【清水芽々】トランスジェンダーの子を持つ母親が「義理の両親」から告げられた「信じがたい暴言」

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2023年に施行された「性的少数者(LGBTQ)への理解増進法」をきっかけに広がった「トランスジェンダー」への認知。多様性の時代となり、トランスジェンダーへの理解は深まっているが、実際に我が子がトランスジェンダーだった場合に親はどのように向き合っているのだろうか。女性が抱える問題や家族間のトラブル、子育てなどをテーマに取材を続けるライターの清水芽々氏が、トランスジェンダーの子を持つ母親たちに取材した。

前編記事『「トランスジェンダーの子を持つ母親」が明かした「葛藤」と「理解」…「性転換した息子は『お母さんごめんなさい』と泣いていました」』から続く。

子育てに非協力的だった義両親と夫

「性自認が男性」という娘を持つ母親にも取材した。応じてくれたのは千葉県在住の松田里香さん(仮名・46歳)。里香さんは18歳の時に11歳年上の夫と授かり婚をしている。

「夫の実家は代々の地主で裕福でした。経済的に恵まれていたこともありがたかったですが、何より義両親が初孫の誕生を心待ちにしてくれていたのが嬉しかったです」

だが、お腹の子どもが女児だと判明した途端、義両親の態度が急変する。

「『跡取りの男の子が欲しかったのに……』とあからさまにガッカリされました。まだ生まれてもいないうちから『次は絶対男の子を産んでよ』とも言われました」

そんな義両親は孫娘に関心がなく、抱っこはおろか、ろくに話しかけることもなかったそうだ。さらに里香さんの夫も子育てには非協力的だったという。

「夫は娘の顔を見るたびに『がっかりさせやがって』とこぼしていましたし、育児を手伝うこともなかったです。私が『もっと父親の自覚を持って』みたいに文句をつけると『生意気言うな!』と手を上げるんです。後で知ったことですが、夫の仲間の間では『男の精力が弱いと女が生まれる』というありえない風説みたいなものがあって、夫はバカにされていると感じていたようです」

「次こそは男の子を……」

そんな焦りからか夫は積極的に性交渉を求めてくるが、家庭内でストレスにさらされているうえ、育児疲れもあって里香さんは思うように応じられない。

「苛立った夫は『だったら他の女に産んでもらうからいいよ』などと言いながら浮気を繰り返し、給料のほとんどをお酒や遊びに使っていました。義両親に訴えても『男の子を産まなかったアンタが悪い』『可哀想なのは息子のほうだ』と言うばかりでした」

義両親からの「ありえない暴言」

義実家で同居していたため生活に困ることはなかったそうだが、おむつやミルク、月齢による衣類の買い替えなど、出費はかさんだ。

「義両親に援助を頼めばお金は貰えたんですが『無駄金だ』とか『男孫だったらお金の使い甲斐があったのに』と嫌味がひどかった」

そして、二人目を授からないまま4年が過ぎた。里香さん夫婦は不妊治療に踏み切るが妊娠には至らない。

「この頃になると義両親も夫も私のことを『役立たず』呼ばわりするようになったし、腹いせのように娘に辛く当たったりもしていました」

祖父母や父親から可愛がられた記憶がなく、母親がぞんざいに扱われる様子を見ながら成長した娘は、小学校の高学年になった頃から二言目には「女って損だよね」と口にするようになる。

「『男になりたい』と言って、この頃からずっと髪はショートカットです。初潮を迎えた時も戸惑うというより苛立った感じでした。初めて買い与えたブラジャーも『こんなもの要らない!』とハサミで切り裂きました」

男性のように振舞う娘に父親と義両親は嫌悪感を隠さなかった。

「義両親は孫娘に婿養子をとろうと考えたみたいで、『あんな男みたいなナリをしていたら、まともな縁談が来るわけない』と嘆いていました。どこまで身勝手なんだろうと腹が立ちました」

高校を卒業した娘は「こんな家にいたくない」と遠方の建設会社に就職して家を出たのだが、

「てっきりデスクワークをしていると思ったら、娘は現場作業員になっていました。定期的に娘の様子を見に行っていたのですが、会うたびにたくましくなっていく様子でした」

それでも離婚しない理由

ただ一方で、娘は職場の同僚からのセクハラにも悩んでいたという。

「このセクハラが決定打になって、女性として生きて行くことを放棄したようでした。『親にもらった身体にメスは入れたくない』と言って性転換手術は受けていませんが、ホルモン治療は続けているみたいです。同僚たちはそんな娘を尊重してくれ、男性として扱ってくれるようになり、今ではセクハラもなくなったそうです。娘は『やっと働きやすくなった』と言っていました」

地元の成人式に袴姿で出席した娘は、最初こそ同級生やその家族、また恩師たちから奇異な目で見られたものの、式典後の同窓会では周囲と打ち解けることができ、男性だけで行われた二次会にも参加したそうだ。

「その日娘は上機嫌で帰宅したのですが、夫や義両親は『お前とは縁を切る』と娘に勘当を言い渡しました。娘も『望むところだよ』と言い返し、それ以来帰省していません」

現在は女性のパートナーと同棲している娘は、「お前の育て方が悪い」「家の恥だ」と実家で責め立てられている母親を不憫に思い、「実家を出て一緒に暮らそう」と言ってくれているという。

「その気持ちはありがたいし、今の針のむしろのような生活から逃げ出したい気持ちはあります。でも、私には男の子を産めなかった負い目みたいなものもありますし、80代の義両親の介護などを考えたら、なかなか踏み切れないんです」

筆者からすれば「そこまでして家に縛られることもないのでは?」と釈然としなかったが、「本音を言えば、義両親、夫を見送れば娘に財産を残せるじゃないですか? そのためにも私はここで踏ん張るしかないと思ってるんです」という里香さんの言葉に納得させられた。

性同一障害の子を持つ親が「育て方が悪かった」と自分を責める必要はないし、何より当事者である子どもたちが、親が苦しむことを望んでいない。筆者が取材したトランス女性の母親の中には「男の子と女の子、両方育てることができたようで幸せだった」と喜んでいた人もいた。大切なことは「親子がどう向き合うか」に尽きるのではないだろうか。

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