≪単なる航空券の引き換えから独自の経済圏づくりへ≫日常生活に溶け込むJALの「マイルライフ構想」
電気代や住宅ローン、保険などで貯まる
「フルサービスキャリア(FSC)だけでは、次のパンデミックのような事態が起こると再び利益が出なくなってしまう。FSC以外でも常に安定した利益が出せるような事業をしっかり担保していきたい」ー。こう強調するのはJAL社長・グループCEOの鳥取三津子氏。
4月に始動した鳥取体制の下、同社は2025年度を最終年度とする「JALグループ中期経営計画」を策定。コロナ禍で航空機の利用がなくなり、収益が全く上がらないという"どん底"を経験したことを受け、同社は利益構造の再構築を図っている。その方策の1つが航空事業からの脱却であり、「マイル」だ。
マイルとは各航空会社が提供するポイントプログラムのこと。航空会社のマイレージプログラムに入会した上で、その航空会社の飛行機を利用したり、対象サービスを利用したりすると、フライトの距離や利用金額などの条件に応じてマイルが貯まる。
このマイルの在り方が大きく変わり始めている。「従来までのマイルを貯めれば特典航空券を入手できるだけでなく、日常生活を送る中でもマイルが貯まり、使えるようにしていく」。マイレージ事業部業務グループの松本誠也氏はこのように語る。
これまでマイルは飛行機に乗った距離に応じて貯まり、特典航空券との引き換えにしか使えなかった。ところが今は日用品の買い物をした場合をはじめ、毎月の電気代の支払いや通勤・通学、散歩などで歩いた歩数に応じてマイルが貯まったり、住宅ローンや医療保険などでもマイルが貯まるようになった。
一方、使う場合も日用品の買い物はもちろん、一般席よりグレードの高い座席で演劇を観覧したり、お酒などを嗜みながらスポーツを観戦できる特別な座席に引き換えることができたり、通常であれば百貨店でしか販売していない地域の名産品を手に入れることができたりする。
さらに松本氏はこのマイルを貯めたり、使いやすくなる環境整備も進めてきたと語る。これまでJALのマイルの会員になるためには、クレジットカードの「JALカード」に入会しなければならなかった。そのため、審査を経て年会費を支払う必要があった。しかし今は年会費無料で誰でもダウンロードが可能なスマートフォン決済サービス「JALペイ」を展開。「マイルと接するためのハードルを下げている」と松本氏は語る。
累計3800万人の会員数を誇るものの、そのメインとなっている年齢層は40~50代。若年層をいかに取り込むかが課題となっているが、アプリの展開によってスマホ決済ができるようになれば、その敷居は自ずと低くなる。「若いときに大きな買い物はできなくても、年齢を重ねたときにはマイル会員のステータスが上がり、ラウンジを無料に使えるようになったりする」(同)。そうすれば、継続的にJALの航空便に乗ってもらえるわけだ。
他のポイントとの差別化要素
大ポイント競争時代ー。いま国内では業種を問わず、様々な企業によるポイントサービスの顧客争奪戦が繰り広げられている。楽天グループによる「楽天ポイント」をはじめ、ソフトバンクグループ系の「PayPayポイント」、TSUTAYAの運営会社が展開してきた「Tポイント」と三井住友フィナンシャルグループのポイントが統合した「Vポイント」、NTTドコモの「dポイント」など、まさに群雄割拠の様相を呈している。
