義父は“息子”の首を電気コードで絞めて殺害した(写真はイメージです)

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 京都府南丹市の小学校6年生、安達結希くん(11)の遺体が発見された事件で、死体遺棄容疑で逮捕された継父の安達優季容疑者(37)。「衝動的に首を絞めて殺した」と殺害を認める供述もしているとされ、今後、殺人容疑での捜査も進むと見られる。既に、結希くんが優季容疑者との同居について、「変なおっさんが家に来て、ケンカばっかり」と不満を漏らしていたこと、一方の容疑者は時に結希くんをひっぱたくなど、暴力を振るうこともあったことが報じられている。再婚まもない「継父」と「義理の息子」の関係に距離があり、それが犯行に影響したとの見方が出ているのだ。

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 むろん継父だから親子関係がうまくいかないと断定できるわけではない。虐待などの事件の加害者としての確率に、実の父と継父との間で統計上有意な差を見つけることが出来ないことは既に指摘されている。とはいえ、やはり継父との親子関係には、実の父とは異なる要素があり、当事者だけではなく、関係を支える周囲も、それに気を配ることが必要なのは事実であろう。

義父は“息子”の首を電気コードで絞めて殺害した(写真はイメージです)

 今から7年前の2019年、さいたま市で、やはり継父による小学生の「息子」の死体遺棄事件があったことをご記憶だろうか。もちろん事件状況や家庭環境は異なるが、再婚から事件まで日が経っていなかったこと、親子関係に問題があったことなど、本件と共通する部分も少なくない。当時、「週刊新潮」ではこの事件を取材し、犯行の背景と、識者の分析を掲載している。以下、それを再録し、京都小6事件、そして親子のあり方について考えるヒントとしてみよう。

(「週刊新潮」2019年10月3日号記事を一部編集の上、再録しました。文中の年齢、肩書などは事件当時のものです)

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メーターボックスの中に

 亡くなった埼玉県さいたま市内の市立小学校4年生・Aくん(9)の母(42)は、県内の公立高校に勤める養護教諭。片や彼女より10歳下の継父・B容疑者は、定職に就かず家の留守を預かる代わりに、さいたま市内の県が管理する教職員住宅で夜露を凌ぐことができた。

 にもかかわらず、彼は妻が不在の間に幼い子供を護るどころか、遺体を遺棄して隠蔽するという愚挙に出たのだ。

 ことの発端は(2019年)9月17日に遡る。夜になっても帰宅しない息子の身を案じた母親は、警察に行方不明者届を出すに至った。すぐさま県警が付近を一斉に捜索したところ、翌18日午前0時半過ぎ、変わり果てた姿のAくんが発見されたのだ。

 あろうことか、発見されたのは一家が住む集合住宅の建物内。自宅向かいの空き部屋の横に設けられた電気や水道の設備を収納するメーターボックスの中だった。検針用の計器が並ぶ暗く狭いスペースに、座って倒れ込むような形で少年は息絶えていたのである。着衣の乱れはなかったが、死因は窒息死で、首には絞められた痕がうっすら浮かび上がっていたという。

妻にバレないように

 直ちに殺人事件として所轄の警察署に特別捜査班が設けられ、B容疑者に事情を尋ねたところ、事件発生から2日後の19日に犯行を自供したため、死体遺棄容疑で逮捕に至った。

「県警は、当初から継父であるB容疑者の犯行を疑い捜査を始めていました」

 と話すのは、事件を取材している県警担当記者。

「通っていた小学校から自宅まで歩いて10分ほどですが、途中の防犯カメラには下校する被害少年の様子が記録されていたそうです。また自宅にランドセルがあったことから、帰宅したところまでは足取りを掴めたのですが、問題はそこから。B容疑者は、母親や警官にも、『息子が英語塾に通うので見送った』と説明していたのですが、被害少年は塾を欠席していたのです」

 普段は、自宅最寄りのバス停から塾のあるJR大宮駅近くまで路線バスを使っていた被害少年の姿が、路上の防犯カメラや車のドライブレコーダーに一切映っていなかったというのだ。

「そこで改めてAくんの自宅内部を捜索した結果、普段から彼が履いていた靴が袋に隠された状態で見つかったのです」(同)

 かかる現場の状況を踏まえた上で、少年が亡くなる直前まで一緒だったのはB容疑者しかいないとなり、任意の取り調べがなおも行われたと記者が続ける。

「当初は事件への関与を否定し、『私はやっていません。犯人は別にいる』と答えていましたが、最終的には帰宅したAくんから、『授業で使う紅白帽を無くしたと聞いて注意した際、“本当の親じゃないのに”と言い返されカッとなって、紐状のもので首を絞めた』と話し、『妻が帰宅する前にバレないよう、焦って遺体を隠した』と犯行を認めたのです」

ヒモ状態で

 一転して容疑者となったこの継父が姑息なのは、行方不明者の届け出がなされた直後は、母親や警官と共に近所を歩き回っていたこと。つまりは探すフリをしていたわけだ。さらに取り調べでは自供したのに、送検後は再び否認に転じている。

「検察でB容疑者は、『犯人は誰か分かりません』と話しています」(同)

 さる捜査関係者が言う。

「往生際が悪いと言うか、取り調べでは、過去の経歴や職歴についてもウソの証言を繰り返しています」

 確かに、B容疑者のSNSを見れば、仕事は音楽関係となっているが実際には無職だ。生まれは広島県呉市とあり、地元の中高一貫の進学校に進み、上京後は東洋大学の社会学部社会福祉学科に進学とあるが、入学前に別の私立大に通っていたことがあるという。そのプロフィールに添える形で、彼は公園で被害少年と思しき子供とサッカーに興じる写真も大々的にアップしているのだ。これは子煩悩な父親であることを誇示したかったのか。

 先の捜査関係者によれば、

「2人は昨年、SNSで知り合い意気投合して、今年3月にB容疑者は妻側の戸籍に入る形で結婚している。家計もすべて彼女の側におんぶにだっこで、いわばヒモ状態で暮らしていた」

親権をめぐって争いが

 養う側だった被害少年の母親は、地元・さいたま市内の進学校を経て教員に採用され、同じ県内の公立高校に勤める五つほど年上の男性教諭と結婚。Aくんを授かるが、5年前に離婚してしまう。

 その頃を知る近隣住民はこう振り返る。

「夫婦は6年ほど前に共同名義で土地を買い家も建て、子供2人に加え母親側の祖父母も同居する2世帯住宅でしたね。おじいちゃんはもう仕事を引退したらしく、亡くなったAくんを乳母車に乗せ毎日散歩していました。なのに、暮らし始めてから1年ほどして他へ売ってしまった。新築なのに勿体ないと思いました」

 殺されたAくんには兄がいて、実父に引き取られていったというのだ。

 そこで被害少年の親族に話を訊いてみたところ、

「離婚の原因は夫婦共働きですれ違いの日々が続いたからと聞いています。母親は激しく親権を主張して別れるまで一筋縄ではいかなかったんです。結局、調停委員を立て両者で話し合い、兄弟分離という形になってしまってね。あの時、お兄ちゃんと離ればなれにならず、お父さんの側に引き取られていたらと思うと……」

教育熱心な家庭

 すったもんだの末、幼い男の子を抱えた母親だったが、職場では悲愴感を漂わせることはなかった。

 2年前まで勤務していた高校の元教員によれば、

「髪型はセミロングで、すらっとしていて颯爽とした人でね。実直に仕事に取り組まれていて、生徒からの信頼も厚かった。プライベートのことは今回の報道で初めて知ったくらいで、家庭のことで悩んでいる素振りは一切見せていませんでした」

 事件現場の近隣住民に話を訊くと、

「教職員住宅に住んでいたから、学校の先生だとは思っていましたが、仕事に向かう時はいつもスポーティーな出で立ちでしたね。毎朝早く家を出て行くので忙しそうだけど小綺麗にしていて、歳よりも若く見えた。お父さんの姿は見たことがなく、Aくんが自分で鍵を掛けていたから、てっきり母子家庭なのかなと思っていたくらいですよ」

 被害少年の同級生の保護者は、

「Aくんは英語塾の他にも、1年生の時から週1回スイミングスクールに通って、クロール、背泳ぎ、平泳ぎを習得していました。同学年の子の中では身長が高い方で、率先して元気に挨拶してくる。礼儀正しく、教育熱心なご家庭のお子さんという印象です」

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 この記事の後、B容疑者は殺人容疑で再逮捕され、両容疑で起訴されている。公判では衝動的犯行だったと主張し、情状酌量を求めた。母親も裁判に出廷。「Aが自分に甘える行動を取った際、被告が急に怒り出し家を飛び出したことがあった」「嫉妬しているのを感じた。息子が邪魔な存在になったのではないか」などと証言した。事件後、被告からは「自分もつらい。出所するまで、待っていてほしい」なとどと手紙が来たとして、「事件と向き合わず、心からの反省がない」と述べている。公判時点で両者は離婚している。2020年10月9日、さいたま地裁でB被告に懲役16年の判決が下された。被告は控訴をせず、判決は確定している。

 当時の「週刊新潮」記事で、さる精神科医は、子連れ再婚と犯罪について、このような分析をしていた。

「再婚相手の男性が、連れ子を虐待したり殺害する事件には、二つの原因があります。ひとつは経済的な部分を含めて、自分は前夫よりも劣っているのではという嫉妬。そして、自分のDNAを残したいという本能。その二つの気持ちが、前の夫の遺伝子を受け継ぐ子供に牙を剥かせてしまうのです」

 さる家族問題カウンセラーはこんな提言をしていた。

「子供を虐待したり殺してしまったりする男性かどうかを、結婚前から見分けるのは難しいものですが、他人の子をかわいいと思えないのはあたり前。それを前提に生きる必要があります」

「再婚前に、母親は相手に対して『子供は憎たらしいし、殴りたくなることがあるかもしれない。私がいない時間もあるし大丈夫?』などと言って、きちんと話し合いを持つ必要がある。そもそも再婚しても、男性は父親になるべきだと思い込む必要はないし、母親もそれを強いる必要はありません。それくらいの距離感から始めて、子供がかわいくないのはあたり前だと許してあげる社会でないと、再婚相手は父親だと思われないことで自分を追い込んでしまう。子供が義父に対して『本当の親じゃないくせに』と反抗するのは、この人は本当に自分の親になってくれるのだろうか、捨てられないだろうか、と試す行動の一環でもあるのですから」

 京都小6事件に生かしておくべきであった教訓である。

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デイリー新潮編集部