中高で6年間勉強したのに英語が苦手な人は、どのように克服したらいいのか。『英語ピクト図鑑』の著者マークさんと『東大読書』の著者・西岡壱誠さんは、どちらも学生時代に英語が不得意だったと言う。二人のベストセラー著者は、どのようにして苦手な英語を克服したのか。東大入試にも有効な英語の勉強法の極意を語り合った。

■“英語難民”のための英語克服法とは

多くの日本人は中学、高校で6年間、英語の勉強をしているのに、なぜ英語に苦手意識を持っているのか。

発売5カ月で15万部のベストセラーとなった『見るだけでわかる‼ 英語ピクト図鑑』(プレジデント社刊)の著者で、現在は海外に暮らしながら英語コーチとして活躍するマーク(村木幸司)さん。そして、漫画『ドラゴン桜2』の編集を担当し、『「考える技術」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』(東洋経済新報社刊)など、累計45万部の「東大」シリーズを著した西岡壱誠さん。

まったく異なる経歴の二人には、ある“共通点”があります。それは、英語が大の苦手だったこと。そして、苦手だった「英語」を独自の勉強法で克服したこと。

“英語難民”だった2人は、どうやって英語を克服したのか――。東大に入るためにも有効だという英語勉強法を紹介します。

■東大入試で最後まで足を引っ張った英語

【マーク】私はいまでこそTOEICを中心とした英語コーチをしていますが、社会人になって30代で英語の学び直しを始めた当初もTOEICの点数は990満点中280点。そこから中学英語の基礎を学び直したことで、940点を獲得するまでになりました。

西岡さんは、独自の勉強法で東大に合格し、現在はご自身の経験をもとにした勉強法や思考法を高校生に教えていらっしゃいますが、じつはもともと英語があまり得意ではなかったそうですね。それを知って、「自分と同じだ」と勝手に親近感を持っていました(笑)。

【西岡】僕は偏差値35から二浪して東大に逆転合格した人間です。高校3年生時点の英語の模試は100点満点中3点でした。その3点も適当にマークしたところがたまたま当たっただけで。まったく勉強法がわからず、どうやったら点を取れるかさえわからないという有様で、東大受験で最後の最後まで足を引っ張ったのが英語だったというくらいひどかったです。英語は中学校の頃からずっと不得意科目でした。

【マーク】東大入試では英語以外の教科で得点を取るという戦略だったのですか?

写真=iStock.com/chachamal
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/chachamal

■東大の文系は英語が苦手な人には厳しい

【西岡】そうですね。ただ、戦略としてはそうだったのですが、文系に限ると東大は、基本的に英語が苦手な人は絶対に合格できない大学なんです。文系の場合、英語で点が取れないと、数学や国語でほぼ満点が取れる人以外は受からないので、とにかく英語を何とかするしかありません。

マークさんは、学生時代はどうだったのでしょうか?

【マーク】私はじつは、最初は英語が意外と好きだったんです。中学1年生になって、新しい科目を学ぶということで、ワクワクして学び始めました。そこまではよかったのですが、2年生になるとだんだんわからなくなってきました。

「時制」や「be動詞」などが次から次に出てきて、きちんと理解ができずに徐々についていけなくなってしまったんです。そこからはもう、完全に苦手意識を持つようになって、勉強しようとも思わなくなってしまいました。だから学生時代の英語のテストは、いつも平均点かそれ以下でした。

【西岡】僕もそうでした。「be動詞が〜」とか先生に言われても、さっぱりわからない。英語はずっと赤点で、偏差値も低いまま。ただし、僕の場合は英語に限らずすべての科目が似たような感じだったのですが(笑)

■英語の成績が上がらなかった陥りがちな間違い

【マーク】そんな西岡さんが、苦手だった英語をどのように克服して東大に合格したのか、とても気になります。

【西岡】そもそも、なぜ僕の英語の成績が上がらなかったのかを考えると、杓子定規に物事をとらえすぎていたのが大きかったと思うんです。最近、生徒の前で話したり、高校生に英語を教えたりする機会があるのですが、そのときによく「単語帳に載っている意味じゃないから間違っていると考えるのはやめよう」と伝えています。

例えば、「structure」という英単語は「建築物」「建物の構造」といった意味をイメージしがちです。しかし実際は、「話の構造が入り組んでいる」というようなときにも使われます。

つまり本来、語彙はもっと広いイメージで、日本語と英語の意味が1対1で対応しているわけではないんですよね。その単語が持つ意味の“幅”のようなものをしっかり理解していないと、英語と日本語を1対1で翻訳する作業になってしまう。

それでは、英語力はどこまで行っても伸びないんです。かつての僕がまさに、その典型でした。

■英単語を一つの和訳で覚えていたら英語力は伸びない

【マーク】私も中学生の頃には、英語と日本語(和訳)が対になっていて、1つの単語に1つの意味があると認識していました。ところが、単語帳の表に英語、裏に和訳を書いて覚えていくと、あるとき突然違う意味でその単語が出てきて混乱したことがあったんです。

例えば、私が混乱したのは「leave」という単語です。「その場を離れる」という意味ですが、じつは「何かを置き去りにする」という意味もあります。離れていくのと、置いていくという2つの意味がどうして1つの単語にあるのか、まったく理解できなかったんです。

大人になってから、leaveのコアイメージの画像を見つけて、「何かを置いて、その場を離れる」という意味なのだと知って、ようやく腹落ちしたんです。

先ほど西岡さんが言われた通り、1つの英単語を1つの和訳で覚えて英語力を伸ばすのには限界があります。でも、イメージに結びつけて英語を理解すると、会話するときにもいちいち日本語に変換する必要がなく、英語を英語のまま理解して話すことができます。

私がようやくそのことを理解したのは、30代になってからでした。

■「ピクトで覚える」というのがしっくりきた

【西岡】英語を英語のままで理解するのは大事ですよね。英語を日本語に直して、日本語で理解をし直すという作業があると、どうしてもタイムラグができますし、本質的に理解するのも難しい。だからこそ、英語はイメージで覚えるのがいいと思います。

僕がマークさんの著書『英語ピクト図鑑』を読んで「これは役に立つ!」と思ったのは、まさにそれが理由です。情報量の少ないピクトというのが、とてもしっくりきたんですよ。「そうそう、ピクトだと覚えやすいよね」と。

「structureは骨組みが積み重なっているイメージ」のように、ピクトを見て視覚的に理解することで語彙が広がっていく。やはりピクトのようなイメージと結びつけられると、英単語の意味をより正確に理解しやすいですよね。

【マーク】私がX(旧ツイッター)でピクトを使った投稿を始めたのも、そう思ったのがきっかけでした。『英語ピクト図鑑』ではコアイメージと表現していますが、具体的な和訳ではなくその単語が持つ核となるイメージを理解すると、そのイメージから意味を推測・連想しやすくなるというのはありますね。

【西岡】そうですよね。『東大思考』(東洋経済新報社)で僕は、「本質」といった言い方をしていますが、接頭辞・接尾辞も含めて英単語には意味の“源泉”になるものは存在すると思います。

写真=iStock.com/kf4851
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kf4851

■東大に合格するたの勉強法としても有効

【マーク】『東大思考』を私も読ませていただきました。特に印象深かったのが「uni」の話です。uniには「1つ」というコアとなるイメージがあって、「ユニフォーム(uniform)」や「ユニーク(unique)」にも、その意味が含まれている。このように関連づけられれば効率的に語彙を増やせるんですよね。

私も30代になってからの学び直しで、語源を探るということをよくやっていました。調べていくと、「この単語はラテン語から来ている」ということなどもわかってきます。意識的にやっていたわけではないですが、私も英単語を一つひとつ丸暗記するのではなく、そういうふうに語彙量を増やしてきました。

【西岡】東大の入試でも、その本質を理解できていないと解けない問題が頻繁に出題されています。

例えば2014年の入試で、「文中の『order』という単語の意味を考え、それと同じ使われ方をしているorderを次の5つの英文から選べ」という問題が出題されました。orderには「命令」「順番」のほかに、「整頓」という意味もあります。orderの根本にはどのような意味があるのかを知らないと解けない問題です。

先ほどマークさんがおっしゃっていたことは、まさに東大入試に求められる能力でもあるんです。『英語ピクト図鑑』を読んでピクトのイメージと結びつけて覚えていくのは、東大に入るための勉強法としても、とても有効だと思います。

■東大英語は「英語力」だけでは太刀打ちできない

【マーク】東大に合格する人には、どのような共通点があるのでしょうか。何か特徴的な勉強法というのはありますか?

【西岡】一つ言えるのは、東大英語は「英語力だけでは勝てない」ということです。よく言われる話ですが、帰国子女だからといって、東大入試の英語の問題が解けるわけではありません。なぜかというと、英語力だけではなく日本語力も必須だからです。

例えば2013年の東大入試で、次の英文を限られた文字数で要約せよ、という問題が出ました。

この中に登場する「durable」という単語は「丈夫である」とか「耐久性がある」という意味ですが、そのように訳すと文字数が増えてしまいます。でも、「強靭」と訳せばたった2文字に収まるわけです。

つまり日本語と英語の語彙のネットワークがしっかりと頭の中にインストールされているかが問われているんです。

【マーク】確かに、それは帰国子女やネイティブの人であっても、なかなか答えられませんね。

マーク(村木幸司)『見るだけでわかる‼ 英語ピクト図鑑』(プレジデント社)

【西岡】おもしろいのが、東大英語には、「漢字を英語に直す」という勉強法があるんです。僕は英語が苦手だったので、東大を受けるにあたってどのような対策をしたらいいかを東大に合格した友人に聞いたところ、漢字の参考書に書かれた漢字の下に英訳を書くという勉強法を勧められました。「難しい2文字の漢字を、英語では何になるのか」という勉強法です。

やってみると、どんな難しい漢字でも、ほとんどは簡単な英単語で言い表せるんです。例えば「容貌」という漢字だったらどうでしょうか。さぞかし難しい英単語なのかと思うかもしれませんが、答えは「looks」です。「厳格」なら「strict」という形容詞一語で表現できますよね。

僕は、日本語力と英語力は「竹馬」のような関係だと思っているんです。どちらか一方だけを前に伸ばすのではなく、両方を交互に動かして前進していかないと、英語の成績は伸びていかない。言語的なセンスや能力は、このようにして高まっていくのだと考えています。

実際、東大英語で高得点を取れている人は、英語だけではなく日本語の語彙力がとてもすぐれていると感じています。

■東大生たちが受験勉強で使っていた定番の参考書

【マーク】ちなみに、東大生たちが受験勉強で使っていた定番の参考書などはあるのでしょうか?

西岡壱誠『マンガでわかる東大勉強法 増補版』(幻冬舎)

【西岡】英単語でいうと、『東大英単語熟語 鉄壁』(KADOKAWA)という本があります。「なぜこの単語がこの意味なのか」というのがイラストとともに学べる参考書で、あと20年はこれ以上のものは出ないだろうというほどの良書です。

英文法の定番は『一億人の英文法』(ナガセ)。これも、「なぜこういう文の組み立てになるのか」というのがとても明確に書いてあって、東大生の定番となっている参考書です。

【マーク】「漢字を英語に直す」というのはとてもおもしろいですね。特に日本語と英語は歴史的背景も文化もまったく違う国で培われてきた言葉なので、共通性や関連性が少ないと思われがちですが、どちらも意思を伝達する「ことば」であることには変わりないんですよね。

双方の語彙量を増やすことによってニュアンスの理解を深めることができたり、シンプルに言い換えることができると思います。

海外に住んでいると現地の人に「日本語を教えてほしい!」と頼まれたりもするんです。そういうときに英語と日本語の関連性や、日本語の知識も持ち合わせていると教えやすいですし、雑談も弾んだりします。そういった面も言語学習のおもしろさだと思いますし、英語でも日本語でも「ことば」に興味を持つことで習得効率も高まると考えています。

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西岡 壱誠(にしおか・いっせい)
カルペ・ディエム代表
1996年生まれ。偏差値35から東大を目指すものの、2年連続で不合格に。二浪中に開発した独自の勉強術を駆使して東大合格を果たす。2020年に株式会社カルペ・ディエムを設立。全国の高校で高校生に思考法・勉強法を教え、教師に指導法のコンサルティングを行っている。日曜劇場「ドラゴン桜」の監修や漫画「ドラゴン桜2」の編集も担当。著書はシリーズ45万部となる『東大読書』『東大作文』『東大思考』『東大算数』(いずれも東洋経済新報社)ほか多数。
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マーク(村木幸司)(むらき・こうじ)
英語コーチング協会認定コーチ
大手自動車メーカー勤務時代に、英会話教室でネイティブ講師に英語を習うも、ろくに会話もできず、TOEICは毎回300点台。しかし、英語の基本文法を学び直したところ英語学習に目覚める。TOEICのスコアも劇的に伸び、その英語力を活かして海外出張や海外駐在を経験。現在は脱サラして、英語コーチング協会認定コーチとして、基本英文法やTOEIC対策をオンラインで教えている。X(旧Twitter)でのピクトグラムを使った英語解説が話題になり、フォロワーは6万人以上。
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(カルペ・ディエム代表 西岡 壱誠、英語コーチング協会認定コーチ マーク(村木幸司) 構成=岩佐陸生)