15歳で日本で生きることを選んで 外国籍ルール改定も…日本バスケに育てられた「B登録選手」が存在感
京王電鉄 presents Wリーグプレーオフ 2025-26 ファイナル
新制度となった女子バスケットボールのWリーグで、2人の“元留学生”がプレーオフを奮闘している。3戦先勝制のファイナルはトヨタ自動車とデンソーが1勝1敗で並び、11日に第3戦が行われる。両チームで重要な役割を担っているのが、高校時代に留学生として来日した外国籍選手だ。今季からリーグの登録規定が改定され、海外リーグからも外国籍選手が直接加入する状況になったが、日本で育った彼女たちの存在感は変わらない。
シュートを外しても、リングの下にはアマカがいる――。その信頼がトヨタ自動車の迷いを消した。初戦を落として迎えた5日の第2戦、主将の山本麻衣は内から外から果敢にシュートを打ち続けた。両軍最多の22得点で57-41の勝利に導いたエースは、コート上のインタビューで微笑んだ。「アマカ、ありがと」。視線の先には、ベンチ前で仲間とともに見守るオコンクウォ・スーザン・アマカがいた。
「自分ができることをしっかり。それはリバウンドや、空いた時に強いシュートを打つことなので」
10得点、15リバウンドを挙げたナイジェリア出身の24歳は、日本語で照れくさそうに謙遜した。187センチ、84キロの体をただ張り続けるだけじゃない。チームメートがどういうシュートを打つか、外れた場合にどういう跳ね返り方をしてくるか。頭を使って、リバウンドを取るためのポジションにすっと入る。大神雄子ヘッドコーチ(HC)も「ボールに対しての執着や嗅覚はW(リーグ)で本当に一番」と称えるほどだ。
全国優勝71度を誇る名門・桜花学園高(愛知)に留学したが、異国での生活は簡単ではなかった。日本語もわからないし、食事も合わない。正直、しんどい。まだ15歳だった少女の心が折れそうな時、思い出したのは父の言葉だ。
「ここでプレーするんだったら、言葉も学ばないと生きることができないし、ご飯も食べられないと生きることができない。そこをしっかりやったら、良いことになるよ」
バスケだけ頑張ってもダメだ。言葉を覚えるために、仲間と積極的に交流を図った。パンばかりだった食生活も変えて、米と肉をたくさん食べるようにした。日本の食事に慣れると、細かった体もだんだん大きく、強く成長した。納豆や豆腐はいまだに苦手。でも「食べられるものはちゃんと食べる。野菜が好き。肉よりも魚のほうが好きかな」と日本語で誇らしげにはにかんだ。
インターハイ、ウインターカップ優勝を経験し、白鴎大に進学。大学でもインカレ連覇に貢献し、4年時の2024年11月にアーリーエントリー制度でトヨタ自動車入り。日本に残ってプレーすることを選んだ。そのまま正式契約して迎えたルーキーイヤーの今季、リーグが大きな変革に乗り出した。「通算5年以上日本国に在留していること」という外国籍選手の登録条件を撤廃し、海外リーグからの選手獲得に門戸を開いたのだ。
目的は「日本女子バスケットボールの強化・発展に繋げていくこと」。これにより、外国籍選手は「日本において3年以上の就学実績を有し、かつ、卒業後直ちに選手登録を希望する選手」である「B登録」と、これに該当しない「A登録」の2つに区分されるようになった。アマカはB登録にあたる。どちらの区分でも外国籍選手は各チーム2人までで、コート上に1人ずつしか立てないのは従来通りだ。
元留学生は登録ルールの変化をどう感じた「嬉しいけど…」
トヨタ自動車はA登録外国籍選手として、米国出身のシュック・カイリー・アネットを加えた。196センチ、104キロとアマカよりも一回り大きなセンターで、世界最高峰WNBAやギリシャ、ポーランド、ロシアなどでプレーしてきた実績を持つ。他のチームにも体が大きく、経験も豊富な選手が海外から入ってきた。「嬉しいけど、頑張らなきゃいけない」。“世界”との勝負はアマカに火をつけた。
武器になるのが日本のバスケで鍛えられた「足」だ。「桜花の時はディフェンス頑張らないと井上(眞一)先生(監督)にめっちゃ怒られたので」。小柄な分スピードに長けた日本の選手についていくために、走りに走った。「日本に来て足も速くなった。もし海外に行っても普通にプレーできると思う」。ファイナルはカイリーを差し置き、2戦ともに30分以上の出場で2桁得点、2桁リバウンドと輝きを放った。
もう1つ大きいのは、日本語ができることだ。起用する大神HCも「チームを作る前提で一番大事なのはやっぱりコミュニケーション。高校や中学から日本に来ている選手は文化、言語、環境に順応できている」とB登録外国籍選手の強みを挙げる。同時に海外リーグから入ってきた選手も気持ちよくプレーできる環境を作っていくことが、今後のリーグの課題だとも指摘した。
対するデンソーにも「B登録」の元留学生がいる。セネガル出身の28歳シラ・ソハナ・ファトー・ジャだ。第1戦で14得点、5リバウンドと躍動し、75-66の勝利に貢献した。開志国際高(新潟)に留学。白鴎大を経てトヨタ自動車に加入し、2024-25シーズンからデンソーに移籍した。
「日本に来たときは言葉もわからなかったし、最初の1年はまだ全然日本のリーグも知らなかった。でも1、2年やって、トヨタで練習試合したときに、私は絶対Wリーグ、ここに入りたいなと思った」
日本のバスケは海外と「結構違う」。特徴に挙げたのはやはり「スピード」だ。今回の登録ルール改定は、国内しか知らない選手が普段から世界に触れられるようになるだけでなく、来日する海外選手の成長にも繋がるとソハナは見ている。
「海外から来ている人たちも、日本の速いバスケットを経験できる。世界中のバスケットがまたレベルアップするかなと思う」
新たな一歩を踏み出したWリーグの頂点を決める戦いは、11日から京王アリーナTOKYOで再開する。限られたポジションを競い合うライバルが増え、対戦相手の手強さも増すばかり。それでも、中学や高校から親元を離れ、長年日本で積み重ねてきた日々は裏切らない。
(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)
