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 子どもたちの間でいま、美容整形に熱い視線が注がれている。美容外科の『東京イセアクリニック』が小中学生女子200名を対象にした調査で、小学生の2割、中学生の4割が「将来、整形したい」と回答。16〜19歳のハイティーン122名を対象にした別の調査では、実に91・8%が「美容整形したい」と回答している。

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10代の患者は5年間で約38・5倍に

 実際に同クリニックでは、二重にするなど目元の整形をした10代の患者数は、2015年から’20年の間に約38・5倍も増えたというから驚かされる。

「僕が美容外科医を始めたころは、中学生の患者なんて、まず来ませんでした。ところが最近はちょくちょくやって来るように。実数としてそれほど多くないとはいえ、今では患者の1割程度を10代が占めています。夏休みや学年のかわり目は特に多いです」

 こう語るのは業界最大手のひとつ、『共立美容外科・歯科』で副総括院長と渋谷院院長を兼任する磯野智崇医師だ。

 10代に対して行われる手術は、まぶたを糸で留めて二重にする埋没法の二重術がほとんど。このほか、ヒアルロン酸を注入して鼻を高くする隆鼻術など、いわゆる「プチ整形」が人気を集める。リストカットの傷痕を目立たなくするために来院するケースもまれにあるという。

 都内在住の入江千佳さん(40代=仮名)は一昨年の春、「高校入学祝い」のため、長女に整形手術を受けさせたひとりだ。

「以前から“第1志望の高校に合格できたら、二重に整形させてほしい”と言われていたんです。中学時代の娘は毎朝、学校へ行く前に『アイプチ』で二重にするのが日課になっていました。でも、体育などで汗をかいたら(二重になるよう、のりで癖をつけた部分が)取れるし、学校でやり直すのも面倒だと」

 15歳で整形は早すぎる。そう反対したが、ぱっちりとした二重まぶたの次女と比べてコンプレックスを抱いている長女がふびんでもあり、根負けする形で承諾した。

「整形費用は長女が自分で貯めたお小遣いと、足りない分は私が負担しました。二重になって、本人は“アプリで盛った(加工した)顔に近づけた”と喜んでいます。夫はいまだに気づいていませんが(苦笑)」(入江さん)

子どもが強く言うのを、親は渋々許可する

 入江さんの長女のように、のりやアイテープによって目元を二重にしている女子中高生は珍しくない。なかには、二重づくりに時間がかかって学校に遅刻したり、まぶたのかぶれなど皮膚トラブルを起こすこともある。前出の磯野医師によれば、そうした子どもの様子を見た親は「整形をさせたほうがマシかも」と考え、仕方なく美容外科を訪れるケースが多いという。

「未成年の場合、手術には親権者の同意書が必要になります。そのため大抵はお母さんと一緒に来院されますね。どの親御さんも子どもが強く言うので、渋々許可するといった感じです。診察中も、あれもこれもやりたいと言いだす子どもに対し“(手術は)目元だけにしておきなさい!”“二重の幅が広すぎる!”と注意するなど、どうにかして自然な感じにとどめようとする場合がほとんどです」(磯野医師、以下同)

 時には子ども以上に、親のほうが整形に積極的なケースもある。

「お子さんが小学生であるとか、まだ小さい子どもを持つ親御さんに多いですね。“細い目だと学校でいじめられるのでは?”“一重では将来かわいそう”などと、先々のことを心配して来院されるわけです。お子さんが本当に望んでいるならいいのですが、あまりに若いと本人の意思を確認するのも難しい。“私は怖くて(手術が)嫌だけど、ママが喜ぶからやる”という可能性もありえますから」

健康への影響とトラブルの可能性は

 どんな手術にもリスクは伴うもの。ましてや成長過程にある10代の場合、整形手術が心身の健康に影響するおそれはないのだろうか?

「二重の処置に関しては、糸で留める埋没法ならば7〜8歳以上であれば問題ありません。ヒアルロン酸を注射して鼻を高くする隆鼻術も同じです。埋没法の糸は取り除けますし、ヒアルロン酸はいずれ体内へ吸収されます。元に戻せる施術であれば、お子さんでも身体の負担になることはありません」

「日本美容外科学会」の広報委員長・山下理恵医師も、「個人的見解」と前置きしながらも同様に言う。

「顔の骨は15〜16歳で成長が止まります。ですので、10代であるという理由によるデメリットはありません」

 ただ、1度の整形が呼び水となり、エスカレートしていく人も中にはいる。

「整形依存に陥るのはごく一部の人ではないでしょうか? 年齢は関係ないと思います。ですが、(まだ成長過程にあり)精神が未熟なお子さんに関しては、整形に依存しないよう指導するのも美容外科医の仕事です」(山下医師)

 注意すべき点はほかにもある。すべての美容外科医が10代と真剣に向き合い、手術をしているわけではないからだ。低価格と宣伝しながら、実際には高額な請求をされるトラブルが後を絶たない。

「テレビの宣伝を見て子どもだけで受診したところ、痛くない麻酔、よい手術糸などをすすめられ、二重手術の費用が52万円との見積もりを出されたケースがありました。しかし一般的には、8万〜15万円が相場だと思います」(山下医師)

 SNSの口コミもクリニック選びに関しては玉石混交、磯野医師は「あてにならない」と言い切る。美容外科の悪評をライバル院のスタッフが書き込む話をよく耳にするという。

「カウンセラーというスタッフがいて、マシンガントークでたたみかけ、考えるスキを与えないようなクリニックも避けたほうがいいでしょう」(磯野医師)

容姿がすべて? 母の複雑な思い

 いまや有名タレントが整形を公表し、ユーチューブでも顔出しの“整形ユーチューバー”が乱立する時代。美容整形がタブーとされていたころに比べれば隔世の感がある。

 そうした変遷を知る磯野医師は整形を希望する10代について、こう分析する。

「インスタグラムには整形情報を交換し合う“整形垢”と呼ばれるアカウントが無数に存在しています。なかにはインフルエンサーもいて、物心がついたころからSNSに親しんできた10代は、そうした“成功例”を目にする機会が否応なしに増えていく。

 学校では“みんな違って、みんないい”と言うけれど、そのみんなの中でも一定レベルの容姿が求められるという現実がある。子どもたちの間には負け組になってしまう切迫感があり、それが受診増に拍車をかけているのかもしれません」

 一方で、見た目で人を判断し評価する「ルッキズム」(外見至上主義)が問題視されることも増えてきた。前出の入江さんは長女の整形に対し、母親として、女性として、複雑な思いを抱いていると明かす。

「コンプレックスを解消して明るい青春を送ってほしいと思って、整形を許可しましたが、これでよかったのだろうかと実はモヤモヤしています。美しさにはいろいろな種類があるし、容姿で女性の価値が決まると思ってほしくないんです。いつか機会を見つけて、長女とそんな話ができればいいなと思っています」

(取材・文/千羽ひとみ)