マンションが危ない? 住民の均質高齢化、建物の老朽化…修繕できず朽ちる“負動産地獄”の実態

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「買えば安心できる資産」だったはずのマンションの資産価値が今じわじわと失われていくケースが起きている。区分所有という仕組みに潜むリスクと、「負動産化」する実態に迫る。

【画像】『2035年 増える富・消える富の見分け方 インフレ地獄を生き抜く資産戦略』

 

『2035年 増える富・消える富の見分け方 インフレ地獄を生き抜く資産戦略』より一部抜粋、再構成してお届けする。

※ 本書の記載内容は2026年2月現在のものであり、記載された情報に関しては、万全を期しておりますが、内容を保証するものではありません。また、本書は特定の金融商品、投資商品を推奨するものではなく、記載内容を利用したことによる、いかなる損害・損失についても出版社、著者、ならびに本書制作の関係者は一切の責任を負いません。投資の最終判断はご自身の自己責任でお願いいたします。

区分マンション投資は資産形成の落とし穴

不動産投資を行う際、最も重要な視点のひとつに「出口戦略の見極め」がある。

これは単に将来的にいくらで売れるかということだけではなく、物件の持続可能性や、所有形態による制約も加味したうえで判断しなければならない。

とりわけ「区分所有マンション」のような、共有部分の存在する不動産は、いずれの点でも非常に不利な投資対象だ。

私は20年ほど前、当時で築30年の分譲マンションに投資した。今の私は、区分マンション投資はするべきでないと考えているので、本来であれば手放すべき物件だ。

しかし不動産コンサルティングを提供する立場として、研究目的でこの物件の行く末を見届けるのも必要であると考えて、所有を続けている。

この物件を購入して間もないころ、管理組合の総会に出席して感じたのは、建設的な議論が一切できず、何も決まらないことに対する驚きだった。

出席者はほとんどが高齢者で、自らの資産の価値に対する意識だけは高いものの、発言は主観的かつ感情的だ。

要はそれぞれが勝手な言い分を主張するだけで管理組合の総会で議論するべき議題はまったく前に進まず、合意形成がままならない。

建築や経営、メンテナンスに関する知識を持つ人がまったくいないという点は世の中に存在する区分所有における管理組合運営において仕方のないことだが、「長谷工が建てたマンションなら、修繕も長谷工に任せるべきだ」という類いの思い込みばかりが強く、合見積もりを取ってコストを削減しようとか専門家に依頼して本当に必要な修繕を評価してもらおうといった発想は一切なかった。

もちろん、提案したところで他者の意見などまるで聞き入れない。

私は当初は粘り強く説明して説得を試みていたが、まるで話を聞いてもらえず、ばかばかしくなって総会への出席をやめてしまった。関わったところで意味がないし、時間の無駄だと判断したからである。

時間の経過とともに、所有者たちの高齢化はさらに進む。相続を経ると所有者が若返ることもあるが、売却されることも多く外国人所有者の比率も増えてきて、さらに合意形成は難しくなってきた。

この物件ももう築50年を迎えるので本来であれば何もしないわけにはいかないのだが、建て替えを主張する派と、最低限のメンテナンスで済ませたい派が対立し、相変わらず話はまとまらない。

耐震補強が必要な状況であるし、配管も老朽化しており一刻も早い対策が必要なのに、抜本的な合意形成に至らないのだ。

所有者たちはまるで、沈没しかかっているのに危機感を持つことなく、客船に乗ったままくつろいでいるタイタニックの乗客のようだった。

修繕積立金の制度の破綻

さらに深刻なのは、不動産を共有することに起因する財務的な問題だ。

区分所有マンションは土地や皆で使用する部分を所有者が全員で共有するという前提があるので、皆で将来の大規模修繕工事に備えて修繕積立金を積み立てていくことになる。

しかし、すべての人が築年数が経過するに従い年々増加傾向にある管理費と修繕積立金を払いきれるわけではない。所有者が高齢化すれば、なおさらだ。

一部の所有者が修繕積立金を払えなくなると、その負担は最終的には他の所有者に転嫁される。

法的には相続人などに請求することはできるのだが、実際のところそこまで追いかけることは難しい。積立金の取りっぱぐれが積み重なると、修繕積立金の制度そのものが破綻しかねない。

しかも区分所有はあらゆる意思決定に多数決が必要であり、個人の裁量でできることは限られる。

自らのマンションが老朽化し、必要な修繕もできないままに資産価値が低下し、朽ち果てていくのを、指をくわえて見ていることしかできないという危険な状況に陥りやすい資産なのだ。

実際にこの物件にも、漏水トラブルが起こった。配管の老朽化が原因と見られるが、問題のある部分が専有部分なのか共有部分なのかを判断するには調査が必要であり、その調査自体に物理的な解体が必要とされた。

入居者がいる状態でそれを行うのは極めて困難であり、専有部分の問題であれば所有者の対応だが、共有部分であれば管理組合の決定が必要で、前述した通りその決定プロセスは硬直化しており柔軟には機能していない。

結局そのときは損害保険が下りたのだが、こうしたことが続き、払い出し保険金が年々増加していけば、保険会社が契約を更新しなくなる可能性も出てくる。

要するに、自分の意思だけでは何もできない区分所有のマンションは、投資対象としては適していない。

近年はタワーマンションが雨後の筍のように乱立しているが、子育て世代に人気のエリアなどでは特に属性や年代が均質になりがちで、いずれ年が経てば間違いなく高齢化が一気に押し寄せるだろう。

たとえば武蔵小杉では続々と誕生するタワマンに子育て世代が集中したことで小学校不足に陥ったが、こういうエリアや物件ではいずれ一斉に高齢化が進むことは間違いない。

かつて高度経済成長期の住宅政策における象徴的存在だった多摩ニュータウンが辿った道と、同じ道を辿っているといえるだろう。

文/小林大祐

2035年 増える富・消える富の見分け方 インフレ地獄を生き抜く資産戦略

小林 大祐

2026/3/11

1,980円(税込)

320ページ

ISBN: 978-4046076588

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