真のお金持ちはどんなクレジットカードを持っているのか。日本マクドナルド創業者の藤田田さんは「何十億円の買い物すら保証する世界最高峰のクレジットカードには、ある暗号が刻まれている。そうした富豪たちの話を聞いていれば、日本のビジネス環境やサービスは所詮『イナカッペ』だ」という――。

※本稿は、藤田田『起業家のモノサシ』(KKベストセラーズ)の一部を再編集したものです。

アメリカの土地成金に「フン」と鼻で笑われた

日本でもここ数年、土地成金が話題になっているが、アメリカと比較するとチャチなものである。

先年、私はアメリカから来たノーマン・スミスという男を、日本の大手の私鉄が行なっている宅地造成の現場へ連れていったことがある。彼が日本でデベロッピングをやりたいといってたずねてきたので案内したのだ。

現場を見て、ノーマン・スミス氏は、鼻先で「フン」と笑して帰っていった。

「何しろ規模が小さくて話にならん。今度、アメリカに来たら俺に連絡しろ。これがデベロッピングだ、というのを見せてやる」というのが、日本を去るときの捨てゼリフである。

その後、私は社用でアメリカへ飛んだとき、その言葉を思い出して、ノーマン・スミス氏に電話を入れた。

写真=iStock.com/alessandroguerriero
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/alessandroguerriero

「やあ、デンか。明日、会いに来いよ」

ノーマン・スミス氏は私にそういった。私は返事を渋った。明日来い、といわれても、私の渡米は社用だったし、ちょうど翌日は、マクドナルドのセミナーに出席しなければならないスケジュールになっている。

■マック重役「行きなさい、デン」

私は、明日はセミナーがあるからダメだ、と答えた。

「セミナーだって? まあ、いいさ。マクドナルドの重役に、ノーマン・スミスが明日来い、といっているのだがどうしたものか、と相談してみたまえ」

ノーマン・スミス氏はそういうと電話を切った。私は、スミス氏のいった通りに、マクドナルドの重役にたずねてみた。

「ノーマン・スミスだと? なぜ彼を知ってるのかね」

マクドナルドの重役は目を丸くして私を見たが、すぐに私に言った。

「行きなさい、デン。ノーマン・スミスが来いといってるのなら、行ったほうがいい」

私は、翌日、ノーマン・スミス氏に会いに行ったが、そこで彼の話がハッタリでも嘘でもなかったのを認めざるを得なかった。何しろすごい。

カリフォルニア州には都会は3つしかない。サン・フランシスコとロス・アンジェルスとサンディエゴだ。ノーマン・スミス氏はそのサンディエゴの中心街の土地の大半を所有する大地主だったのである。

■スケールの大きさにド肝を抜かれる

彼はそこで、町のド真ん中に市民の憩いの場のゴルフ場を作り、その周囲に住宅街を配置した理想的な都市を作り上げていた。

ノーマン・スミス氏は自分の家の建物の最上階に私を連れて行き、はるかかなたの地平線を指さして言った。

「見たまえ。目の届く範囲は全部俺の土地なんだぜ、デン」

写真=iStock.com/eyecrave productions
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/eyecrave productions

私はド肝を抜かれてしまった。

スケールが違うのである。そして、アメリカは、こうした“英雄”が出現するような、合理的な税制を敷き、国民の勤労意欲をうまく、くすぐっているのである。

働けば金持ちになれる。それがわかったとき、若者は未来に夢を描き、自分自身のために働きはじめるのだ。

商売人にとって、儲けることは美徳でなければならない。私はノーマン・スミス氏の横顔を眺めながら、つくづくそう思ったものだ。

アメリカの富裕層が日本の百貨店で

私の友人のひとりに、ハイマン・マッソーバー氏という中近東系のアメリカ人がいる。シカゴでナンバーワンのダイヤモンド商だ。このマッソーバー氏にもスケールの大きさを見せつけられたことがある。

先年、マッソーバー氏は東京へ遊びに来たが、そのときショッピングに出かけた日本橋のデパートから、私のオフィスへかなり興奮して電話をかけてきた。

藤田田『起業家のモノサシ』(KKベストセラーズ)

「おい、デン。おれはビックリしたよ」そういう彼の電話を聞いて、今度は私のほうがびっくりした。

マッソーバー氏は某社のクレジット・カードを持っているが、そのカードで88万円の象牙の仏像を買おうとして、売り場で断られたというのである。

日本のクレジット・カードの場合、一回の買物は原則として10万円以下と決められていたり(当時)、ほかにもいろんな制約があるが、マッソーバー氏のカードは“特別”なのである。

ところがそれをどう説明しても、売り場は「困ります」の一点張りだというのだ。

■“無限保証つき”のクレジット・カード

私は、舌打ちをしたが、イナカッペにしろ何にしろ、デパートが話がわからないとあっては仕方がない。やがて、マッソーバー氏は私のオフィスへ帰ってきたが、問題のクレジットカードを私に見せると、苦笑しながら説明してくれた。

マッソーバー氏の使っているクレジット会社のカードの左肩には小さな暗号が刻んである。

1、2、3……6、7、とあってその次にマッソーバー氏のカードには8の代りに8が横になった“無限大”=∞のシルシが入っているのだ。

これは、ほぼ全世界をカバーしているこの信用保証会社が、限られた何人かの超大金持ちに限って、無限大の保証をしているというシルシであるという。

写真=iStock.com/porcorex
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/porcorex

■つくづく日本は「貧しい」国である

「3とか4なんてヤツはごまんといるんだ。6や7だって結構いる。でもね、俺のは無限大だぜ。極端なことをいえば、俺が何十億円の買物をしたって、信用保証会社は保証してくれるのだ」

マッソーバー氏はそういったものだが、私はそのスケールの大きさに圧倒されてしまった。

おそらく、デパートの売り場で、マッソーバー氏は同じことを説明したと思われるが、マッソーバー氏にくらべたらスケールの小さい“小金持ち”しか扱ったことのないデパートでは、彼の話があまりにも大きすぎて、どうしても納得できなかったのだろう。

日本が「貧しい」国であることはこれを見てもよくわかる。

----------
藤田 田(ふじた・でん)
日本マクドナルド創業者
1926年大阪生まれ。旧制北野中学、松江高校を経て、1951年東大法学部を卒業。在学中GHQの通訳を務めたことがきっかけで「藤田商店」を設立、学生起業家として輸入業を手がける。1971年、米国マクドナルド社と50:50の出資比率で「日本マクドナルド(株)」を設立。同年7月、銀座三越1階に第1号店をオープン。そこからハンバーガー旋風を巻き起こし日本人の食生活を変えていく。「価格破壊」など革新的な手法を次々と展開した。のちに「日本トイザらス」も設立。2004年没。孫正義氏、柳井正氏ら、日本を代表する企業を率いる経営者たちに影響を与えたとされる。『ユダヤの商法』『勝てば官軍』など著作多数。
----------

(日本マクドナルド創業者 藤田 田)