清水では左SB、阪南大ではCB。高木践が与えられたポジションを心の底から楽しめるワケ「僕は学びたい気持ちが強い」
関西学生リーグ1部の第7節・びわこ成蹊スポーツ大戦で、高木は高校時代からずっと定位置となっているCBでスタメン出場。鋭い目つきでボールと人の動きを見ながら、巧みなポジショニングと身体の向きを作る。こまめにステップを踏み、相手の裏へのボール、クサビのボール、そしてハイボールに対応する。
このピンチに、高木は非常に冷静だった。工藤がドリブルを仕掛けてきたのに対し、高木は半身になりながらコースを切った。その瞬間、工藤は石橋にスルーパスを送り込む。
糸を通すように石橋が走り込むスペースにボールが走り、GKと1対1になると思った瞬間、高木が鋭いターンから完全に読み切った形で、石橋とボールの間に斜めのランニングで割って入ってブロック。スルーパスは阪南大GK市川泰壱の両手に収まった。まさにチームを救う超絶な美技だった。
その後も高木の守備の存在感が際立ち、チームはそのまま2−1の勝利を飾った。試合後、このシーンについて本人に聞くと、すらすらと解説の言葉が出てきた。
「あの局面は完全に2対1だったので、9番(工藤)がドリブルから打ってくるか、パスをするかのどれかの状況でした。もし、あそこでもう一個前にボールを運ばれていたら、そのまま9番に行こうと思ったのですが、パスを選択してきたので、すぐにターンに切り替えて(石橋とボールの間に)うまく身体を入れることができたという判断です」
CBとしての能力が非常に高いのは、これまでのプレーで実証済み。173センチとサイズはないが、抜群のバネを持ち、ヘッドも強い。関西学生選抜、全日本大学選抜にも選ばれるなど、関西屈指のCBであるが、来季からの加入内定が決まっている清水での役割は、冒頭で触れた通り、CBではなくサイドバックだ。
「小学校の時に少しやったくらいで、ほぼ初めてのようなものです」と語るように、SB経験はゼロに等しい。しかしそのポジションで、すでにJ2リーグのレノファ山口FC戦で、途中からピッチに立ちリーグデビュー、ルヴァンカップでは2試合にスタメン出場を果たしている。
「僕はもともと身長がないので、このままずっとセンターバックでいくとは思ってはいませんでした。この先(プロ)はセンターバックとしてでは無理だと思っていたので、サイドバックで勝負することになるだろうなとは予想はしていました。なので、エスパルスでサイドバックと言われても驚きはありませんでしたし、それ以外のポジションでもやる準備もできていました」
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高木の武器は与えられたポジションに没頭できるところにある。チームからCBをやれと言われたら、普段の練習からCBとしてやるべきことを徹底してやり、SBをやれと言われたら、同様にSBとしてやるべきことを徹底する。
高木が言うように、サイズ的にCBとしてプロが厳しいと思えば、もっと早い段階で監督やスタッフに「違うポジションでやらせてください」と直訴する選手や、今やっているポジションに不満を覚えたりする選手もいる。前者に関しては主張としては正しいが、高木はそういった意思表示を一切しなかった。その理由をこう語る。
「そのポジションで出るとなったら、そのポジションをきっちりと全うするだけです。阪南ではセンターバックなので、センターバックとして動画を見て、失点の場面でどうしたら良かったかをディフェンスライン(の選手)と話したり、自分のプレーの反省や次への課題を見つけたりして、日々の練習をやっています。
エスパルスに行ったら、サイドバックとして同じことをします。ただ、サイドバックに関してはセンターバックと違って、完全に未知の領域だったので、エスパルスにいる名だたる先輩サイドバックの選手たちのプレーをしっかりと見て、時には積極的に話を聞きに行って学んでいます。吉田豊選手は攻撃面において、ワンタッチでクサビや縦パスを正確に打ち込めますし、山原怜音選手は前への推進力があるので攻撃の関わり方、ポジショニングを聞きに行きます。北爪健吾選手は守備の時のポジショニングを見たり、聞いたりしています」
常に学ぶ姿勢を崩さない。これが高木をプロのステージに押し上げ、未知の領域だったにも関わらずデビューを飾り、出場時間を重ねるなど、周りからの信頼獲得に繋がっている。
「サイドバックもセンターバックも守備ありきであることは間違いないので、自分が持つ安定感、後ろからの組み立ては大事にしていきたいです。今後、もしボランチやアンカーなどをやることも出てくるかもしれないと思っているので、そこは楽しみではあります」
こう話した高木に、「どのような部分が楽しみなのでしょうか?」と聞くと、こう口にした。
「僕は学びたい気持ちが強いし、常に学ばないといけないと思っています。どのポジションでも実際に与えられた時に自分が何を学んで、鍛えていくべきかを考える。実際に試合でプレーをして、見て、そこで得た自分の課題を動画で振り返って、かつエスパルスだったら先輩方に積極的に聞いて学んでいく。そこが大事ですし、楽しみです」
与えられたポジションになり切れるのは意欲と自信の表れ。それを積み重ねてきたからこそ、高木はステージが上がっても心の底から学ぶことを楽しんでいく。
取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
