸・体幹の安定)
●プッシュアップ(上半身の筋力)
●ジャンプ(瞬発力・跳躍力・下肢パワー)
つまり、人間の基本動作がほぼ全部入りの全身運動です。重心が大きく上下し、多関節の曲げ伸ばしが連鎖し、心拍数が一気に上がる。超HIITが求める「短時間・高心拍・全身動員」の条件を、自重だけで満たしやすい代表例がフルバーピーです。
■「回数」よりも「強度」が重要
さらに現場では、バーピーは「筋力トレーニングと呼吸循環負荷を同時にねじ込める種目」として扱われます。限られた時間で、筋力・心肺持久力・瞬発力・敏捷性・バランスまで、一度に刺激を入れたいときに有効です。
超HIITで重要なのは「何回やったか」ではありません。どの強度を、どの姿勢で、どれだけ成立させたかです。本書では、次の順で強度を上げていきます。
2 速度の向上(ゆっくり丁寧速く)
3 セット数の増加(1→2→3)
4 インターバル短縮(30秒→20秒→10秒)
回数や秒数を追いかける前に、「崩れずに動き続けられているか」を最優先してください。一つの目安として、動作の途中を写真に撮られても、姿勢が破綻せず、無理な力みが見えないかを確認してみてください。写真で崩れていない動きは、実際にも成立している可能性が高いです。
■継続すれば確実に体は変化する
30日間、超HIITを自分の体力に合わせて積み重ねていくと、体にはいくつか共通した変化が現れ始めます。
●体幹が抜けにくくなる
●動作が軽く感じ始める
●翌日に疲れが残りにくくなる

これらは、筋肉が単についている状態から、動きを支え、出力し、回復まで担える「機能する装置」へ変わってきたサインです。
すべての人が同じペースで次のフェーズに到達するわけではありません。しかし、自分の体力に合ったレベルで出し切り、回復し、また積み重ねる。このサイクルを回し続けた体は、確実に以前とは別物になります。
(参考文献)
● Tabata, I., et al.(1996)
Effects of moderate-intensity endurance and high-intensity intermittent training on anaerobic capacity and VO2 max.Medicine & Science in Sports & Exercise.
● Buchheit, M., & Laursen, P. B.(2013)
High-intensity interval training, solutions to the programming puzzle. Sports Medicine.
● Enoka, R. M., & Duchateau, J.(2016)
Translating Fatigue to Human Performance. Medicine &Science in Sports & Exercise.
● American College of Sports Medicine(2022)
ACSM's Guidelines for Exercise Testing and Prescription(11th ed.).
● National Strength and Conditioning Association(2016)
Essentials of Strength Training and Conditioning(4th ed.).
● Burpee, R. H.(1940)
Seven Quickly Administered Tests of Physical Capacity.Journal of Health and Physical Education.
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澤木 一貴(さわき・かずたか)
SAWAKI GYM代表取締役
トレーナー歴35年。静岡県の整形外科病院でトレーナー科主任を歴任し、リハビリ後の方からトップアスリートまで医学的根拠に基づき指導。その後専門学校講師を12年間務め、機能解剖学を中心に学生教育を行う。現在はトレーナー活動の他、健康セミナー・講演会や雑誌・テレビなどメディアで健康情報を発信している。パーソナルトレーニングジムSAWAKI GYMを早稲田、高田馬場、沖縄北谷で経営。著書に『体力おばけへの道 超ハードモード編』(KADOKAWA)がある。
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國本 充洋(くにもと・みつひろ)
医師、循環器内科専門医
医学博士。心臓リハビリテーション指導士。順天堂大学医学部卒業後、静岡県内の大学病院で初期研修を修了。大学病院循環器内科で勤務しながら、心疾患と密接に関係する運動耐容能に関する研究で医学博士号を取得。現在は順天堂大学病院循環器内科で従事しながら、心肺運動負荷試験を活用した心臓リハビリテーションを実践している。監修した書籍に『体力おばけへの道 超ハードモード編』(KADOKAWA)がある。
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(SAWAKI GYM代表取締役 澤木 一貴、医師、循環器内科専門医 國本 充洋)
