@AUTOCAR

写真拡大 (全4枚)

ルノー/日産/三菱 提携は新たな章へ

リバランスではなく、リスクと変革の時代に次なるステップで、各自がいかにして強くなるか。

【画像】BEVのルノー・サンク(5)と日産マイクラ(マーチ)が兄弟に?【どんなクルマ?】 全100枚

そう述べながらアライアンス・パートナー各社の信頼とリスペクトを強調し続けた、日産の内田誠社長のタフ・ネゴシエーターぶりが際立つ会見だった。


ルノーグループ、日産自動車株式会社と三菱自動車工業株式会社は、ルノーグループと日産の取締役会での承認を経て、3社のアライアンスに関する発表をおこなった。    日産

Q&Aの時間帯になると時折、ルノーのルカ・デ・メオ社長と質問の内容を吟味しては笑顔で目配せを交わすほど。2人の間に「コンプリシテ」、つまりサッカー選手でいう連係プレーの意思疎通がとれてきたような、いい関係性を感じさせた。

無論、ここ数か月、日産の利益を守るために内田氏がインテンシブに議論をルノー側と戦わせてきたことを窺わせるものだ。

今会見で新しい事実としては、ルノーとの株のクロス持合いの比率だけでなく、日産がアンペアにも最大15%の出資を決めたこと。「持ち合い株の不均衡」解消の、当初Xデーだった11月半ばの時点では、おそらく折り合いのつかなかった事項だろう。

ジャン・ドミニク・スナール会長はトークセッションのモデレーターか、自分でも言っていたが「オークションの競売人のよう」で、傘下3社に対して「各チーム」という表現を用い、あくまで等距離から接していたのが印象的だった。

ルノーのルカ・デ・メオ社長は2020年半ばに着任した以上、アライアンスの中では新参であることを認識しつつ、今回の交渉ではアライアンスからルノーが今後、何を得られるかを念頭に置いたと述べた。

だからこそ過去の延長に立って将来的に何ができるか、よりオープンな枠組みに移行すべきと感じたという。

ジャン・ドミニク・スナール会長もルノー側の立場から、新たな枠組みを用意するにあたって、法務の担当者とも議論を重ねた結果、株の不均衡な持合いで自縄自爆になっていると認識したと語った。

具体的な数値的目標の語られることの少なかった会見で、向こう15年間はアライアンスの枠組みを維持するというパースペクティブも、アライアンスの取締役会会長を維持するスナール氏の口から語られた。

資本面の再均衡化以上に、今回のアライアンスの変化を「キャタライゼーション(触媒化による変容)」であるとも形容した。

3社「対等」で現場はどう変わる?

だが3社が平等な立場に立った以上、アライアンスに対するスタンスにも微妙な差異を感じる。

三菱自動車は他の2社に比べて、アライアンスの歴史が浅いという距離感を隠さない。


会見をおこなった3社。「各社の新しい取り組みにパートナーが参加可能となる、戦略的な機敏性の向上」と発表された。    日産

加藤隆雄社長も冒頭で、二社の話し合いの努力と決断をポジティブに捉えているという、どこか他人事のように聞こえなくもないコメントもあった。

アンペアへの出資についても検討中の段階で、ルカ・デ・メオ氏から「三菱が参加を表明してくれたらグッドサプライズ」と、少し皮肉めいて聞こえる発言もあった。

それこそが、3社が協力体制をさらに強化しつつも、それぞれ独自プレーヤーとして他の2社から協力を得られるという、新しいアライアンスの強調するフレキシブルさなのかもしれないが。

いずれにせよルノー・日産・三菱のアライアンスは、親の傘下に子がいるといった上下の統合関係ではなく、水平的な合従連衡になったといえるが、実体のない紳士協定に堕するリスクはつねに内包することになる。

ではアライアンスが3社の対等なパートナーシップになったことで、具体的に現場で何が変わるのか? 

会見で述べられたことを統合すると、全固体電池のプロジェクトは日産主導でおこなわれる。

ルカ・デ・メオ氏は2026年に世に出るであろうアルピーヌのBセグ、ルノー・サンクのBEVと同じプラットフォームを日産が使用すると述べた。

おそらくはマイクラ(マーチ)だろう。スモールEVの共有プラットフォームがアンペア事業の柱の1つだろうし、すでにCMF-EVを共有する日産アリアとルノー・メガーヌEテックの受け皿ともなるのだろう。

三菱はアウトランダーPHEVが欧州で高い評価を得ており、シリーズ・パラレル式ハイブリッドの独自ノウハウがある。

とはいえB/CセグでEVポートフォリオをもたない訳にいかないので、アンペアへの出資は様子見というより、日産とルノーが妥結した今から出資の規模を探る段階だろう。

3社とも、初代リーフに初代ゾエ、アイミーブと、いわゆる第1世代EVから手がけてきただけに技術面の独自ノウハウはあり、電動化で調達や生産コストの面で協業するメリットは重々、感じているはずだ。

協業は地理的戦略で 「上納金」は見直し

むしろ具体的な協業は、地理的戦略に集約された。

日産は日本と米国、中国。アセアンとオセアニアは三菱。欧州はルノー。


ルノーは日産株の持ち分を15%に下げ、信託した23.4%分の議決権は中立化するが、手放すタイミングと判断については留保するため、配当金は受け取り続けられる。    日産

各社得意とする地域ごとのプレゼンスは保持しつつ、インドや中南米といった成長市場に協力して進出する。

ルノーはメキシコに日産のサポートの下、現地生産込みで進出する。アルゼンチンやコロンビアといった市場にも強いルノーだがボラティリティの高い地域なので、メキシコ進出はアメリカ市場への足掛かりというよりは中南米全体での収益を補強する意味合いと、ルカ・デ・メオ氏は説明する。

逆に日産は南米市場でルノーのサポートを受け、展開ラインナップを拡充する。三菱は米国市場で日産と協業を模索する。

いずれ電動化とソフトウェア定義型ヴィークル、自動運転における専門知識を集結させ、効率よく各地域で各社が独自に価値創造に取り組むことが、内田氏の説明するアライアンスの新しい取り組み方だ。

この辺りはスナール氏が以前に述べた「リーダー&フォロワー戦略」の残響が見てとれる。

とはいえ、各市場は異なるリズムで異なる規制ルールで推移し、顧客も同じペースではついてこない以上、3社が得意とする市場を確保しながら、柔軟に素早くフィットするしかないという危機感も垣間見える。

ところでルノーは日産株の持ち分を15%に下げ、信託した23.4%分の議決権は中立化するが、手放すタイミングと判断については留保するため、配当金は受け取り続けられる。

ただ日産が配当金をどのぐらいにするかといった経営判断に関わらなくなるため、ゴーン時代にルノーの収益を一時は支え過ぎていると批判された、悪名高き「上納金」で潤うことはできなくなる。

またアンペアと分けて「ホース」の名の下に集約されるICE事業にはジーリーが参画するが、ルカ・デ・メオ氏は欧州でICEが将来的に無くなる以上、韓国ルノーサムスンの工場でジーリーとプロジェクトを進めざるを得ないことを認めた。

内田氏も、ICEの知財について細かい取り決めをした訳ではなく、アンペアでもホースでもあらゆる新しいプロジェクトに用意はできていると述べる。

もっとも、新しいアライアンス体制の中でチャレンジャーとしてレバレッジを効かせなければならないのは日産かもしれない。

インド市場の立て直しに加え日米欧といった先進国市場でも後退し、昨年のグローバル販売台数は前年比の半分近くまで落ち込んだが、円安に助けられた側面がある。

内田氏の強調し続けた、新しいマインドセットでもって、3社アライアンスのパートナーシップの価値を知らしめることがどのように実現されていくか。それは外部というより、内部に向けられたメッセージにも聞こえた。