向井理「視聴者に“冷たい人”と思われてもいい」 『ヤンドク!』で挑んだ繊細な役作り
フジテレビ系月9枠で放送中のドラマ『ヤンドク!』で、橋本環奈演じる主人公・田上湖音波の恩人にして最大のキーパーソン・中田啓介を演じている向井理。かつては命を救うことに全身全霊を注いでいた医師でありながら、現在は病院経営を優先する上層部の方針に従う立場にあるという複雑な役どころだ。湖音波から「ダサい」と言われる存在になった中田は何を抱えているのか。これまでにも医療ドラマへの出演経験を持つ向井に、本作ならではの魅力や役作り、そして橋本や宮世琉弥ら共演者との現場エピソードなどを語ってもらった。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
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■『ヤンドク!』は“どちらも正しい物語”
――『サマーレスキュー~天空の診療所~』(TBS系)、『パンドラIV AI戦争』(WOWOW)など、医療をテーマにしたドラマへの出演経験はこれまでもありますが、そんな向井さんから見て『ヤンドク!』ならではの魅力を教えてください。
向井理(以下、向井):オペシーンをアニメーションで表現するというのは、すごく画期的だと思いました。リアルな映像はどうしても見せられる範囲に限界がありますし、苦手な方もいる。でもアニメーションにすることで視覚的に整理されて、むしろ分かりやすくなる。単にカット割りで迫力を出すだけではなく、情報を可視化する工夫になっているんですよね。僕自身はオペに立ち会う立場ではないですが、完成した映像を観て「こういう表現になるんだ」と驚きました。緊迫感はそのままに、新しい医療ドラマの見せ方に挑戦している現場だと思います。
――台本の段階でアニメーション演出について記載されていたんですか?
向井:台本には書いていなかったです。完成した映像を観て初めて「こういう形にするんだ」と知りました。もちろん監督の中ではプランがあったと思いますが、撮影現場では具体的な話は出ていなかったですね。だからこそ、オンエアを観て初めて作品全体の完成形を知るという面白さもありました。
――物語も終盤に入っていますが、ここまで演じてきた手応えや現場の空気感について教えてください。
向井:最初は湖音波と中田、それから病院側との対立構造がはっきりしていましたが、ただ、回を重ねるごとに、ドラマの中でも少しずつ関係性が変わってきて、チームとして同じ方向を向いている感覚が出てきました。大谷亮平さん演じる事務局長の鷹山は締め付ける側に見えるけれど、彼の言っていることも間違いではない。病院経営を守る立場としては正論なんですよね。だから単純な善悪ではなく、どちらも正しいことを言っているというバランスが、この作品の面白さだと思います。現場でもそこは共有していて、いわゆる悪役を作らないように意識しています。
――中田は物語の中で徐々に内面が明かされていきます。演じるうえで、どのような変化を意識されていますか。
向井:第9話以降、視聴者にまだ見えていない部分が明らかになっていきます。中田個人としての葛藤や、事務局長、湖音波、部下たちとどう向き合うのかというところが大きなポイントになりますね。これまではどちらかというと感情を抑えて、何を考えているか分かりにくい人物として演じてきましたが、終盤に向けて少しずつ揺らぎが見えてくる。その積み重ねが第10話、11話で1つの形になると思います。観終わったあとに第1話を振り返ると、「ここに伏線があったんだ」と気づいてもらえるような構造になっているはずです。
――中田啓介という人物を一貫して演じるうえで、大切にしてきた軸は何でしょうか。
向井:第1話で描かれた過去パートに出てきた中田が本来の姿なんだろうなと思いながら演じています。湖音波に「なんでそんなに変わったんですか?」と問われていますけど、もちろん彼なりに理由がある。それが回を追うごとに少しずつ分かっていくんです。だから過去と現在は、感覚としてはほぼ別の人間として立たせています。ただ、芯の部分ではつながっている。その距離感をどう見せるかは意識しました。台本を読んだときの第1印象を大事にしていて、あまり細かくディスカッションを重ねたというよりは、自分が感じた冷たさや距離感をそのまま出している感覚です。視聴者に「冷たい人だな」と思われてもいい。それも含めて中田だと思っています。
■「橋本さんの勢いがそのままドラマの推進力になっている」
――座長・橋本環奈さんとの共演シーンも多いかと思いますが、『ヤンドク!』でご一緒してみて、どのような印象を受けましたか?
向井:本当にパワフルですよね。現場を引っ張る力がある。今回、脚本の根本ノンジさんとも関係性ができているので、ある意味当て書きに近い部分もあって、湖音波というキャラクターと橋本さんのエネルギーが重なっている印象があります。年齢や立場に関係なく、座長として現場を前に進めていく姿は頼もしいですし、その勢いがそのままドラマの推進力になっていると思います。
――撮影以外でコミュニケーションを取る機会もあったのでしょうか。
向井:何度かスタッフやキャスト数名で食事に行ったことはあります。初回放送をプロデューサーやノンジさん、橋本さんと一緒に観たこともありました。橋本さんはお酒もたしなむ方ですし、湖音波のように豪快に笑っている印象があります(笑)。現場でもオンとオフの切り替えがはっきりしていて、だからこそエネルギーを保てるのかなと感じます。
――ここまでの放送を振り返って、特に印象に残っているシーンや魅力に感じている部分はありますか?
向井:それこそ、湖音波と吉田鋼太郎さん演じる潮五郎の親子関係の描写は素敵だなと思います。怒鳴り合っているけど、あれは信頼関係がないと成立しない。潮五郎も、かなり面倒くさい人物ではありますが(笑)、人情味があって、ああいう存在が1人いるだけで空気が和らぐんです。オペのシーンはどうしても緊迫感がありますが、それとは別で、この作品はスタッフルームの空気が少しずつ変わっていく過程も描かれているのが面白い。湖音波が来たことで、最初は対立していた関係が、まるで氷が溶けていくみたいに少しずつ柔らいでいく。人間関係のグラデーションがちゃんと積み上がっているのは、この作品の大きな魅力だと思います。
――今回の現場で特にコミュニケーションを取っている共演者はどなたですか?
向井:共演シーンが多い分、橋本さんと話すことは自然と多いですね。あと、さっきの撮影でもそうでしたが、橋本さんと宮世琉弥くん、馬場徹くんがずっと筋トレの話をしていて。僕はあまりやらないので入れないんですけど(笑)。結構本格的な話で盛り上がっているんです。あの3人は筋トレ仲間みたいな感じですね。僕は横で聞いてるだけです。
――宮世さんが「現場で1番ギャップがある方」として向井さんの名前を挙げていました。『パリピ孔明』(フジテレビ系)でも共演されていましたが、今作で再会してみてどうですか?
向井:宮世くんは何も変わってないです(笑)。ただ、『パリピ孔明』のときよりは今回のほうが喋っているかもしれないですね。あの現場は共演者もそこまで多くなかったですし、橋本さんみたいに同世代で盛り上がる雰囲気ではなかったんです。だから今回の現場で、宮世くんがリラックスして話している姿を見て、「ああ、こういう人なんだな」と思いました。というか、宮世くんこそギャップありますよ。インタビューで話していることと、普段やっていることが全然違いますからね(笑)。
――現在は『マトリと狂犬』(MBS/TBS)にも出演中で、7月からは舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』も控えています。多忙な中でのリフレッシュ方法があれば教えてください。
向井:うーん……。僕は本当に趣味がなくて。特別なことはしていないのですが、ドライブは好きですね。車を運転している時間が気分転換になります。天気のいい日は、1時間弱くらいの距離をふらっと走ったりします。遠出というほどでもないんですが、それくらいがちょうどいいリセットになっています。
――宮世さんもドライブに誘ってみるのはどうですか?
向井:あ、大丈夫です。1人でいる時間が好きなので(笑)。(文=佐藤アーシャマリア)
