ほぼ無音の「空間」に驚愕! 日産「アリア」はナニが凄いのか? 乗れば分かる魅力とは
やっと乗れた「アリア」 その印象はいかに?
現在、日産の経営の柱は「電動化」と「電脳化」ですが、その象徴となるモデルがリーフに続くBEV専用車「アリア」です。
2020年7月の世界初公開から約2年、ついに公道で試乗する機会がやってきました。

アリアはパワートレイン×駆動方式の組み合わせで4つのバージョンが用意されていますが、今回はもっともベーシックな「B6」のFFモデルです。
【画像】もはや「家です!」 アリアの「リビングみたいな車内」 ほぼ無音な空間ってどんな感じ?(34枚)
エクステリアは大きくふくよかな「ノート」という印象ですが、そもそもノートはアリアのデザインモチーフを活用しているので当然のことです。
モダンなのにどこか懐かしさを感じさせるデザインは、日本の伝統的なテイストを新しい時代にアレンジした「タイムレス・キャパニーズ・フューチャリズム」と呼ばれる日産の新デザイン言語によるものです。
大柄に見えるボディですが、全長4595mm×全幅1850mm×全幅1665mmと、実は「エクストレイル」と同じくらいのサイズです。
恐らくロングホイールベースと四隅に配置されたタイヤなどから、そう見えるのかもしれません。
インテリアはBEV専用プラットフォームを活かした空間設計で、コンセプトは「車内をラウンジに変える」です。
インパネはシンプルな水平基調に12.3インチのデュアルディスプレイの組み合わせ。物理スイッチは少なめで空調スイッチは加飾パネルに内蔵される透過型を採用と先進感を演出させたデザインが特徴となっています。
センターにコンソールを持たないフラットなフロアは空調ユニットをモータールーム置き(普通のクルマは室内置き)も相まって開放的な空間を実現。
センターコンソールは電動で前後に150mm移動可能、運転時/停車時に合わせて最適な位置へと調整可能です。
かつて日産は初代ティアナで「モダンリビング」というキーワードを掲げましたが、アリアのインテリアは「極モダンリビング」といっていいレベルです。
質感も非常に高く、日産ではなくインフィニティでも通用するレベルにあると感じました。
後席は2775mmのロングホイールベースを活かしてボディサイズ以上の広々空間。
ほかのBEVで感じたフロアの高さも気にならず、着座姿勢も自然でサルーンとしての資質も高そうです。
先日、「シーマとフーガが生産終了」という報道がなさましたが、それらのモデルをカバーできる居住性といえるでしょう。
ただ、細かく見ていくとインパネ右下のスイッチ類やパワーシートメモリーのスイッチ、ドアハンドルといった他車の流用部品とのデザインや質感のギャップは気にならないといえば嘘になります。
この辺りはイタチごっこですが、全体のレベルが上がると細かい部分がより気になってしまいます。
運転席に座ると、最近のクルマにしては柔らかめでクッションの沈み込みも深いシートに驚きます。この辺りもラウンジを意識しているのでしょう。
シートポジションはアップライトで比較的高めの位置に座らせます。ステアリングは電動で調整可能ですが、可動範囲が少ない(とくにチルト)のが気になりました。
この点を開発者に聞くと「メーターの視認性を考慮」とのことでしたが、ヘッドアップディスプレイが装着されているので、ポジション優先でも良いのではと感じました。
パワートレインは160kWのモーターをフロントに搭載。ホイールベース間の床下に搭載されるバッテリーの容量は66kW、航続距離は470km(WLTCモード)となっています。
まず運転席に座って驚くのはドアを閉めた瞬間からわかる静粛性の高さです。これは外の世界からシャットダウンされたといってもいい過ぎではないレベルです。
スタートボタンでシステム起動、シフトをDレンジに入れて発進します。
BEVは静かといっても何らかの音はしますが、アリアはほぼ無音です。
この辺りは吸音材、遮音ガラス、遮音カーペット、吸音タイヤをはじめとする遮音構造はもちろん、モーター音を抑えた新開発の電動パワートレインの相乗効果ですが、一般道での走行時はインバーター音はもちろん、風切り音やタイヤのロードノイズなどはほぼ気にならないレベルです。
ただ、あまりに静かすぎて速度感が解りにくいので、慣れるまでは気を付けたほうがいいかもしれません。
パワートレインは2トン近い車体を軽々と走らせるパフォーマンスを備えているも、電動車である主張は思ったよりも少なめで、ドライバーのアクセル操作に合わせて力強さが増すタイプといえるでしょう。
ちなみにリーフはドライブモード・ノーマルよりもECOのほうがドライバビリティが高く乗りやすかったですが、アリアはノーマルがちょうどいい塩梅で、ECO/スポーツはその名の通りの印象でした。
この辺りは電動車感が強いスロットル特性のリーフやe-POWERモデルとは異なりますが、その辺りは高出力仕様に任せているのでしょうか。
ちなみに3つのドライブモードとeペダルのON/OFFを組み合わせることでシーンや嗜好に合わせた特性にすることが可能です。
「ノーマル×eペダルOFF」が万能なのはいうまでもありませんが、個人的には高速を走るときには穏やかな特性とコースティングで滑るように走る「Eco×eペダルOFF」、ワインディングのような道を走る時には力強い加速とレスポンスの良い減速でキビキビ走る「SPORT×eペダルON」がお勧めです。
航続距離はリーフe+を超える470kmです。これを多いと見るか少ないと見るかは人それぞれですが、航続距離の長い仕様(B9)の登場も控えているので、その辺りは使用用途に合わせて選択するといいと思います。
筆者(山本シンヤ)は1台でも賄えますが内燃機関のようにはいかず使い方を含めてコツや工夫は必要、2台所有であれば十分以上といった評価です。
アリアの乗り心地は「リビング」だった?
フットワークはどうでしょうか。
「乗る人全てが感動する上質な走り」を実現するために、車体バッテリー一体構造で強固な車体剛性(ねじり剛性エクストレイル比75%アップ)を持つEV専用プラットフォームや高剛性二重防振サブフレーム、高剛性ラックEPS、高応答大径ダンパー、軽量タイヤ&アルミホイールなどが採用されています。
正確性で滑らかなステア系、FFでも暴れないトラクションの良さ、体幹の強さを感じるコーナリング時の安心感、しなやかな足さばき、電動パワートレインの制御を活かした姿勢変化の少なさ、前後バランスの良さによる4輪の接地性の高さといった基本素性の良さは実感するものの、見た目と走りが一致していないのが残念に感じました。
具体的には重いクルマを無理やりクイックに動かそうとしているハンドリング特性、絶対的な乗り心地はいいのに速度域問わずピッチングが収まらないバネ上の動きなどです。
この辺りはアリアがスポーティなコンセプトであれば十分許容できるレベルなのですが、「車内をラウンジに変える」、「乗る人全てが感動する上質な走り」というコンセプトを考えると、もう少し頑張ってほしいなと。
個人的にはハンドリング特性はもう少し穏やでいいので連続性を重視、バネ上はフラットなのはもちろん乗員の頭を揺すらない動きであってほしいです。
ただ、今回の試乗車は卸したてのモデルだったので、距離を重ねて各部が馴染むと印象が少し変わるかも。その辺りは今後チェックしてみたいと思います。
ちなみに試乗車のタイヤはダンロップ/ブリヂストンの2銘柄で開発者はどちらも同じスペックだといいますが、乗り比べるとダンロップはハンドリングに優れる、ブリヂストンは快適性に優れる印象でした。
運転支援デバイスは“進化版”プロパイロット2.0で、準天頂衛星を活用することで複雑な環境でも作動が可能になっているそうです。
実際に試すとACC/ステアリング支援は、より自然、より滑らかな制御になっています。
システム構成は「スカイライン」と同じですが、電動パワートレインの特徴がより緻密なコントロールが可能です。
個人的には「高速道路ではクルマに任せてOK」といえるくらい信頼できるシステムだと思いました。

さらにアリアには自然言語対応の対話型インターフェイスも採用されています。
曖昧検索も可能ですが、認識度はトヨタ/レクサスやメルセデス・ベンツ、ボルボなど比べると今一歩。もう少し学習が必要だと思います。
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アリアは日産が今実現できるすべての技術を凝縮した1台なのは間違いないです。
今回、実際に見て・乗って・触って、日産の強い意気込みを感じた一方で、ちょっと欲張りすぎかなと思う部分も。
個人的にはせっかくパワートレイン×駆動方式で4つの仕様を持っているからこそ、どれも一緒ではなくノートシリーズと同じくキャラクターを明確にしたほうがユーザーメリットは大きいと思います。
日産の新たなフラッグシップ、まだまだ進化できると思います。


