「もしかして認知症?」と思ってから医者に行くまでの〈空白〉が運命を決める。認知症専門医「認知症グレーゾーンから正常にUターンできる割合は…」
先週買ったばかりなのにまた同じものを買ってしまった、突然暗証番号が思い出せなくなった……もしかしたら、認知症の一歩手前である「認知症グレーゾーン」のサインかもしれません。今回は、認知症専門医・朝田隆先生が「認知症グレーゾーン」の歩き方を綴った著書『認知症グレーゾーンは分かれ道』より一部引用、再編集してお届けします。
【書影】「もの忘れ」の壁にぶちあたったら読む本。朝田隆『認知症グレーゾーンは分かれ道』
* * * * * * *
グレーゾーンの4年間があなたの運命を決める
「もしかしたら認知症かも」と思った人が医者のもとへ行くまでの期間は平均4年といわれています。
早期対応が認知症グレーゾーンからUターンするための要だということを鑑みれば、空白の4年間が運命の明暗を分けるといえるでしょう。余程の状態になってからでは手遅れかもしれません。いや、おそらく手遅れです。
認知症になってしまう人は4年で約50パーセントです。これに対して認知症グレーゾーンから正常にUターンする人は14〜44パーセント(平均26パーセント)といわれます。
個人差があるとはいえ、比較的高いということがこれまでの研究結果からわかっていました。多くの人が認知症にならずに引き返せるのです。
「とても受け入れられません」
面接を中心に各種テスト、脳の萎縮度合いや脳卒中などをみるために行うCTやMRI、脳の血流をみるために行うSPECTなど、脳内を画像化する検査をすれば認知症の進行具合がわかります。
認知症であることが判明した場合には本人に告知するのですが、患者さんの多くは「とても受け入れられません」と否認され、泣き出す方もおられます。
それも当然です。自分が自分でなくなってしまうことの恐怖、これからどうなるのだろうという不安、もう元には戻れないのだという絶望などなど、思いは数えきれません。
打ちひしがれている患者さんに「大丈夫、治りますから一緒に頑張りましょう」と言えたらどんなによいかと私はいつも思うのです。
認知症の専門医として
認知症になってしまったら元に戻ることはできません。
現状における認知症の治療目的は完治ではなく、投薬によって進行を遅らせる、あるいは症状を緩和することに限られています。

(写真提供:Photo AC)
認知症になってしまってから「もっと早く認知症外来を訪れていたら」「最初に自分の異変に気づいた4年前に医者に行っていれば」などと嘆いてもあとの祭り。
認知症の専門医として、これほど悔しいことはありません。
4人に1人はUターンできる
たとえば人の名前や映画のタイトルを思い出せない、待ち合わせの時間を勘違いするなどのポカが目立つ、何もかもがめんどうになる、といった自分の異変に気づいたら、そして初期段階で適切な対応がなされれば、進行を遅らせることができるのです。
そればかりか、4人に1人はUターンして元の状態に戻れると世界的にいわれているのです。実際、私自身も認知症グレーゾーンから脱却して知能正常な状態を取り戻した症例を目の当たりにしてきました。
もう一度あなたにお伝えします。認知症グレーゾーンなら認知症へ移行することを防げる。つまりUターンできるかもしれないのです。
※本稿は、『認知症グレーゾーンは分かれ道』(興陽館)の一部を再編集したものです。

