衝撃の展開が続く「リブート」最終盤 残る謎「スパイは誰か」 回収されていない「伏線」とは
冬橋が最強か
今季一番のヒットドラマ「日曜劇場 リブート」(日曜午後9時)の終幕が近づいて来た。前半はハードボイルド色が濃かったが、今では「家族とは何か」というメッセージも鮮明になっている。謎を抱えたまま物語が進行するところは一貫している。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
***
【写真】セクシーな肩出し黒ドレス姿の戸田恵梨香。美脚スラリ…全身ショットも
思いもよらない展開が続いた「リブート」だが、今後の物語で分かっていることが1つある。合六亘(北村有起哉)がパティシエの早瀬陸(鈴木亮平)とその妻で公認会計士の夏海(戸田恵梨香)を殺そうと躍起になることだ。
15日放送の第8回、夏海は合六が代表を務める犯罪組織「ゴーシックスコーポレーション」の重大な秘密を知っていることが分かった。3年前、ゴー社から何者かが横領したはずの10億円が、実際には次期首相候補で野党第1党党首の真北弥一(市川團十郎)に闇献金されていた件だ。

この件が発覚したら、合六も真北弥一も政治資金規正法違反で逮捕される。2人とも破滅だ。香港の犯罪組織のボスであるマー会長からゴー社が預かった100億円の商品も弥一の闇献金になることを夏海は知っている。冷酷非情な合六が生かしておくはずがない。
そのうえ夏海は警視庁捜査1課の刑事・儀堂歩(鈴木亮平、2役)と結託して10億円を横領し、死んだことになっている。合六としてはますます生きていては困る。
同じ第8回、早瀬は幸後一香(戸田恵梨香、2役)の正体が夏海であることを知った。夏海と早瀬は10億円事件と100億円事件の真相を共有するはず。そうでなくても早瀬は知りすぎた。やはり合六は殺そうとする。
もっとも、早瀬と夏海も合六と戦おうとするに違いない。家族との平穏な日々を破壊された恨みは深い。そもそも合六を倒さないと、自分たちが殺される。
パティシエの早瀬と公認会計士の夏海では戦力的に不安だが、アウトロー生活を送ってきた冬橋航(永瀬廉)が味方になるのは確実だ。第7回、家族同然の存在だったマチこと舞浜千秋(上野鈴華)が合六のせいで死んでいる。マチを失った冬橋は身も世もないほど憤り、復讐に燃えている。
第8回の冬橋はマチが死んだ責任は夏海にあると思い込み、夏海に銃口を向けた。しかし、すべての非は100億円の商品が盗まれたように偽装した合六にある。冬橋も気付くだろう。マチはこの商品を奪い、冬橋が悪事から離れられるようにしようと考えたが、殺された。
冬橋とマチは家庭に居場所のない子供や若者たちの救済活動をしていた。それには金がかかる。冬橋は合六の手下として悪事を行い、資金を得るようになった。冬橋は天使性と悪魔性を併せ持つ。
だが本質は純粋な青年だ。マチと一緒に居場所のない子供や若者を受け入れるNPO法人「しぇるたー」を立ち上げた。冬橋はマチに対し、「子供たちにはおいしい物をお腹いっぱい食べさせたい」と言っていたという。邪悪な人間であるはずがない。
NPOの設立に力を貸したのが夏海だった。夏海は冷たい大人たちとは違った。冬橋は早瀬から「一香は夏海」と聞いたが、まだ半信半疑。それが確信に変わったら、協力するだろう。
冬橋は夏海に銃を向けたが、早瀬が間に割って入ったため撃てなかった。そもそも冬橋は撃てたのか。「一香は夏海」と聞かされたあとだ。銃口を夏海に向けてから早瀬に止められるまで、23秒もあった。途中、夏海は覚悟を決めたように目を閉じたが、それでも冬橋は撃たなかった。いや、夏海の可能性があると思うと、撃てなかったのだろう。
家族に拘る異色作
ホームドラマではないにも関わらず、ここまで家族に拘る作品も珍しい。早瀬と夏海、儀堂と妻・麻友(黒木メイサ)、合六と妻・陽菜子(吹石一恵)、一香と妹・綾香(与田祐希)、警視庁観察官・真北正親(伊藤英明)と妻・葉月(小橋めぐみ)、さらに大物政治家・真北弥一。陰惨な場面と並行して「家族とは何か」と繰り返し問い掛けてくる。
冬橋とマチの関係を家族同然と書いたが、本人たちにとっては家族だ。この2人に限らず、家庭環境に恵まれない子供や若者は親しい仲間と疑似家族をつくりやすい。家族愛を欲しているからだ。
疑似家族の結び付きは傍の人間が考えているより遥かに強い。仲間の窮状は放っておかない。仲間が誰かに傷つけられでもしたら、ただでは済まさない。最終盤で一番恐ろしい存在は合六でも弥一でもなく、冬橋ではないか。
第8回終了段階での一番の名セリフも冬橋が口にした言葉だと思う。第7回だった。マチが冬橋とNPOのために100億円の商品を奪おうとし、死んだあとである。マチに商品の存在を教えた早瀬が「すまねえ」と詫びると、冬橋は冷めた口調でこう言った。
「人のせいにして生きてねえよ、マチは。あいつは自分で決めて、家族のためにここに来ただけだ」
家にも世間にも頼らずに生きる冬橋やマチの姿勢が伝わってきた。ただし、半分は虚勢である。残り半分は誰も助けてくれない冬橋たちの哀しみが言外に表されていた。その分、家族である仲間は掛け替えのない存在であるという冬橋の切実な思いも伝わってきた。
合六は冬橋たちの結び付きの強さを侮っている。冬橋がゴー社の悪事の全容を知ったとき、合六は地獄を見るはずだ。
一香の悲しいウソ
第8回、家族のために悲しいウソを吐き、死んでいったことが分かったのは本物の一香である。顔を含めた自分の存在を合六に1億5000万円で売り渡した。
一香の存在は夏海が受け継いだ。その夏海に向かって一香は「このお金で綾香を助けてほしい」と頼む。綾香は重い肺病を患い、移植手術を受けなければ生きられない。その手配を自分でやることを一香は否定する。「あの娘の面倒を見るのに疲れちゃった」と言い放ち、今後については「海外に行って、遊んで暮らす」と言った。
ウソだ。合六からの報酬の全額を夏海に託しながら、どうやって海外で遊んで生活するというのだ。その直後に一香は合六の手下に射殺された。綾香のために死ぬことを覚悟していたのではないか。だから夏海に1円も残さず託し、移植を依頼した。
「面倒を見るのに疲れた」。もし一香が病床の綾香を疎ましく思う薄情な姉なら、成り代わった夏海はやさしかったので、不審に思われるはず。綾香が夏海を受け入れたのは一香もやさしかったからだ。
憎まれ口を叩いた一香は、早瀬を使って麻友に「女と海外に逃げた」と言わせた儀堂と似ている。それぞれの言葉が適切なのかどうかは分からない。だが、一香も儀堂も最後まで家族のことを考えていたのは確かだ。
儀堂は第6回で冬橋に拳銃で4発撃たれ、殺されたことになっている。本当に死んだのだろうか。弾は頭部、首、心臓などの急所を外れていた。合六の目から逃れ、どこかで治療を受けているのではないか。
そう考えるのは第8回で夏海の回想シーンが流れたから。儀堂は撃たれる直前、夏海とコンテナに入り、密談を交わした。夏海は自分が100億円の商品を盗んだ犯人だと名乗り出ると言った。すると夏海は殺されるが、儀堂は助かる。夏海は儀堂に早瀬を助けてほしいと頼む。
「私は早瀬夏海なの。合六は私の夫を殺そうとしている」
印象的なのは夏海の次の言葉だ。
「麻友さんと幸せになることを祈っている」
2人がコンテナから出ると、儀堂が「オレがやった」と名乗り出て、撃たれた。想定外の展開だったが、早瀬は守られた。儀堂の刑事としての良心か。死ぬつもりだった夏海は責任を感じたはず。撃たれた儀堂を黙って見過ごすわけにはいかないだろう。
合六の死体置き場は夏海も知っている。行ったこともある。誰かに儀堂を病院まで運ばせたか、医師を手配したと見る。
合六の警視庁内のスパイは誰か。やっていることの大きさから考えると、監察官の真北正親(伊藤英明)以外は考えにくい。儀堂のロッカーに早瀬を騙すためのパソコンを入れたり、一香と夏海の歯形を入れ替えたり。平刑事クラスでは出来そうにない。
真北なら刑事部捜査1課(殺人など)から同2課(贈収賄など)、同鑑識課から、組織犯罪対策部(暴力団対策、来日外国人犯罪など)まで自由に往き来できる。また第7回で真北は兄の弥一と一緒に合六と会っているところを早瀬に目撃されている。
合六のスパイをしながら、6年前から儀堂を使って合六を監視していたと考えれば、辻褄は合う。監視の目的は弥一への献金が途絶えたり、献金が発覚したりするのを防ぐためだ。
気になる点も残されている。真北の妻・葉月のひき逃げ事故のエピソードにまだ焦点が当たっていないことである。真北は第4回で「僕みたいに出世の見込みがなくなると」と自虐的な言葉を口にした。理由は葉月のひき逃げに違いない。
警察組織では、家族が罪を犯した場合、報告を義務付けている。処分を受けるケースもある。真北は処分を軽くするため、弥一かほかの誰かを通じ、合六に工作を頼んだ。それが弱みになってしまい、スパイになったのではないか。
エンドマークが出るまで謎が残りそうだ。
高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。
デイリー新潮編集部
