65歳”後継者”の挑戦 地域の伝統「温海こけし」を守る…工人のワザとこだわり、悩みと笑顔に密着(山形)
続いては特集です。
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きょうは鶴岡市の伝統工芸「温海こけし」の話題です。この温海こけし、間もなく米寿を迎える工人一人だけが作り続け、このままでは伝統が途絶えてしまうのではないかと危惧されていました。
こうした中、工人のおいが後継を名乗り出て修行に励んでいます。2人の思いを聞きました。
鶴岡市温海の国道7号沿いに立つ大きなこけしのモニュメント。温海温泉の名物・温海こけしをPRしています。
温海川沿いに温泉旅館が並ぶ風光明媚な温海温泉。
その温泉街に「阿部こけし店」が店を構えています。120年以上続く「温海こけし」を製作してきたのは、この店のみです。
■たったひとりの”工人(こうじん)”
阿部こけし店の3代目に当たる阿部進矢(あべ・しんや)さんは87歳。店から少し離れた工房で、今も作品を作り続けています。
伝統の釤くりっとしてちょっと離れた目釤が特徴の温海こけし。
それに阿部さんが創作した「帽子こけし」に「木地玩具」。
全国のこけしマニアの人気を集め、今も多くの注文が寄せられています。
元気な阿部さんですが、米寿が目前ということもあり、心配していたのが後継者問題です。3人の息子さんは継ぐ意思がなく、自分の代で途絶えると思っていたそうですが・・・。
■伝統をつなぐ”希望”
温海こけし工人 阿部進矢さん(87)「いや~まさか、やるとは思わなかったけどね。嬉しいよそれは。これで終わっちゃうわけでないから」
今年7月、阿部さんの姉の次男である津田隆(つだ・たかし)さん65歳が、定年退職を機に後継に名乗りを上げたのです。
温海こけし後継者 津田隆さん(65)「小さい頃から 夏とか(温海に)泊まりに来てみんなでわいわい遊んでいて、生活に普通に釤温海こけし釤があったわけですが、それが途絶えてしまうのはもったいないなと思って」
津田さんは高校まで鶴岡市内で育ち、その後、広告デザイン会社のコピーライターや営業などに携わり、支店長も務めてきました。
子どもの頃から美術や物作りが好きだった津田さん、自宅のある仙台と鶴岡を行き来しながら修行に励んでいます。
温海こけし後継者 津田隆さん(65)「1本の木から削り出して絵を描いてこけしという作品にするというのは、作り上げていくっていうのはすごく楽しいです」
■しかし、難しい!
津田さん、物作りが好きと言っても何もかもはじめての事ばかり。取材に訪れた日は本格的に修行を始めてから10日ほどしかたっていないこともあって、難しさを実感しているようでした。
温海こけし後継者 津田隆さん(65)「絵付けに関しては、顔を描くのはやっぱり緊張しますね。目(を描くの)が緊張するというか。あとは木地作るときは首が一番神経を使いますね。最後の仕上げの時に首が」
まだ創作を始めて間もない津田さんですが、叔父の阿部さんは、津田さんの作品にキラリと光るものを感じています。
温海こけし工人 阿部進矢さん(87)「まだ胴は本格的でないけれども、目は私の若い頃の目になってるからね。目だけはいつも褒めてるんだ」
Qこの目がいい?
「目はいいね。俺、大好きだ、この目は」
津田さんからこれまでに作ったこけしを見せてもらいました。
■伝統の「これから」
今は基本の胴に花を描く五本柄を練習しているそうですが、温海こけしの特徴でもあるクリっとした大きな目がきれいに描かれています。
顔の絵付けは静かになった夜に集中して描いているそうです。
津田さんは作品を年内か年明けには販売を始めたいとしています。今後、どんな新しい温海こけしを生み出していくのか楽しみです。
温海こけし工人 阿部進矢さん(87)「隆くんは隆くんなりに、俺の(後を継ぐ)4代目というより、自分なりに温海こけしをつないでいくってだけ、継続していくっていう気持ちで作ってもらえればいいと思う」
温海こけし後継者 津田隆さん(65)「温海こけしも叔父もみんなに好かれているので、それを引き継いで皆さんに好かれてかわいがってもらえるようなこけし、こけしがあるだけでほっとするような、そんなこけしを作れたらいいなと思います」

