開幕から高騰を続ける大谷翔平(C)共同通信社

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 開幕から4試合に先発して防御率0.38、非の打ちどころがないピッチングを続けているのが大谷翔平だ。

 日本時間23日のジャイアンツ戦は、ストレートの平均球速が約159キロ。球威があるうえに、制球もバツグンに良い。カーブ、スイーパー、スプリットなど変化球のキレも申し分なかった。

 何より投球フォームが良くなった。ピッチングは主に軸足の力で本塁に向かって真っすぐ並行に体重を移動させる並進運動と、並進運動によって得たエネルギーを体の軸を中心に最大化する回転運動の2つから成り立つ。このうち並進運動の向きがブレると球速や制球に影響する。これまで投球が引っ掛かったり、すっぽ抜けたりしていたのはそのためだ。けれども並進運動によって得られるエネルギーを効率良く伝えられるようになった。全身の力をすべて指先に伝えている。

 右腕がすぐに頭の近くを通ってトップの位置に上がり、コンパクトに振り抜いていることといい、打者の手元で浮き上がるようなストレートを投げていることといい、今季の大谷のピッチングはかつてのノーラン・ライアンを彷彿とさせる。

 ライアンは通算324勝、メジャー記録の通算5714奪三振、シーズン383奪三振を誇り、野球殿堂入りした剛速球投手だ。

 僕が日本ハムの投手コーチ時代、近くで見ていたころから常に理想とする投げ方を模索していたように思う。当時から二刀流だったが、打撃より投手の練習をしているときの方が熱が入っていると感じた。ブルペンでもさまざまなことを試し、それを楽しんでいるような印象すら受けた。

「軽く投げている感覚でも、強く投げている感覚でも(球速は)そこまで変わらなかった」

 大谷はこんなふうに話しているという。それもこれも上体の力に頼らず、全身をうまく使い、効率の良いフォームで投げている証拠だ。

 すでに2度、右肘にメスを入れていることもあるだろう。下半身のパワーをすべて指先に伝えられている現在の投球フォームは、肩肘に負担の少ない投球を模索した結果でもある。

 大谷の打撃フォームは美しい。体をうまく使ったスイングをしているからで、今季は投球フォームも格好良く見えるようになった。本人が理想とするフォームにようやく近づいてきたように思っている。

(吉井理人/千葉ロッテマリーンズ前監督)