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電動化で大きく変わったスポーツカー市場

電動化による「変化」を最も強く表しているのがスポーツカーだ。従来はガソリンを大量に消費し、アドレナリンを放出するようなマシンが主流だが、この市場の一角では無鉛ガソリンよりもリチウムイオンを好むモデルがますます増えている。

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この新しいパワーユニットは、内燃エンジンが夢見るようなパワーとパフォーマンスを実現するだけでなく、「ハイパフォーマンスカー」の定義も広げている。そのため、今回は、伝統的な低車高のスポーツモデルから、曲線美のあるクーペ、大陸を突き進むグランドツアラー、さらには奇抜なSUVまで、幅広いジャンルを取り上げている。


ドライバーズカーとして最高のEVを10台紹介していく。

もともとドライバーズカーを得意とするメーカーのクルマもあれば、普段は地味なブランドのクルマもあり、EV革命がその競争の場を均質化していることは間違いない。しかし、見た目はバラバラでも、ドライバーを楽しませようという意図を感じさせる点では共通している。

また、EV市場自体がとてもハイペースな世界で、常に新製品が生まれてきている。そのため、ここで紹介するクルマの中には、今日にでもショールームから持ち帰れるものもあれば、カタログに書かれただけのものもある。一部のモデルは、サプライチェーンの問題や開発の都合により、もう少し待たねばならない。とはいえ、この10台は今のところ、AUTOCAR英国編集部お気に入りの完全電動ドライバーズカーである。

1. ポルシェ・タイカン

ポルシェがEV市場に参入したとき、それがたとえ待ち望まれた参入でなかったとしても、ブランドの名に恥じないインパクトを与えることに成功した。

タイカンは従来の意味でのスポーツカーではなく、4ドアのグランドツアラーであり、既存のパナメーラよりもわずかに小さい。タイカンは、繊細なボディコントロール、稀に見るバランス、見事に調整された操作系、そして手に取るようにわかるステアリングの正確さを持っている。エアサスペンションによる乗り心地の良さも魅力をさらに高めており、それが英国編集部の徹底的なロードテストの結果、最高評価の5つ星を与えることになった大きな要因である。


1. ポルシェ・タイカン

実際、目隠しをしてノイズキャンセリングヘッドホンをつけて運転したとしても、「ポルシェ」であることは即座に分かるはずだ。ステアリングの重さや感触から、不気味なほどの俊敏性、そして丁寧に調整されたダンピングまで、タイカンはツッフェンハウゼンの血を引いていることを自ら証明しているのだ。

現在、いくつか仕様が用意されているが、ポルシェのDNAは、エントリーモデルにもかかわらずスーパーカー級の加速力を持つ4S(最高出力530ps)でも明らかだ。最高峰のターボSは最高出力761ps、価格にして約14万ポンド(約2200万円)で、0-97km/h加速2.6秒というタイムを考慮すると、実世界で最も速いクルマの1つであることは間違いないだろう。さらに、タイカンのレシピに「ワゴン」と「オフロード」の風味を加えたスポーツツーリスモとクロスツーリスモもある。

しかし、英国編集部がお金を出すなら最高出力598psのGTSを選びたい。このモデルは、走り好きのドライバーを喜ばせるように設定されたサスペンションと十分すぎるほどの推進力を両方備えている。また、1回の充電で480km走れるため、より長い時間楽しむことができるのだ。

2. アウディRS eトロンGT

アウディの「RS」のイニシャルを初めて冠したEVは、別のファッションセンスを持ったポルシェ・タイカンだ。強力な電気モーター(前後1基ずつ)と3チャンバー式エアサスペンションを共有しており、もちろん基本的なアーキテクチャも同じである。バッテリーパックもキャリーオーバーされ、350kWの超急速充電に対応し、WLTPサイクルで約460kmの航続距離を持つ。

これが意味するのは、まずアウディRS eトロンGTが非常に速いということだ。最高出力646psと最大トルク84.6kg-mを発生させ、停止状態から100km/hまで3.5秒以下で快適に加速することができる。


2. アウディRS eトロンGT

さらに、ハンドリングの華麗さと対話力はポルシェの兄弟車と同レベルではないものの、非常に良好である。それほど大きな差はないものの、タイカンに比べて足取りがゆったりとしており、EVの洗練性や快適性を考えると好ましい仕上がりとなっている。

3. ロータス・エヴァイヤ

最近のロータスの話題はほとんどエミーラに関するものだ。歴史ある英国ブランドが送り出した、ポルシェ・ケイマンを追うスポーツカーだ。しかし、エミーラはロータスにとって内燃エンジンを搭載する最後の市販車であり、今後は無鉛ガソリンよりも超急速充電を推奨していることは周知のとおりであろう。将来の方向性を示す手がかりの1つが、数年前に発表されたエヴァイヤだ。しかし、こちらは130台の限定生産車であり、納車の開始も2023年初頭まで待たねばならない。

公表されている性能値を見ると、いくぶん気が遠くなる。ロータスは最近、4モーターの合計出力が以前見積もられていた2000psではなく、2039psであることに驚いたそうだ。1680kgというEVの中では比較的軽い車重もあり、性能はフリーフォールのように感じられると想像される。実際の性能はあまり知られていないが、0-100km/h加速で2秒以下、最高速度は320km/hを下回る程度というのがロータスの見立てだ。それから、ニュルブルクリンクのラップタイムEV記録への挑戦の話もあるが、軽さとパワーを考えれば当然のことだろう。


3. ロータス・エヴァイヤ

とはいえ、ロータスは数値よりもハンドリングとダイナミズムを重視してチューニングしているので、パワーデリバリーはむしろ自然吸気エンジンのような曲線を描くと言われている。ブランドの特長がどの程度盛り込まれているかはまだわからないが、今後登場する電動ハイパーカーでドライバーズカーとして響くものがあるとすれば、ロータス・エヴァイヤがおそらく最有力候補だろう。

4. ピニンファリーナ・バッティスタ

ポルシェ・タイカンとアウディRS eトロンGTの関係と同じように、ピニンファリーナ・バッティスタはリマック・ネヴェーラと多くのハードウェア(およびソフトウェア)を共有している。2台の差別化のために、バッティスタはより華やかな外観を持ち、グランドツアラー志向のマシンとして紹介されている。

とはいえ、性能値から明らかなように、決してソフトなクルーザーではない。4モーターから繰り出される1926psの出力と234kg-mのトルクを見ると、0-300km/h加速12秒以内、最高速度350km/hと謳われても不思議はないだろう。しかし、この性能値も約200万ポンド(約3億2000万円)という価格のほんの一部に過ぎない。


4. ピニンファリーナ・バッティスタ

というのも、バッティスタは驚くほど繊細かつ落ち着いたハンドリングを見せ、コーナーでもストレートでも、隅々までスリリングなフィーリングを味わえるからだ。サーキットで試乗した英国記者のマット・プライヤーは声に出して笑っていたほどで、バッティスタの実力は折り紙付きである。

ピニンファリーナは現在ミュンヘンに本社を置き、親会社はインドのマヒンドラ・グループである。にもかかわらず、内外ともに美しく仕上げられ、イタリアンな雰囲気を漂わせている。開発エンジニアには、パガーニやメルセデスAMG(ハイパーカーの「ワン」を手掛けた)のOBが名を連ねており、その才能を遺憾なく発揮しているのだ。。

5. リマック・ネヴェーラ

リマックほど短期間にこれほど大きな印象を与えた自動車メーカーは他にないだろう。クロアチアの自動車ブランドであるリマックは、創業者マテ・リマック氏の自宅ガレージからわずか10年余りで、今やポルシェの一部と、新たに設立されたブガッティ・リマック社の55%を所有する企業にまで急成長したのだ。まさに鯉の滝登りと言える。

若きリマック帝国が担ぎ上げるのが、コンセプトカーの「コンセプト・ワン」と「C-Two」に続くネヴェーラで、2017年デビューのC-Twoの市販版である。デビュー当時で最高出力1088psと67万ポンド(約1億円)の価格を謳い、電動ハイパーカーのトレンドの起爆剤となった。ネヴァーラはわずか150台のみ製造される予定だが、そのほぼすべてが予約で埋まっているようだ。昨年末には最高速度412km/hをマークし、EVの速度記録を更新するなど、話題に事欠かない。


5. リマック・ネヴェーラ

ネヴェーラの魅力は、そのハードウェアにある。複合タブを中心に、各車輪に電気モーターを搭載し、フロントには独立した1速トランスミッション、後軸には2速デュアルクラッチを2つ備えている。その目的は、最高出力1914ps、最大トルク234kg-mという山のようなパワーを最大限に発揮できるようにすることである。

ダブルウィッシュボーン・サスペンション、トルクベクタリング、レベル4自動運転機能など期待されるものをすべて揃えており、価格もそれに見合う180万ポンド(約2億8000万円)という破格の設定となっている。今回ピニンファリーナ・バッティスタの下にランクインしているのは、英国編集部がまだじっくりと時間をかけて試乗できていないためだ。

6. マセラティ・グランツーリスモ・フォルゴーレ

イタリアの象徴的なブランドであるマセラティは、ここ数十年にわたり、F1で優勝しファンの心を掴んでいた1950年代初頭の全盛期の影から抜け出せずにいた。しかし、このたびのリセットとリスタートの試みは、もしかするともう一度失敗することになるかもしれないけれど、今回こそはついに成功への道を歩み出したと期待できる理由がある。

昨年はセンセーショナルなスーパーカーMC20を導入し、販売戦略的に重要なミドルサイズSUVをデビューさせ、今度は新型グランツーリスモを発表したのである。最重要ポイントは、マセラティ初の完全EVが設定されたことだ。内燃エンジン車にも電動車にも対応したアルミニウム製の新しいプラットフォームをベースに、EV仕様は「フォルゴーレ(イタリア語で『稲妻』の意)」と名付けられている。


6. マセラティ・グランツーリスモ・フォルゴーレ

トルクベクタリングのために後部に2基、フロントに1基のトリプルモーターを搭載し、最高出力761ps、0-100km/h加速2.7秒、最高速度320km/hを達成する。さらに、バッテリー(83kWh、航続距離450km)は細長い「H」型に配置されているが、これにより着座位置が低くなるだけでなく機敏性も高まっている。英国編集部はまだサーキットで試したばかりだが、非常に有望だ。加速もさることながら、シャープな旋回性能とエイペックス付近での回頭の速さ、そしてリアを使った立ち上がりなど、その走りは一級品である。

完成した量産車を公道で試すまで、最終的な結論は待たなければならないが、今のところすべてに期待が持てる。

7. BMW i4

BMWは電動スポーツカーに精通しており、かつてのi8(PHEV)もスーパーカーの外観と強力なパワートレイン、そして実に楽しいドライビング・エクスペリエンスを兼ね備えている。しかし、i4はBMWが初めて手がけた高性能EVであり、その完成度は決して低くはない。

i3やiXとは異なり、i4はEV専用プラットフォームではなく、CLARを採用している。要するに、4シリーズ・グランクーペを電動化したものだ。エントリーモデルのeドライブ40(後輪駆動)でも十分に快調だが、飲みの席で自慢するには高性能モデルのM50が必要だろう。ツインモーターを搭載し、最高出力543psの強力なパンチで0-100km/h加速3.9秒を実現する。


7. BMW i4

車重は2.3トン弱あるものの、パワフルなモーターと賢いソフトウェアによってBMWらしく俊敏でコントロール性に優れており、その気になればテールハッピー・アクションも可能だ。M4コンペティションほど楽しくはないが、スピード感は同等に感じられ、正確性には欠けるものの快適性と洗練性から得るものは多い。

M50は、初めての電動ドライバーズカーとしては目指すところにほぼ行き着いている。しかし、より安価な(しかし軽量でグリップの低い)eドライブ40の方が、甘く親しみやすいハンドリングバランスを持っており、590kmという航続距離も捨てがたい。ドライバーズカーとしてはこちらの方が有利であり、価格が安いという事実もその魅力をより一層引き立てている。

8. キアEV6 GT

このリストにキアが入るとは意外かもしれないが、韓国ブランドは最近、我々の認識を変えようとしてきている。ブランドイメージの改革は数年前、スティンガーGT-Sから始まった。強烈なV6エンジンと表情豊かな後輪駆動車らしいハンドリングを備えた4ドア・クーペだったが、本格的なハイパフォーマンスは、電動化を積極的に受け入れる態勢があるからこそ実現できた。

EV6は、見た目の良さ、スピード感、そして優れたハンドリングからすでに高い評価を得ている。そのため、フラッグシップのEV6 GTへの期待も当然高かった。ツインモーター(四輪駆動)を搭載し、最高出力は585ps、最大トルクは75.5kg-mを発生。77.4kWhバッテリーにより1回の充電で423kmの走行が可能で、800Vのアーキテクチャにより超急速充電も可能とされている。


8. キアEV6 GT

また、シャシーにも改良が加えられ、ボタン操作でダンパー設定を変更して585psのフルパワーを堪能できるようになった。全体的には驚くほど軽快で、クイックなステアリングと強力なグリップ、そして破壊的な高速コーナリングが可能だ。ドリフトモードは愉快だが、荒々しい挙動を誘発するので路上では使わないほうがいい。限界までプッシュすると、SUVのような腰高感と質量を無視できなくなり、それらを抑えるのに苦労しているように感じられる。

しかし、本当に優れているのはコストパフォーマンスの高さである。パンフレット上は6万2645ポンド(約995万円)と高く見えるが、EV6 GTの1ポンドあたりの性能に匹敵するクルマはほとんどない。

テスラ・ロードスター(近日到来)

EVの紹介リストにテスラを含めないわけにはいかない。性能面ではテスラの現行ラインナップのほとんどをここに列挙してもいいが、スポーツカーとしては、たとえ発売が遅れていたとしてもロードスターに軍配が上がるだろう。すでに予定より4年ほど遅刻しているロードスターだが、最近になってようやく2023年7月に生産が開始されることが明らかになった。

実際に手に触れるまでは、テスラが主張する数字だけが頼りだ。カタログ上では、非常にエキサイティングなEVになりそうだ。トライモーターのパワートレインは最高出力1000ps超のモデルSプレイドと近く、静止状態から97km/hまで1.9秒、最高速度は時速400kmに達するとされているが、この程度のパワーは十分あると思われる。さらに印象的なのは1000kmという航続距離で、これが現実世界で実現可能かどうかは定かでないが、大型バッテリーを積んだライバルは戦々恐々としていることだろう。


テスラ・ロードスター

価格もまだ不明だが、英国での販売価格は18万9000ポンド(約3000万円)程度になると言われている。高額に聞こえるが、この10倍もする電動ハイパーカーの存在も考えると、バーゲン価格と言えるかもしれない。最終的に実車に乗れば、このリストの上位に食い込んでくることだろう。

アスパーク・アウル(近日到来)

ご存知、日本は大阪に本社を構えるアスパークが送り出す電動ハイパーカーのアウル。4基の電気モーターから2000ps強を発生させ、0-97km/h加速1.7秒と、現時点で「世界最速」とされる。航続距離は約450kmで、価格は250万ポンド(約4億円)とされている。

出自については、基本的に日本生まれだが、製造はイタリアのMAT(マニファットゥーラ・アウトモビリ・トリノ)社で行われている。製造予定の50台は、2021年に納車開始を予定していたが、2022年になっても顧客は待っている。手元に届けば、まずそのサイズに驚くかもしれない。全高990mmと、タイヤからルーフまで1mにも満たないのだ。少なくともガレージの天井を気にする必要はなさそうだ。


アスパーク・アウル