2020年には、大衆的番組となった『The Rap of China』の他に2つのMCバトル番組が放送され、今年も3つのMCバトル番組が放送された。『The Rap of China』はこれまでのシーズンとは趣を変え、出演者を18歳~24歳に限り、若手ラッパーの発掘と育成を目的とした内容となった。タイトルは『少年说唱企划(New Generation Hip-Hop Project)』と中国語、英語ともに一新。また、今年は初めて女性だけのMCバトル番組も放送され、女性ラッパーのさらなる活躍を期待させる動きもあった。

中国ヒップホップについては、2018年にこちらで紹介した。その後も、個人的に中国ヒップホップの動きを追い続けてきた。前回、記事を発表してから3年が経ったが、相変わらず中国ヒップホップは勢いを増し、変化を見せながら新たなラップスターを生んでいる。2017年以降の変化や新たな動きなど、中国ヒップホップの関係者に話を聞きたいと思った。

■HIGHER BROTHERSメンバーが語る、「いまの中国ヒップホップは発展途上」

日本をはじめ、海外で最も知名度のある中国のラッパーといえば、成都で誕生した4人組ヒップホップグループの「HIGHER BROTHERS」だろう。2017年にリリースされ大ヒットした“Made In China”では、四川省の方言と訛りのある英語のラップで、全世界に「チャイニーズ・ラップ」という新たなジャンルを提示した。HIGHER BROTHERSのメンバーの一人でスポークスマン的ポジションにいるのが、马思唯(マー・スーウェイ、MaSiWei)だ。

マーは、2014年にミックステープの形式で作品を発表してデビュー。2016年にHIGHER BROTHERSを結成。2017年にアルバム『Black Cab』でHIGHER BROTHERSとしてデビューを果たし、同年“Made In China”の大ヒットを機に、2018年にはアメリカツアーを成功させている。そして、2020年には1stソロアルバムをリリース。順調に中国ヒップホップ界で不動の座を手に入れたマーは、いまの中国ヒップホップの状況を「発展途上」と語った。

「2017年から2年くらいは番組の影響もあり、ヒップホップが一気に盛り上がった。そして、ここ2年くらいは、ヒップホップが流行っているからとラップを始める人が増えたこともあって、飽和状態になっていると感じている。ただ、今後はプロフェッショナルとして強力な作品を生み出すラッパーだけが残っていくんじゃないかな。この流れは健全だとは思うよ」

もう一人、現在、上海のクラブ「1 OAK上海」で音楽ディレクターを務めながら、2015年に設立したレーベル「dopeness」の経営者としてラッパーやDJのマネージメントなどを行なうラビからはこのようなコメントもあった。