40代夫婦が築45年の古民家を購入し、リノベーションした事例です。細かく仕切られた暗い屋内を、明るく開放的に。間仕切りを撤去して西側をワンルームのLDKにしました。家の中でいちばん日当たりがいい場所を占めるキッチンは、妻のお気に入りの場所。リビング一角には、写真家である夫の小さなスタジオがあります。

大きな空間が特徴的な「働く家」がテーマの住まい

Yさんの家 京都府 家族構成/夫40代 妻40代 長女6歳 設計/おかやま設計室

⇒【動画】築45年とは思えない開放感!キッチンもおしゃれ

築45年の民家でフォトスタジオを兼ねた開放的なLDKを実現したのは、夫婦と長女の3人で暮らすYさん一家です。「住まいとしてはもちろん、フォトスタジオとして使うために明るく開放的な家にしたくて」と、語るのは夫。

ネットで設計者の岡山さんとともにこの民家を見つけたときは、細かく仕切られた暗い屋内に「本当にここで大丈夫なのか?」と不安にも思ったそう。そんなYさん一家の不安は、間仕切りを撤去して西側をワンルームのLDKとし、さらに階段の方向を変更することで、開放感あるワークスペースをつくりだした岡山さんの設計で解消されました。

ちなみにこの家のリノベーションテーマは「働く家」。「フォトスタジオはもちろん、キッチンも写真背景として使いますし、ワークスペースは将来的に知り合いの作家に声をかけて、ギャラリーとして使ってもらおうと考えています」と妻。

上の写真は、ワークスペースからキッチンを見たところ。娘の絵が飾られている右手の壁は、将来はギャラリーとして貸し出すことも考えられています。「働く家」のコンセプトが生かされている部分です。

1階は浴室や洗面、トイレなどの水回りコアをリビングと玄関の間に配置して、それ以外をワンルームにしたのは、ギャラリーとして使える大きな空間が欲しかったから、と夫妻は声をそろえます。

 

西側の勝手口。スタジオへの来客はこちらから案内します。ブロック塀の白い塗装や植栽は夫婦ふたりのDIY。「ここに来て庭いじりの楽しみも覚えました」と夫。

 

キッチンの上にはオープンなつり棚が取りつけられています。

 

日常の調理で使うことはもちろん、キッチンもスタジオセットとして使われるので、セレクトされたものが品よくディスプレイされています。

LDKの天井や階段の柱回りは構造がそのまま表しになっていますが、これらはYさんが暮らすうちに変わっていきそうです。「手を加える余地が残っていることも、この家の魅力です」と笑う夫です。

リノベーションでこだわった7つのこと

スタジオを併設したYさんの住まいは間仕切りを減らした大空間が特徴的。それを実現させた工夫をご紹介。

 

1.スタジオを兼ねるリビング南側

床がフローリングからフレキシブルボードに切り替えられたスペースは、以前はキッチンがあったフォトスタジオ。左手にある水回りにつながる引き戸に取っ手などがないのは、撮影時に写り込ませない工夫なのだそう。

 

2.いちばん明るい場所に位置するキッチン

家の中で、もっとも日当たりがいい場所を占めるのがキッチンです。「家の隅じゃなくて、日当たりのいい中心にしてもらいました」と妻。来客がカウンターとして使えるよう、角部分の下が空洞になっています。

 

3.家事に効率的な回遊動線

玄関の前に洗面・浴室などの水回りを収めたコアを配置。中心の通路はLDKへの動線を確保しています。階段をくぐる日常の動線とともに行き止まりのない回遊動線を実現。家事効率もアップしたと妻にも好評です。

 

4.ワンルームを実現した軽量化と耐震補強

光をさえぎっていた既存の間仕切りを撤去して1階をワンルームにするために、瓦からガルバリウム鋼板に変更して建物上部を軽量化。

 

さらに、壁内に耐震補強を施しています。表しになった柱は新規に入れ替えています。

 

5.建主のアイデアで階段位置を逆に

壁や床を撤去したときに、夫のひらめきで階段を既存とは逆向きにすることに。「LDKへの動線の確保や、間仕切り壁を建てずにすんだこと、危険な急傾斜の階段など、問題解決の突破口になりました」と岡山さん。

 

6.ガラスの床で光を階下に落とす工夫

1階のフォトスタジオスペースにトップからの光を取り込むため、2階主寝室の床の一部にガラスを用いています。

 

2階の窓からの光がダイレクトに取り込めるうえ、シンボリックな空間のアクセントにもなっています。

 

7.家族+αが使うことを考えたワークスペース

玄関右手のワークスペースは、長女の勉強机であるとともに家族全員で使うスタディスペース。将来的にはギャラリーとして使う計画も。構造合板の広い壁面に大きな可能性が広がります。

 

間取り図(リノベーション前後)と外観

●間取り図

リノベーション前

リノベーション後

 

既存内装の解体が進み、スケルトン状態の建物を生かして開催された夫の写真展の様子。「階段の向きを逆にすることを思いついたのはこの頃でした」と夫。

 

リノベーション前は、日の当たる西側の和室とダイニングキッチンが壁で仕切られていたため、全体に暗く狭い印象です。

 

●外観

引き戸に変更した玄関扉が特徴的な外観。「知人の作家につくってもらった玄関扉がとても気に入っていて、毎日の出入りのたびに見とれてます」と妻。

 

「植物を植えて楽しめる庭があることがうれしい」と夫。来客の通り道となる庭だけに、植栽計画にも力が入ります。

リビングの隅にさりげなくあるフォトスタジオ

家族3人がいちばん長い時間を過ごすダイニングは居心地のいいコンパクトな空間。構造が表しになった天井には将来的に板を張る予定もあるのだとか。

 

日常ではリビングとして家族の憩いの場となるフォトスタジオ。壁に当てた間接照明が、夜にはより深いくつろぎへと誘います。

 

フォトスタジオの反対側にあるダイニング部分。天井が一段上がっていることに加え、南側のスタジオ部分とは床の材質が異なるため、こちら側を使って異なる雰囲気の撮影を行うこともあるのだそう。

 

妻が設計段階で細部の寸法までこだわったキッチン収納。そのかいあって、食器などがきれいに収まっています。

 

「家の隅ではなく、中心にキッチンを配置したのは、常に子どもの様子が見られるようにしたかったから」と妻。

 

2階の主寝室。階段の向きを変更したことに伴って、出入り口を新設し既存の入り口を書斎コーナーに変更しています。床は構造用合板を用いました。

 

森の豊かさを思わせる、杉の香りが印象的なフローリングに変更された子ども部屋。天井と壁は既存のままですが、モダンな雰囲気に。

 

この家のデータ&使われている素材と設備

敷地面積/90.38?(27.39坪)
延床面積/82.80?(25.09坪)
1階/48.86?(14.81坪)
2階/33.95?(10.29坪)
用途地域/第1種低層住居専用地域
建ぺい率/60%
容積率/100%
構造/木造軸組工法

素材
[外部仕上げ]
外壁/塗装仕上げ
屋根/ガルバリウム鋼板縦ハゼ葺き
[内部仕上げ]
1階 床/オーク突き板フローリング、一部フレキシブルボード 壁/塗装、一部構造用合板 天井/既存梁表し、一部塗装
2階 床/構造用合板、杉 壁/既存 天井/既存

設備
厨房機器/オリジナル
衛生機器/TOTO
窓・サッシ/既存、一部YKK AP

設計/岡山 森、岡山輝子(おかやま設計室)