モジタバ・ハメネイ師=ロイター

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 米国のトランプ大統領が頻繁にイラン指導部の「分裂」を指摘しているのに対し、イラン側が神経をとがらせている。

 イランは「結束」を強調しているが、最高指導者の所在は不明のままで、権力構図について臆測が飛び交っている。(バンコク 吉形祐司)

強力な武器

 トランプ氏は4月21日、イランは「深刻に分裂」していると述べ、米政府高官やメディアもここ数日、内部対立や混乱を相次いで伝えている。

 米紙ニューヨーク・タイムズは23日、イラン政権内部の複数の筋の情報をもとに、「精鋭軍事組織『革命防衛隊』の司令官らがイランの意思決定のカギを握っている」と報じた。外交・安全保障政策を決定するイラン最高安全保障委員会(SNSC)では、交渉を主張するマスード・ペゼシュキアン大統領やアッバス・アラグチ外相が脇に追いやられたとの内容だ。

 イラン指導部は敏感に反応した。改革派のペゼシュキアン氏と保守強硬派のモハンマドバゲル・ガリバフ国会議長は23日、それぞれのSNSに「イランには強硬派も穏健派もなく、皆が革命支持派だ。鉄の結束と最高指導者への服従で侵略者を後悔させる」と、ほぼ同じ文言を投稿した。

 イランでは昨年末以降、反体制派の抗議デモがあり、米国やイスラエルはイランの内部崩壊をたきつけた。イラン指導部は「結束」が強力な武器だと訴え、各地では毎晩、官製の大規模な政権支持集会が開かれている。「分裂」情報は国民を再び動揺させかねない。

強硬派が牛耳る

 イランでは、死亡した前最高指導者アリ・ハメネイ師が重用した革命防衛隊の発言力が強く、政界も保守強硬派が牛耳ってきた。

 ペゼシュキアン氏は2015年の核合意をまとめたモハンマドジャバド・ザリフ元外相を戦略担当副大統領に任命したが、強硬派の妨害で辞任を余儀なくされた。24年の大統領選討論会では、意見の対立で激高した改革派陣営が、国営テレビの生放送中にマイクを投げ捨てて立ち去る一幕もあった。

 意見の対立は珍しくないものの、強硬派も改革派もイスラム革命体制維持の点では一致している。戦時下で革命防衛隊や強硬派の主張が通るのは、ある意味では当然とも言える。

保護を約束

 一方、最高指導者モジタバ・ハメネイ師は選出されて以来、公に姿を見せていない。23日には「国民の素晴らしい結束で敵に亀裂が生じている」とSNSに投稿したが、以前の声明の再利用だった。

 父のアリ師は強硬派、改革派を巧妙に操り、政治のバランスを取ってきた。その均衡が崩れている可能性もある。ニューヨーク・タイムズはイラン高官の話として、攻撃で負傷したモジタバ師が脚と手の手術を受け、顔と唇に重度のやけどを負って会話が困難になっていると報じた。

 中東・ユーラシア圏の軍事筋は本紙の取材に、イラン指導部から戦前に接触があり、万一の場合にはアリ師ら首脳を保護することで合意していたと明かした。その国のイラン総領事館には現在、革命防衛隊の幹部らが潜伏中だが、モジタバ師は確認できないという。