《“子分ゼロの一人親分”増加》「山口組との縁組」続く背景に、ヤクザを“やめたくてもやめられない”事情【射殺された人気ラーメン店主、実は一人親分】
広域系三次団体組長だったオットが獄死。著書『極姐2.0』を持つ、本名・出身地もろもろ非公開の元極道の妻がリアルな暴力団の世界を語る。
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東京・六本木の名門組織である「東声会」の会長に六代目山口組の中核組織・弘道会の小澤達夫若頭補佐が就任して話題になりましたね。
もともと東声会初代の町井久之会長は三代目山口組・田岡一雄組長と兄弟盃を交わしていて縁戚関係にはありましたが、他団体の幹部がいきなりトップになるのはなかなかないですよね。
「山口組、関東進出か!」とかネットにも出ていますが、実はそういうのは前からありました。たとえば、東京・台東区の名門である国粋会も、2005年9月に山口組傘下に入っています。しかもそれから2年もたたないうちに会長が亡くなって、「自殺? 他殺?」と騒動になっています。
国粋会は、銀座や六本木などを「縄張り」にしていて、ほかのヤクザ組織に貸して「賃料」を取っていました。これって関東独特のシノギといわれていますが、「貸していた縄張りを返してもらう」つまり「山口組の縄張りにする」という動きがあったということでしょう。山口組側から「縄張りを返してもらえ」と迫られ、会長は困っていたようですが、実際のところはどうなんですかね。
あと、2024年11月に八代目会津小鉄会会長に六代目山口組の二次団体・淡海(おうみ)一家の総長が就任して、こちらも「山口組の直系組長が他組織のトップに転出するのは史上初」と報道されました。まあこちらは事情がちょっと違います。
京都と滋賀県を拠点にする淡海一家の高山誠賢総長は、四代目会津小鉄会・高山登久太郎会長の実子です。稼業について学ぶために五代目山口組に「預けられて」いたといわれています。もともと総長は大学を出ていて、稼業を継ぐことは考えていなかったそうですから、いろいろあったんでしょうね。
まあ、どこの組織も人が不足していますから、山口組との関係強化は重要な選択なのでしょう。
工藤会・野村総裁の引退と山口組の北九州進出
もちろん山口組の組員もかなり減ってますし、各都道府県の公安委員会から「特定抗争指定暴力団」とされていて事務所も使えず、組織として機能することが難しい状態なので、他組織との縁組はこれからも増えると思います。
また、北九州を拠点にしている五代目工藤会は、野村悟総裁の引退が伝えられましたね。総裁は市民を狙った4つの襲撃事件に関与したとして殺人罪などで起訴され、一審で死刑、二審で無期懲役の判決を受け、現在は上告中です。
以前から引退の噂はあったんですが、「そのほうが判決に有利かもだから?」くらいに思ってましたら、工藤会側(最高幹部ら)が引退を決めた翌日に、野村被告を説得し、本人も承諾したそうです。あらら……。これからどうなさるのでしょうか。
これで山口組が北九州進出か、と話題になっていますが、総裁の引退の前から進出は視野に入れてたでしょう。工藤会は「反・山口組」として知られていましたが、幹部同士の個人的な親交は続いてきました。
山口組の幹部の面会も一度や二度ではないようです。縁戚関係はお互いにメリットがあると思いますが、みんな「山口組系」になっちゃうのは微妙なところですね。
子分ゼロでも解散できない「一人親分」が増加
ヤクザ界では人手不足ゆえ縁組が増えているのですが、改めて考えると、やはり暴排条例(暴力団排除条例)の影響は強いです。この条例は「暴力団員」だけでなく、「暴力団員と関係を持つ人や組織」も取り締まるものです。これは破壊力がありました。
銀行の口座もクレジットカードも作れない、家もクルマも買えない・借りられない、宅配便も送れない、子どもが学校にも行けないとなって、離脱する組員が増えました。さらに、経済の低迷や少子高齢化も影響していますね。若い人たちはヤクザは儲からないとわかっているのです。
一方、どの組織でも「子分ゼロの一人親分」が増えています。たとえば、2023年に射殺された神戸市内の弘道会傘下の組長に、組員は一人もいなかったと報道されました。組長は、「人気のあるラーメン屋さんの店主」として知られていて、カタギでもじゅうぶん生活できるはずでした。
しかし、抗争相手である神戸山口組の中核組織・山健組が強い神戸市において唯一の弘道会系組織なので、やめたくてもやめられなかったようです。事務所は兵庫県公安委員会に使用を差し止められて使えず、郵便受けには郵便物がたくさんたまっていたと報道されていました。
一人親分が増えたということは、組を離れてカタギとなった元子分たちも多いということ。彼らの生活が心配です。ちゃんと足を洗ってカタギになれたのでしょうか。
【プロフィール】 待田芳子(まちだ・よしこ)/本名・出身地もろもろ非公開の元極道の妻。広域系三次団体組長だったオットが獄死。その後は普通のオバサンとして生きようと思ったのに、暴力団排除がひどすぎで声を上げずにいられなくなり、いろいろ発信している。著書に『極姐2.0』(徳間書店・2018年)がある。
