■HIGHER BROTHERSメンバーが語る、「いまの中国ヒップホップは発展途上」

日本をはじめ、海外で最も知名度のある中国のラッパーといえば、成都で誕生した4人組ヒップホップグループの「HIGHER BROTHERS」だろう。2017年にリリースされ大ヒットした“Made In China”では、四川省の方言と訛りのある英語のラップで、全世界に「チャイニーズ・ラップ」という新たなジャンルを提示した。HIGHER BROTHERSのメンバーの一人でスポークスマン的ポジションにいるのが、马思唯(マー・スーウェイ、MaSiWei)だ。

マーは、2014年にミックステープの形式で作品を発表してデビュー。2016年にHIGHER BROTHERSを結成。2017年にアルバム『Black Cab』でHIGHER BROTHERSとしてデビューを果たし、同年“Made In China”の大ヒットを機に、2018年にはアメリカツアーを成功させている。そして、2020年には1stソロアルバムをリリース。順調に中国ヒップホップ界で不動の座を手に入れたマーは、いまの中国ヒップホップの状況を「発展途上」と語った。

「2017年から2年くらいは番組の影響もあり、ヒップホップが一気に盛り上がった。そして、ここ2年くらいは、ヒップホップが流行っているからとラップを始める人が増えたこともあって、飽和状態になっていると感じている。ただ、今後はプロフェッショナルとして強力な作品を生み出すラッパーだけが残っていくんじゃないかな。この流れは健全だとは思うよ」

もう一人、現在、上海のクラブ「1 OAK上海」で音楽ディレクターを務めながら、2015年に設立したレーベル「dopeness」の経営者としてラッパーやDJのマネージメントなどを行なうラビからはこのようなコメントもあった。

「ヒップホップに対する認知度はちょっとずつ上がっているけど、まだシーンの成熟度としては20〜30%程度じゃないかな。ラッパー、消費者、マーケット、このすべてがまだ足りない。もっと多くの人が関与するようになって、競争状態になればさらに発展すると思う」

2017年から数えてもまだ4年。番組が増え、ラッパーの露出が増えているように見えるが、中国の巨大な音楽マーケットから見てもまだ足りないということなのだろう。

ラッパーとして残り続けるために必要なこととして、マーは次のように続ける。

「重要なのは『行動力』だと思う。とにかく自分の作品のアウトプットを続けること。いまは個人が発信主体となる『セルフメディア』が盛んな時代だから、さまざまなプラットフォームやSNSなどで発信できる。人と違う作品を発信すれば、覚えてもらえるしね。例えば、リッチ・ブライアンはいい例だよね」

リッチ・ブライアンは88risingに所属するインドネシア出身のラッパーだ。彼は16歳のとき、YouTubeに自作自演のMVを上げると、一躍時の人となり、いまではアジアを代表するラップスターとして人気を博している。

■MCバトル番組でのメンター役も務める。台頭する若手ラッパーへの想い

ただ、アウトプットを続けるだけでは特に人口の多い中国では注目してもらえないし、さらに海外を目指すのであれば「実力、チャンス、運も必要」とマーは口にする。実際、HIGHER BROTHERSもその3つの要素が重なり、海外で成功するに至った。

昨年、マーはMCバトル番組『说唱新世代(Rap for Youth)』に初めてメンター役として登場した。これまでバラエティー番組へのレギュラー出演経験がなかった彼の出演は放送前から話題を呼んでいた。

「長年、ラッパーとして活動してきたけど、経験していない分野にもチャレンジしたいと思ったんだ。若手ラッパーとも知り合いたかったし、自分が経験してきたことをその若手たちにシェアしたいとも思ってた」