犬が「ほんまにイヤやった」と耐えたある日。ありがたいけれど犬にとってはありがたくないこと
ペットの柴犬の写真をX(旧Twitter)に投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている@inu_10kg。ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。第81回は「二大“犬”イベント」について。

二大“犬”イベントがあった4月
4月には毎年恒例の二大イベントがある。いや、二大犬イベントがある。ひとつは、狂犬病の予防接種。町内の地区ごとを動物病院の先生と役場の職員さんが巡回してくれる。ありがたいけれど犬にとってはありがたくない。

母と犬と歩いてその場所へ向かったが、犬はただの散歩だとリラックスしていたのに、事態に気づいた途端に警戒心は急上昇。キバむき出し、目がバキバキ。鍋に火をかけすぎてフタがガタガタ言ってる状態。私まで目バキバキや。
私が首輪を両手でがっと握って、身体の動きを封じるので、先生にうしろからスッと打ってもらうことに。犬にむかって「スッやで! 大丈夫や!」と声を掛けるが火力はどんどん強くなって、吹きこぼしが止まらん。
私も必死なので記憶もおぼろげだが、先生が一度犬に近寄ったのに身を引いたような。でも次の瞬間には先生が犬の背後から注射をすませて「はい終わりましたー!」と終了のチャイムを鳴らしてくれた。
興奮冷めやらぬ犬を先生と職員さんから引き離して、みなさんに感謝を伝えてその場をあとにする。猛スピードで走る犬に引きずられながら。後ろを振り返らず、立ち止まらず走る走る。

「ほんまにイヤやった!」と全身で叫んでいた。家に帰ると犬はまず水をガブガブ飲み、それからフンッ! とそっぽを向いた。「ほんまにイヤやったんやで」と喋(しゃべ)れないけど言っていた。ごめんよ、耐えてくれてありがとう。おやつで労わらせてもらいます。
そしてもうひとつの犬イベントは、犬と桜の写真を撮ること。ほぼ毎日、犬と散歩をしながら花見をした。桜の時期に関わらず犬の写真はいつも撮っているので日常でもあるが、桜が咲いているだけで不思議と特別感がある。

4月4日、母がみかん畑に行くので犬とついていった。畑のすみっこには、父が植えた一本の桜の木が咲いていた。畑の柵内でリードを離したら、犬は自由に遊び始める。走る、草を嗅(か)ぐ、こっちに来たり離れたり、休んだり、母のそばに行ったり。

犬みたいに身軽に俊敏に、風をきって走るという経験が一度もない人生なので、何度見てもまぶしく輝いて映る。

「洗濯物取り込まな」と言いながら16時頃に母と犬と帰宅する。ンン? もう洗濯物が取り込まれている。
犬と帰宅すると…

家に入ったら「おかえり」と妹が洗濯物をたたんでいた。中国から3日間だけ帰ってきたらしい。なんだか犬はクールに(だけどしっぽをゆらして)妹に近づけば「ン。そっちこそおかえり」とスンスンにおいを嗅いでいた。

そのまま、母と妹と犬とで車に乗って、隣町の桜並木のある公園に行った。「桜きれいやなぁ」と桜を見上げながら散歩をし、犬はしっかりうんちしたよ。
帰り際に「写真撮ろ」と照れくさかったけれど言った。そしたら撮ろ撮ろーと言ってくれて、桜並木の前に母と妹と犬がならんだ。ファインダーをのぞくと夕焼けに染まった母と妹と犬、みんないい顔してた。

その夜、さっそく印刷した写真を見ながら「お母さんも妹も犬も、なんかおんなじ顔してるなぁ」って言うと、そしたら母に「言うとくけど、あんたも撮りながらおんなじ顔してたからよ」と言われて、びっくりして、思わず笑った。

今朝、ひとりで犬との散歩コースを歩いていた。この道を歩くとき犬はよく白線の上だけを歩いている。
ふと足元を見たら私も白線の上だけを歩いているのに気づいて「ええ!?」と声を上げた。犬がいつもやってるクセが知らん間にうつっていた。いつの間にか、自分らも気づかんうちに似てしまうんやろな。おんなじクセ、おんなじ顔、おんなじにおい。
