左から一龍齋春水、宝井琴調、神田香織(筆者撮影)

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新年度。官公庁や一部一般企業では人事異動の季節だが、演芸界でもちょっとした動きがあった。

講談師の宝井琴調(70)が新会長に就任した講談協会は、今年度から一般社団法人として活動を始めることを宣言した。これまでの講談協会は、いわゆる任意団体という建付け。

「お若い方がアパートを借りる際に、任意団体だとなかなか世間に分かっていただけなかったり、保育所に入れる時にも任意団体では弱い」(琴調)という現実的な理由が、20数年前から時折議題に上がっていた法人化という課題の解決を後押しした。

「法人化を維持できるのか、法人化したからには、組織を大きく力強くする責任がある。何かありましたら私がお縄になりますので」とトップとして責任を取る覚悟を示しつつ「興行数を増やしていくことが、一番間違いのない、組織としての力になると思います」と、組織力の強化に力を注ぐことを明かした。

その昔、芸人といえば安定感とは無縁の稼業で、少しばかり世間とは違う形の生き方を模索する方々が多かったが、最近の入門志願者は、“安定した職業としての芸人”を目指す人が増えたようで、講談協会の決断には、一昨年、落語立川流が立川志の輔(72)を代表に一般社団法人化したことも影響していたと、琴調会長は打ち明けた。

「我々は“野良の落語家”」

4月1日から、七代目三遊亭円楽(48)が会長兼理事長に就任することを発表した五代目円楽一門会は、少し趣きを異にする。

副会長を務める三遊亭萬橘(47)は「一般社団法人化することはない」と断言。その心を次のように説明した。

「芸界の多様性を担保するにはその方がいいと思っています。国に認められ(た組織に入ら)ないと落語家じゃない、芸人じゃないというのは違う。我々は“野良の落語家”。そういうスタンスの落語家がいた方が(全体が)豊かになるのではないか。何の保証がなくてもいい、僕らみたいな任意団体に魅力を感じてくれる入門希望者はいると思う」

法人化するしないはそれぞれの団体の自由だが、「円楽一門会は、プロの落語家を育成するための任意団体であるということを世間に知られたい。他の(協会の)寄席に出てもお客様に認められる人材を私どもが作る」(萬橘)と、プレーヤーを生み、その中からスターを作ることを組織のミッションに掲げる。

弟子を獲得するために動く角界とは違い、落語家にしろ講談師にしろ浪曲師にしろ、演芸界はただ単に弟子入りを待つという立場。自分らからは獲得に動けない。弟子入り志願者が相次ぐためには、魅力的な団体を作り、魅力的な演者を育成することも重要なバリューになる。

新会長の下で船出した講談協会と五代目円楽一門会が、5年後10年後にどれだけ手勢を増やしているのか。こればかりは長生きして確認するしかない。

取材・文/渡邉寧久 内外タイムス

左から三遊亭萬橘、三遊亭円楽、三遊亭楽麿呂(筆者撮影)