─ 日本は菅義偉首相が2050年のカーボンニュートラルを宣言するなど、脱炭素の流れができています。どのように対応しようと?

 天野 国としての方針ですから、しっかり進めなければならないと考えています。当社は現在、秋田県の秋田港、能代港で着床式洋上風力の工事に取り組んでいます。国内で初めての商業ベースでの洋上風力発電事業となる見通しです。

 また、水素については北海道河東郡鹿追町で家畜の糞尿からバイオガスを発生させ、そこからメタンガスを抽出、それを水蒸気と反応させて水素を発生させるという事業に参画するなど、従来の建設業とは少し距離のある分野にも入っています。

 それ以外にもバイオマス発電にも携わっています。九州の霧島酒造さんの工場から出た焼酎粕を発酵させてバイオガスを回収して、発電などのエネルギーに利用する事業で発電設備の建設を手掛けているんです。今は小さなリサイクルですが、スマートシティにもつながる考え方だと思っています。

 ─ 設備を建設するだけでなく、エネルギーをどう活用するかという部分にまで入り込んでいると。

 天野 そうです。中核事業である建築・土木の生産性を上げ、洗練させていくことが大前提ではありますが、我々としてはできることは何でも取り組んでいこうと考えています。社員も知恵を出すことが求められますから、育てる意味も込めています。

 社会課題解決に向けたソリューションの一端で、事業化や実際の経営という面では今後、乗り越えなければならないことが出てくると思いますが、追求していきたいと思います。

 ─ ところで現在、東京・浜松町の「世界貿易センタービルディング」の解体工事を手掛けていますね。2029年度の全体工事完成を目指して新築工事に入るそうですが。

 天野 そうです。当社は1968年に日本最初の超高層ビルである「霞が関ビルディング」の施工を手掛けましたが、世界貿易センタービルは2番目に着手した物件です。超高層ビル群の勃興期のモニュメンタルなビルの解体が始まっているというのはエポックな出来事だと思います。

 超高層も第2世代に向かっていく流れがあるわけですが、一方で1974年竣工の「新宿三井ビルディング」は、現在の姿を残したまま、当社が屋上に超大型制震装置を取り付けて、今後も使い続けることになっています。どちらも当社の技術が活かされています。

建設のデジタル化を含め建設業の高みを目指す!
 ─ この4月から新たな中期経営計画をスタートさせていますが、改めて鹿島をどういう会社にしていきたいと考えていますか。

 天野 昨年亡くなりました、当社の鹿島昭一相談役が目指していた、開発、エンジニアリング、設計、施工、維持管理という建物の一生に関わることができる多機能な会社を目指すという方針を継続しながら、できる限り高みを目指していきたいと考えています。

 ─ 全産業的にデジタル化が課題ですが、どう取り組んでいこうと。

 天野 今、当社は土木工事において、建設機械の自動化技術を核とした次世代の建設生産システム「クワッドアクセル」を開発し、秋田県の「成瀬ダム堤体工事」などで活用しています。

 これまではベテランの、熟練したオペレーターが建機を動かしてきたわけですが、彼らがどういう軌道で機械を動かしているのかをデジタルで記憶して、自動で再現できるようにする。

 将来に向けて、月での無人での施工による有人拠点建設に向けてクワッドアクセルの活用を検討していますが、足元では造成工事で使用することになります。