【新ラーメン実食】「澄みそば」は身体中の細胞が悦ぶ“癒し系”の味わい!! その日にしか出逢えない「一期一会」の1杯とは?『Dad’s Ramen 夢にでてきた中華そば』
日本中で年間700杯以上ラーメンを食べ歩き、様々なメディアで情報を発信している田中一明氏による「ノールール」不定期連載が『ラーメン官僚かずあっきぃの「感動の一杯」』。第2回の舞台は、 東京都目黒区『Dad’s Ramen夢にでてきた中華そば』。この特徴的な店名のラーメンと新メニューに迫る!!
地道に開発を続けてきた 『夢にでてきた中華そば』 の『澄みそば』が完成

『Dad’s Ramen夢にでてきた中華そば』
先日よりスタートした、ラーメン店の紹介企画。記念すべき第1回目は、東京都板橋区の新店『中華そばの店みのひ』を採り上げた。
2025年1月、『みのひ』のコラムが無事にアップされ、「さて、2回目はどのお店を紹介しようか」と、あれこれ思い悩んでいた矢先、絶妙なタイミングで、東京都目黒区の実力店『Dad’sRamen夢にでてきた中華そば』の店主・吉田氏から、「足掛け2年以上の歳月をかけて地道に開発を続けてきた『澄みそば』がついに完成したので、是非、食べに来てもらいたい」というお声掛けをいただいた。※編)こちらの原稿は2025年2月11日に執筆していただきました
これは、同店を紹介する絶好のチャンスだ! そう直感し、連絡を受けた数日後に、勇躍、同店へと訪問。新商品である「澄みそば」をはじめ、看板メニューの「夢にでてきた中華そば」、人気メニューの「しおにぼしOilそば」、「つけ」を実食させていただいた。また、幸運にも、店主から、開業当初からのラーメンの味の変化や、手掛けるラーメンのこだわりについてお話を伺う機会に恵まれた。
と、このような経緯もあり、第2回目となる今回は、『Dad’sRamen夢にでてきた中華そば』を採り上げることとする。第1回目の『みのひ』は、開業して間もない新店、『夢にでてきた中華そば』は、開業から数年が経過した中堅実力店。紹介店舗の選び方として「法則性も何もあったものじゃない」という感じだが、これもまた、この企画ならではの妙味として受け止めていただければ幸いである。
煮干しラーメン専門店『夢にでてきた中華そば』は『NiboNiboCino』のセカンドブランド

『夢にでてきた中華そば』の券売機
さて、今回ご紹介する『夢にでてきた中華そば』は、2022年7月4日、東急電鉄・自由が丘駅から5分程度歩いた住宅街にオープンした、煮干しラーメン専門店。
2020年6月、東京都品川区(旗の台)に開業した『NiboNiboCino』のセカンドブランドで、他店舗にはないタイプの煮干しラーメンを提供することをコンセプトに掲げている。ちなみに、1号店(『NiboNiboCino』)は、ラーメンに見えない煮干しラーメンの提供を目指しており、提供する1杯のジャンルこそ同じ「煮干し」だが、両店の立ち位置は明確に異なる。
現在、『夢にでてきた中華そば』において恒常的に提供される麺メニューは、「夢にでてきた中華そば」、「だしにぼ」、「しおにぼしOilそば」、「つけ」、そして、今般新たにラインナップに加わった「澄みそば」の5種類。「夢にでてきた中華そば」、「だしにぼ」、「澄みそば」の3品は「汁そば」、「つけ」は「つけ麺」、「しおにぼしOilそば」は「汁なし」だ。
吉田店主が考案した「設計思想」に基づいて味が構築された5種の麺メニュー

「夢にでてきた中華そば」
5種の麺メニューは各々、タイプを全く異にするが、いずれも、吉田店主が考案した「設計思想」に基づいて味が構築されている点は、共通している。
例えば、「夢にでてきた中華そば」は、亡き父の誕生日に見た夢の中で、出てきた父のアドバイスを基に開発した1杯、「だしそば」は、カエシ(タレ)を全く使わず、煮干し等の素材の魅力を出汁のみで表現した1杯、といった具合に、吉田店主の「設計思想」が、各々の麺メニューに、具体化された形で明確に盛り込まれているのだ。
改めて申し上げるまでもないが、考案した「設計思想」を、思い描いた形のままに具現化するのは、決して容易なことではない。作り手の技量が高いことが前提となる。例えば、同店の「だしそば」のスープは、カエシを使わず、煮干し、羅臼昆布、鶏、牛、貝等の天然素材から採った出汁だけで、非の打ちどころのないほど濃密・豊潤、かつ独創性さえ兼ね備えた唯一無二の味わいを創り出せているが、この味を現出させるには、ラーメン職人の中でもトップレベルの技量が必要だ。
ちなみに同店では、看板商品である「夢にでてきた中華そば」のスープも、ほぼ、天然素材の等身大のうま味の足し算&掛け算によって構成され、カエシには「風味の調整役程度」の位置付けしか与えていない。「煮干し、昆布、貝など、地球上に存在する数多くの自然の恵みを、どのように取り扱えば、どのような風味を取り出すことができるか。毎日、そのことばかり考えています」と、店主は言うが、これは、決して誇張された発言ではないだろう。
仕入れた個々の素材について、当日のコンディションまで見極めた上で、その日の1杯を創り始めるため、1日たりともラーメンの味が同じにならない点も、同店の魅力のひとつだ。
「当店では毎日、その日に作り得るBESTを提供することを心掛けています。上質な鶏が入手できた時は動物系に寄せたコク深いスープを、極上の貝が入手できた時にはコハク酸のうま味成分が五臓六腑に沁みわたる滋味深いスープを作る。例えば、ある週の月曜の『だしそば』と、金曜の『だしそば』のテイストが異なることも、日常茶飯事です」。
その日にしか出逢えない「一期一会」の1杯が食べられる。同店が常連を量産する理由の一端は、この点にあるのだろう。
煮干しのうま味の粋を凝縮させた、重厚感に充ち満ちたスープ

新メニューの「澄みそば」
毎日味が変わるため、『Dad’sRamen夢にでてきた中華そば』のラーメンを語るに当たり、他店舗のように、「このラーメンは、こういう味」などと断定することはできない。その日に創られた1杯を、その都度、自らの舌で味わう。これが同店の流儀だ。
ただ、そうは言っても、メニューごとに、味の大枠程度のものは存在する。味の大枠
とは、吉田店主が各々のメニューに込めた「設計思想」の延長線上にあるものとでも考えていただければと思う。
「夢にでてきた中華そば」のスープは、コク深さを徹底的に追求したものだ。開業当初は今よりも軽めのテイストだったが、吟味を重ねた結果、現在では、煮干しのうま味の粋を凝縮させた、重厚感に充ち満ちたスープへと落ち着いた。本メニューには、「黒毛和牛ローストビーフ」、「岩中ポークの肉塊」など、大量の肉がトッピングとして搭載される。食べ進める内に、それらの肉のうま味が溶け出しスープと織り交ざるが、スープにコクを付与することで、動物系を受け止め支え切れる1杯に仕上がった。
「だしそば」のスープは、キレ味の鋭さを持ち味とする。煮干しの華やかな風味と鮮烈な塩味を前面へと押し出し、タレの代役としての機能を持たせたスープは、啜る度に、煮干しの大群が一斉に味蕾を強襲するかのごとき、強烈なインパクトを誇る。そのうま味は、タレ不使用とは思えないほどビビッドだ。
「澄みそば」のスープは、身体中の細胞が悦ぶ癒し系の味わいだ。スープを啜ればまず、穏やかな煮干しの風味が味蕾と鼻腔をしっとりと潤し、次いで、昆布の滋味が、煮干しの風味を引き延ばし、心地良い余韻へと転化させる役割を好演する。「柔らかな出汁感の演出に注力した1杯」と、店主が胸を張るだけのことはある、じんわり系ラーメンの極致だ。
と、つい語り過ぎてしまったが、3種類の汁そばだけでも、味の大枠に明確な違いがあり、しかも、上述したとおり、各々、日々刻々と食味が変化するのだ。
煮干しラーメンマニアにとっての必訪店

「しおにぼしOilそば」
これらのラーメンに用いる麺についても、ひと言言及しておきたい。麺は、すべてのレギュラー麺メニューに、店主の修業先である『自家製麺伊藤』から取り寄せた、中細ストレート(通称「伊藤麺」)を採用。
店主は、そんな「伊藤麺」をメニューによって茹で分け、各々のスープに最も馴染む状態で提供することにも、並々ならぬこだわりを見せる。
「『伊藤麺』は、茹で時間によって様々な表情を見せる、パフォーマンス力に優れた麺です。『夢にでてきた中華そば』や『だしにぼ』では、茹で時間を短くし、スープに負けない力強い食感を演出。他方、『澄みそば』では、茹で時間を『夢〜』や『だしにぼ』より数秒長くすることで、柔らかなスープと水魚のごとく交わるしなやかな食感を表現しています。最も長めに茹でるのは、『つけ』ですね。じっくりと茹で上げ、氷水で丹念に締めることで 日本蕎麦のような滑らかな口当たりを実現しました」。
加えて、「しおにぼしOilそば」には、「伊藤麺」に加え、アルデンテイタリア麺、極太手打ち麺などを併用する。
「『しおにぼしOilそば』は、ひとつの丼に3、4種類の麺を盛り付けます。すべての麺を最高の状態で味わっていただくため、麺ごとに茹で時間を変えるなど、特段の注意を払っています」。
吉田店主とは、日頃から仲良くさせていただいており、同氏のラーメンづくりに対する熱い心意気と真摯な姿勢は、よく理解しているつもりだったが、今般、改めて店主と向き合い、その心意気、姿勢が、変態的な領域にまで到達していることを、まざまざと実感させられた。
日本全国を探しても、今、吉田氏ほど、「煮干しラーメンにこだわり究めたい」という想いが強い作り手は、私が知る限り、存在しないのではないかと思う。煮干しラーメンマニアにとっての必訪店であることはもちろん、煮干しラーメンがあまり得意でない方も、同店の1杯を召し上がっていただければ、苦手意識を払拭できるかもしれない。煮干しラーメン界の未来をけん引する、名店中の名店だ。
連載第2回『Dad’s Ramen 夢にでてきた中華そば』
■Dad’s Ramen 夢にでてきた中華そば
東横線・大井町線「自由が丘駅」南口より徒歩約6分
営業時間は月〜金 11時〜14時/※材料切れ早仕舞いあり
【定休日 土・日・祝・不定休】
臨時の営業日・休業日早仕舞い等は店舗のX(旧Twitter)参照
文・写真/田中一明:通称「ラーメン官僚かずあっきぃ」として数多くのメディアでラーメン情報を発信。日本全国のラーメン店に精通し、主な名店はほぼ実食済み。食べ歩きのペースは常に年間700杯以上で、これまでに食ぺたラーメンは2万500杯に及ぶ。TRYラーメン大賞の審査員も務めている。
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『第25回 業界最高権威 TRYラーメン大賞2024-2025』
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【発売日】2024年10月23日(水)
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【発行元】株式会社講談社ビーシー/株式会社講談社
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