能登の牧場「震災から新たな一歩」

2024年の能登半島地震で取引先を失い、丹精込めて育てた牛乳を廃棄せざるを得なくなっていた、石川県能登町の牧場が、仲間たちの力を受け、新商品の開発にこぎつけました。

奥能登の広々とした山あいで牧場を経営する寺西喜久次さん74歳。

13ヘクタールの広大な牧場で、6頭のジャージー牛をほとんど青草だけで育てています。

牧草由来のさっぱりとした味わいにこだわり、牧場では他の牛乳と混ぜ合わせて個性が消えてしまわないよう、自前で販路を開拓してきました。

◇寺西牧場・寺西喜久次さん…「全部自己責任になるし、厳しいが、せっかくジャージーを飼ったら、ジャージーを差別化を貫かなくてはならないので、団体に入れると、タンクローリーがきて一緒に混ぜるので、それをやるとジャージーをやっている意味がない」

能登半島地震で事態は一変

2024年の能登半島地震で事態は一変します。能登町の牧場は持ちこたえましたが、最大の取引先だった輪島市のレストランが倒壊してしまいました。

大切な牛乳を廃棄せざるをえなくなった…

1日におよそ20キロ出る牛乳は行き場を失い、廃棄せざるを得なくなりました。

◇寺西牧場・寺西喜久次さん…「レストランで使ってもらっていた時、このまま行くと思ってたが、そうはいかなくて。作った牛乳をどうしようもなかったので、捨てていた」

農業法人が手を差し伸べた

そんな寺西さんに手を差し伸べたのが、石川県津幡町の農業法人「大地の虫」です。

牧場が窮地に立っていることを知り、野菜を育てていたスタッフを酪農に転換、新たにチーズに加工するための設備も整えました。温度管理など、加工が難しいとされるジャージー牛ですが、試行錯誤の末、2つの新商品を開発しました。

そうだ!チーズを作ろう

フレッシュな「モッツァレラチーズ」。

生産過程で出たホエイを再利用した「ブラウンチーズ」です。

◇農業法人大地の虫・松田有紀さん…「脂肪分が多くて、すごくコクがあって脂肪分が多い。何回も試作して失敗して今やっとツヤが出る状態になった」

地元スーパー「復興の手助けに」

この新商品に目を付けたのが、地元スーパーの「カジマート」。

復興への手助けをしたいと、4月29日から、カジマートのすべての店舗で、寺西牧場の牛乳からつくられたチーズの販売を始めました。

◇カジマート・江嵐敦子さん…「能登のミルクということで、皆さんが応援したいという声をたくさんいただきました。ブラウンチーズがなかなかない珍しいチーズになります。本当に塩キャラメルのような風味でおいしいということで」

再び夢が宿った牧場主

一時は牧場を畳むことも考えた寺西さんですが、周囲の情熱に支えられ、その目には再び夢が宿っています。

◇寺西牧場・寺西喜久次さん…「牛乳をたくさん絞ることに向かっていかないで、今のスタイルを保ちながら、少しは増やしてもいいが、こんな格好でやっていきたい」