“北信越の技巧派集団”帝京長岡が浦和ユースを下し、悲願のプレミアリーグ昇格を果たした。写真:松尾祐希

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 苦節8年。今年で4大会連続6度目の挑戦だった。試合終了のホイッスルが鳴ると、選手たちは喜びを爆発させた。

 スタッフ陣も歓喜の瞬間を噛み締める。谷口哲朗総監督はタッチラインを超えて感情をあらわにし、ベンチに戻ってから古沢徹監督や川上健コーチらと抱き合う。その姿からは、何度も阻まれてきた“プレーオフの壁”を超えるまでの苦悩も見て取れた。

 12月10日に行なわれたU-18高円宮杯プレミアリーグのDブロック・プレーオフ2回戦。帝京長岡は浦和レッズユースを2−1で下し、来季から初めてトップディビジョンで戦うことが決まった。

 振り返れば、帝京長岡とプレーオフの“付き合い”は思いのほか長くなった。2016年に初めて参入戦に臨んだが、初戦で浦和に0−4で完敗。翌年もトーナメントの一発目で北海道コンサドーレ札幌U-18に1−3で敗れて、またしても壁に阻まれた。

 2019年も同じステージで横浜ユースに1−4で敗北。MF谷内田哲平(京都)やFW晴山岬(エッダースハイム)といったタレントを擁しても勝てず、“プレーオフの呪い”がかかっているような気さえした。

 コロナ禍で20年はプレーオフが行なわれず、迎えた21年と22年は、一番昇格に近づいた年だった。プリンスリーグ北信越で優勝し、シード権を持って2回戦から登場。勝てば昇格を決められたが、21年は桐生一を相手に3−1とリードしながらも、残り20分を切ってからの3失点で逆転負け。昨年も尚志から先制点を奪いながら、1−2で敗れた。

 負の歴史――。そう言っても差し支えはないだろう。今年こそはという想いで臨み、ようやく壁を乗り越えた。試合後の囲み取材中で、谷口総監督が目頭を熱くさせたのも無理はなかった。
 
「プレッシャーになるので、“今年こそは”という言葉はなるべく言わないようにしていました。いつかは行けるだろう。その言葉を胸に刻んで戦ってきたんですけど、本当にスタッフがよくやってくれて、最後は選手が乗り切ってくれて...」

 こう続けた後に、谷口総監督は言葉に詰まり、少し目を潤ませながらスタッフや選手たちを労った。

 チームの想いが詰まっていた今回のプレーオフ。歴史を塗り替えるだけでなく、未来を紡ぐうえでも絶対に負けられない一戦だった。全カテゴリーがリーグ戦で昇格する可能性があったからだ。

 今季の結果を受け、Bチームはプリンスリーグ北信越1部、Cチームは同2部、Dチームは県リーグ1部に来季からチャレンジする権利を持っている。だが、Aチームがプリンス北信越1部からプレミアに昇格できなければ――。

 同じカテゴリーに同じチームが所属できないルールのため、全カテゴリーが玉突きで残留となり、他のチームに昇格の権利が移るレギュレーションになっているためだ。

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 仲間たちが1年間をかけて積み上げてきた結果を、無駄にするわけにはいかない。「全カテゴリー、全部のチーム、全学年が頑張って練習して、辛い想いをしても一生懸命、試合に挑む姿を見てきた」とはMF水川昌志(2年)の言葉。全部員の想いを背負って、この浦和戦を戦っていた。

 それは選手たちのプレーや振る舞いにも表われている。エースナンバーの14番を背負い、キャプテンを務めるFW堀颯汰(3年)は、怪我の影響で満身創痍だった。右足首痛で前日練習には参加できず。それでも、トレーナーのサポートを受けて先発すると、18分に先制点をゲット。44分には貴重な2点目を奪い、満足に身体が動かない状況でも仕事を果たした。

 右足首以外にも、この試合で左足首や背中を痛めたため、61分に自ら申し出て途中交代。力の限りを尽くしたのは、責任を背負っていたからだった。

 堀がピッチを去ってから1点を返され、残り20分は防戦一方の展開に。ボールを持てず、守ってもスライドが遅くなり、ゴール前でなんとか跳ね返すシーンが続いた。

 ここでMF水川昌志(2年)が、3バックで戦うことをスタッフに提案。古沢監督が動き、MF香西大河(3年)を最終ラインに送り込んで守り固める策を取った。割り切った戦い方で、どうしても欲しかった勝利を掴み取った。
 
 ようやく掴んだプレミア参入の権利。さらに来季は全チームが1つカテゴリーを上げ、よりレベルの高い戦いに挑む。「4チーム同時にシビアなゲームができる。選手たちが良い競争ができるようにしたい」。そう語った谷口総監督の想いは、すでに次に向かっている。

「プレミアリーグに出るだけでは生き残っていけません。自分自身が活躍しないといけないし、結果を残さないと、このステージで生き残っていけない。そういう環境を作れば、自ずと選手は伸びていく。難しいとは思うけど、1年目からチャンピオンを目ざしてやるつもりです」

 苦しい時も辛い時もあった。心が折れそうになったのは一度や二度ではない。そうした経験を経て、ようやく辿り着いた最高峰の舞台。新たな歴史の1ページを作った“北信越の技巧派集団”は、次の戦いに向けて走り出す。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)