【北朝鮮の金正恩氏にライフル銃をプレゼント】欧州最後の独裁国家・ベラルーシ大統領は「トランプともプーチンとも共鳴するプロ独裁者」
ライフル銃を慣れた手つきで構える北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党総書記。その姿をにこやかに見守るのは、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領だ。このライフル銃はベラルーシ製のもので、ルカシェンコ氏から金正恩氏への"手土産"。ルカシェンコ氏が「武器の扱いがうまいですね」「敵が侵攻してきたら使える」などと話すと、金正恩氏は笑顔で応えたという──。
【写真】「撮り鉄」の日本人がベラルーシで拘束される直前に撮影していた鉄道写真
3月25日、北朝鮮の平壌で会談が行われ、両首脳は友好協力条約を結び、今後の関係強化を図る方針で合意したという。
ベラルーシは、ロシア、ウクライナ、リトアニアなどと国境を接する東欧の小国であり、ルカシェンコ氏は1994年より30年以上にわたりその座についている。事実上の独裁政権を敷いている様相は、ときに「ヨーロッパの北朝鮮」と揶揄されてきた。
ルカシェンコ氏の北朝鮮訪問は初めてのことだった。"共通点"がありながら初訪問がこのタイミングになった理由を、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの服部倫卓教授は次のように解説する。
「ロシアによるウクライナ侵攻において、ベラルーシは表向きには中立を表明しています。しかしロシアの同盟国ですから、限りなく戦争当事国に近い立場であるといっていい。同国も主要国からは軒並み経済制裁を受けており、国内経済においては厳しい状況が慢性的に続いています。
ベラルーシとの関係拡大に前向きなのは、中東やアフリカ、旧ソ連の国など一部に過ぎません。国際的に孤立するベラルーシが、追い込まれる中で新たな活路として見いだした先が北朝鮮だったのでしょう。国内向けのパフォーマンスという側面も多分にあったはずです」
一方でルカシェンコ氏は、第二次トランプ政権以降、アメリカとの交渉も積極的に試みている。実際にこれまでも何度か、経済制裁の解除と引き換えに収監中の政治犯や外国人らを解放してきた。2024年6月21日に行われた恩赦の際には、『ベラルーシ獄中留学記』著者の照井希衣さんを含む2人の日本人が対象に含まれていたことも話題となった。
「本来、アメリカとロシア、およびロシア側の国家は敵対関係になることが多い。オバマ氏やバイデン氏のような人物が大統領でしたら、ベラルーシは冷遇されていたことでしょう。ところが、トランプ氏は交渉のテーブルについている。権力、金、女性に執着があるという点において、ルカシェンコとは共鳴できる部分があるのかもしれません。
ルカシェンコ氏がアメリカと今後も交渉を続けたとしても、ロシアとの関係にヒビが入るようなことはないと思います。なにしろ、ルカシェンコ氏とプーチン氏は20年以上の腐れ縁です。腹に据えかねているところはあるにせよ、使えるうちは互いを利用し続けるでしょうね。互いにプロの独裁者ですから、もっとも優先すべきは自分の生き残りだということは共通認識のはずです」
ルカシェンコ氏は2022年に、プーチン氏は2020年に、それぞれ改憲を経たことで、事実上の「終身大統領」を視野に入れているとみられている。ベラルーシ国内では、ルカシェンコ氏の存在はどのように受け止められているのか。
「2020年のベラルーシ大統領選は、かつてないほど打倒ルカシェンコの機運が高まった機会でした。ただ、市民の蜂起に対してルカシェンコ氏は治安部隊を投入し、7000人以上を拘束。弾圧が強化されました。現在、批判的な意見を持っていた研究者やジャーナリストは軒並み投獄されるか、国外に出ていってしまっている状況です。
私自身はルカシェンコ氏に賛同する立場にありませんが、あえて評価をするならば、ロシアによるウクライナ侵攻において自国を戦地にしていない、派兵にも至っていないという点は無視できません。プーチン氏からの圧力はあるはずですが、ルカシェンコ氏は屈していない。とはいえロシアの後ろ盾で独裁権力を守りつつ、反対派は徹底的に排除した上での安定ですから、ベラルーシ国内は墓場の平和のような状態といっていいでしょう」
歴史上、独裁者は往々にして悲惨な末路を辿ってきたが、「ヨーロッパの北朝鮮」の行く末はどのように運ぶのだろうか。
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