SDGsは「ダサい」「ウザい」!? 学んだはずのZ世代が地球より「世間体」を気にするリアルな本音
数十年ぶりの猛暑や豪雨、少雨や豪雪など、異常気象はもはや日常的なものとなった。温室効果ガスの排出抑制など地球温暖化への対策は世界的な急務である。しかし、こうした問題をよく理解しているはずの20代が、自分自身の問題として捉える姿勢が弱く、行動に抑制的ではないかという指摘が出ている。
これからの日本を背負っていくZ世代(1990年代後半から2010年前後生まれ)の意識は、一体どうなっているのだろうか。
サステナは無関係? 20代のリアル
ニッセイ基礎研究所が’24年に実施したインターネット調査によると、学校などでサステナビリティ(持続可能性)やSDGsについて学んだ経験がある20代の割合は30.9%に上った。これは全体平均(14.9%)の2倍以上である。
SDGsは気候変動や貧困など世界が直面する課題解決に向けた17の目標で構成され、日本も’17年の学習指導要領改定でその理念を盛り込んだ背景がある。
一方で、日本リサーチセンターの’25年社会調査では、〈サステナは自分に関わりがある〉と答えた20代は43.9%にとどまり、全世代で最低水準となった。40代以降が50%を超え、60代以降では60%を上回るなかで、この低さは際立っている。
ニッセイ基礎研究所の准主任研究員・小口裕氏は、20代には特有の姿勢があると分析する。
40代以降がサステナビリティを「家庭」や「子ども」という生活課題として捉え、「他人や社会の役に立つ」という利他的な印象を抱くのに対し、20代・30代は意義を理解しつつも自身の暮らしに結びつけるイメージを描けていないという。さらに、30代以上で高まる「勉強になる、成長する」、高齢層に多い「新しい発見がある」といった前向きな評価も、Z世代は相対的にいずれも低位にとどまっている。
持続可能な社会の実現には余分なコストもかかるなど、決していいことばかりではない。小口氏は、そうした負の側面も見ている20代の心理をこう推測する。
「頭の中でバランスがとれなくなり、行動をとらなくなったり、先送りしているのではないでしょうか」
「意識高い」を恐れるZ世代の本音
さらに、小口氏はZ世代の心理的なハードルも指摘する。世間体に敏感な20代は、サステナビリティの取り組みが「意識高い系」と見られること以上に、利他的な行動を「やりすぎ」と見られることに「恐れ」を抱いているのではないかというのだ。小口氏は、さまざまな調査結果から浮かび上がる20代の若者像を次のように語る。
「価値観やアイデンティティを形成していく年代で、感じやすい世代です。身のまわりの社会のなかで自分がどう見られているかを気にして、波風を立てない行動にとどめ、自ら判断するのを躊躇しているように見えます。まわりの人を見て、他の人と比べているかのようです」
法政大学大学院政策創造研究科の北郷裕美教授も、現代の大学生たちについて同様の印象を抱いている。社会的な経験が乏しい面はあるものの、決して意識が低いわけではなく、彼らなりに考えて冷めた目で社会を見ていると語る。
「大人しく、素直で、批判をせず、むしろ純粋に見えます。全体としては、とてもいい子なのですが、どこか受け身で、慎重で、まわりを見ている感じがします」
この「まわりを見ている」傾向は、別のデータにも表れている。
令和4年(’22年)版の消費者白書が引用した内閣府の調査によると、20代までの約5割が〈自分の考えを相手に伝えることに苦手意識を持っている〉と回答した。さらに、同年代までの約5割が〈自分は役に立たない〉と強く感じ、約7割が〈今の自分を変えたい〉と思っているという。
同白書によれば、10代の約9割、20代の約8割が生活に〈満足している(どちらかというとを含む)〉と答え、自らの生活水準を「中の中」以上と受け止めている若年層の割合は他の年代より高い。SNSや動画共有サービスを頻繁に利用し、ネット環境で生まれ育った「デジタル世代」でもある彼らは、困っている人の役に立ちたいという意識は高い。
しかし、環境問題や社会課題の解決への貢献意欲は他の世代と同程度にとどまっており、同白書も〈若者の環境問題や社会課題の解決への貢献意欲は高いとはいえない〉と分析している。
指導はハラスメント? 大人の遠慮
若年層が受け身で慎重になっている背景には、社会のあり方の変化も影響している。北郷教授は、現代社会では大人が範を示す行動が時に「余計なおせっかい」や「ハラスメント」と受け取られかねない状況があると指摘する。
「昔は年配者から、いろいろと言われて学ぶことがありました。若い人は年配者の話を聞きたくないわけではありません。お互いが遠慮している状況が続いているのではないでしょうか」
社会的な課題に対し、若年層が行動をためらう状況は、社会全体にとっても大きな損失だ。世間体に過敏にならざるを得ない雰囲気を、社会の空気が作り出している可能性も否めない。
では、20代にもっと積極的に動いてもらうにはどうすべきか。小口氏は、行動を促すためのアプローチをこう提案する。
「外からこうすべきだというのは反発を受けやすく、こうするといいですよとか、仲間と一緒にやってもらうとか、行動の負担が下がるようにするのがいいのでは」
「地球を守る」といった壮大な大目標には距離をおいてしまうからこそ、日常的な「小さな利他」で共感を呼べるか、身近な自分のこととして捉えられるかが重要になる。若年層が社会課題にもっと関わりやすくなるよう、行動の負担を下げるような雰囲気に、社会全体が変わっていかなくてはならないのかもしれない。
取材・文:浅井秀樹
