【注目】高齢で“運転卒業”するドライバーが手放す愛車を震災被災地へ寄付…リサイクル売却益で支援する活動(静岡)
東日本大震災からちょうど15年となった3月11日、1台の愛車を手放す決心をした人がいました。静岡・沼津市に住む千野秀雄さん、92歳です。
(千野 秀雄さん・92歳)
「自分の家族と一緒で、なかなか手放すことができなくてね。いい思い出もたくさんいただきました、この車に」
千野さんは若いころ、バスの運転手として働いていたほどの“運転好き”。この車には18年間乗り続けてきましたが、2月に車検が切れたことを切っ掛けに自分の年齢のことも考え“運転を卒業しよう”と決めました。
「自分も年だしね。これ以上やって事故でもしたら大変なことになるもんでね」
高齢ドライバーによる事故が社会問題となる中、“いつ、どうやってハンドルを置くか”。
75歳以上では、事故のリスクが2倍というデータもあり、『そろそろやめたほうが…』と感じている人も少なくありません。とはいえ、長年乗ってきた車を手放すのは、簡単なことではありません。
(千野 秀雄さん・92歳)
「さみしいです。本当に考えると涙が出ちゃって。本当に家族だからね、この車はね」
“家族のような車”を、ただスクラップにするだけで終わらせたくない。そんな時に出会ったのが、「廃車リサイクルde応援」という仕組みでした。
これは、東日本大震災を切っ掛けに誕生した、被災地への車支援を行う「日本カーシェアリング協会」が行っている取り組みで、車検切れや動かなくなった車など、通常なら廃車になる車を無償で引き取り、解体して部品や素材をリサイクルすることで、 その売却益を、被災地での車の支援にあてる仕組みです。
(引き渡しの場面)
「お願いします」
「次の災害支援に大切に使わせていただきます」
廃車にするのにも費用がかかる中、無償で引き取ってもらえ、しかも自分の車が“誰かを助ける一歩”になる。千野さんは、『この車が、誰かの役に立てば…』と、寄付を決めました。
(千野 秀雄さん・92歳)
「皆さんのためにね、もう一回花を咲かせてもらって、この車が世の中に貢献してもらいたいです。」
(日本カーシェアリング協会 静岡支部 増本 恵子さん)
「ただ廃車してしまう車ではなくて、たくさん思いが詰まったお車になりますので、その思いというところも私たちが引き取らせていただきまして、次の災害支援につなげていけるような活動にしていきたいです」
協会に寄付された車は、提携するリサイクル工場に運ばれます。千野さんの車も、富士市の自動車リサイクル会社で、再び“出番”を待っていました。
(イワマワークス 小泉 みなみさん)
「こちらの車両は年式的に主流には回っていないんですけど、走行距離が少ないということで、エンジン回りや足回りの関係をリサイクルさせていただきます」
まだ使える部品は、整備されたうえで別の車の修理に使われます。車体の鉄やアルミなどの素材も再資源化され、その売却益が被災地への車支援のための資金となります。
(イワマワークス 小泉 みなみさん)
「車だけでなく、部品として災害支援に活用させていただいています。皆さんのご協力になればと思っています」
「日本カーシェアリング協会」の車支援は、静岡県内でも行われています。
台風15号による国内最大級の竜巻から2週間後、牧之原市では、多くの車が瓦礫に当たったり飛ばされたりして使えなくなり、移動手段に困る人が相次ぎました。
(日本カーシェアリング協会 静岡支部 森 政文さん)
「(この地域は)車社会ですから、災害ゴミを出すにも、一時的に仮住まいに家財を運ぶためにも、軽トラとかの必要性を感じました」
(スマイルNEXT 竹市 恵美子さん)
「送迎車は本当に欠かせないものでしたので、大変助かっております」
車を失った被災地で、“足”を失った人たちの暮らしを支える車。その一部には、千野さんのように、運転を卒業した人たちの『思いの詰まった車』が、形を変えて生き続けているのです。
18年間“家族”のように過ごしてきた車を手放し、ハンドルを置くという決断。でもそれは、“何かを失うだけ”ではなく、“誰かを助ける一歩”にもなっていました。
(スタジオ解説)
(澤井 志 帆キャスター)
津川さん、この千野さんのご決断、そして車を手放すことが被災地支援につながるというこの仕組み、率直にどう思いますか?
(津川 祥吾 アンカー)
まず何より千野さんの車への愛情というのがすごく感じられましたし、本当に大切に乗ってきたんだなという感じがしますよね。私なども、まだ千野さんに比べるとずっとずっと若い世代ですけども、そろそろ車を何年まで乗ろうかなとか、どうやって乗り納めしようかなと…考え始めているので、すごく参考になりましたね。
(澤井 志 帆キャスター)
藤井さんはいかがですか?
(コメンテーター news zero メインキャスター 藤井 貴彦氏)
千野さんが最後、青いタオルで車を拭いているのを見て、本当に大切にしてきたんだなと思いますし、あの車自体も、「よし、じゃあ次の場所でもう一花咲かせよう」と思ってくれるんじゃないかなと思いました。
(澤井 志 帆キャスター)
素敵な循環が生まれますよね。さて、高齢ドライバーによる事故がニュースになるたびに、「自分もいつか運転をやめないと」…と感じる方もいらっしゃると思います。
実際、75歳以上というのは、事故のリスクがこのように2倍近くになるというデータもあるんです。一方で、免許を返納してしまうと、今度は病院や買い物にどうやって行けばいいのか?という不安も出てくると思います。津川さん、この「事故を防ぎたい」という気持ちと、「でも移動が不安」というこのジレンマ、どうご覧になりますか?
(津川 祥吾 アンカー)
そうですね、やっぱり事故は絶対起こしたくないと思うんですよね。高齢者だけではないですけども、ただ問題は、車を手放さない、免許を返納したときに、どうやって移動するのかというところなので、千野さんはどうされたんですかね、気になるんですが。
(澤井 志 帆キャスター)
千野さんの場合は、今後は同居する娘さんが送迎されるということなので、そこは心配は、今のところはないということなんですけれども、それがない人ももちろんいらっしゃいますからね。私の祖母も2年前に88歳で免許を返納したんですが、運転が好きな人だったので、返納した途端にちょっと元気がなくなってしまって、家族としてどう見守っていくべきかというのは、悩むところがあるんですけれども。藤井さんはニュースを伝えられる立場として、こういった運転卒業の問題をどう見ていますか?
(コメンテーター news zero メインキャスター 藤井 貴彦氏)
本当に「卒業」というより、「勇退」だと思うんですよ。自分が事故を起こしてしまうんじゃないかというリスクを先取りして、自らの身を引いていく、これは「勇退」以外の何ものでもないですよね。その判断ができるということが素晴らしいですし、それがまた違うことにつながっていけば、こういった車が被災地支援になるって素晴らしいことですよね。
(澤井 志 帆キャスター)
そうですね。そうなるためにも、やはり周囲のサポート体制というのは、津川さん、やっぱり必要となってきますね。
(津川 祥吾 アンカー)
そうですね。これ、高齢ドライバーだけではなくて、例えば障がいのある人の中には、運転免許証をそもそもとれないという人もいらっしゃいます。私、以前、交通基本法という法律を議論したときに、視覚障がいの人に来ていただいて、ご意見いただいたんですけれども、その人の話では、「移動するということは生きることなんです」っておっしゃってたんです。当たり前に移動することができる立場からすると、あまりそこを感じたことなかったんですけれども、本当に生きる意味で…上で、移動することができるというのは、とっても大事な権利なんだなと思いました。ですから、公共交通機関をどうやって維持するかとかですね、なるべくみんなで集まってコンパクトな街を作るか…というところも含めた生き方、生活の仕方、全体を考えた街づくりというのが、本当に必要なのかなと思いますね。
(澤井 志 帆キャスター)
運転をいつ、どう「卒業」するかを考えた上で、藤井さんは、どんなことを意識しておくといいと思いますか?
(コメンテーター news zero メインキャスター 藤井 貴彦氏)
そうですね。私はもう、実はキャスターの仕事をやっている間、車を運転しないと決めているんですけれども、あと、さっき「勇退」と言いましたけれども、皆さんにとって、車を運転すること、移動できることのプライドを大切にしてもらいたいなと思いますね。「おじいちゃんも運転できなくなっちゃったから、私たちが運転してあげるよ」…じゃなくて、「一緒に行こうよ」。プライドを大切にしながら、提案してあげられると、みんなの気持ちが優しくなるんじゃないかなと思います。
(澤井 志 帆キャスター)
津川さん、その本人の気持ち、周りの気持ちも大切にしていきたいですね。
(津川 祥吾 アンカー)
そうですね。千野さんのような先進的な取り組みを、私たち後輩も、ぜひ参考にしたいなと思います。
(コメンテーター news zero メインキャスター 藤井 貴彦氏)
その通り。
(澤井 志 帆キャスター)
ハンドルをおく一歩が誰かを助ける一歩にもなると、そんな選択肢があることを、きょうのハテナから感じることができました。
