努力を重ね、最優秀成績者の1人として卒業した62歳の男性(画像は『Long Beach Post 2021年2月16日付「‘If I can do it, anyone can’: CSULB grad’s journey from addict to A-student goes viral」(Photographs by Miguel de la Rosa)』のスクリーンショット)

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「こんな私でも変わることができたから、誰でもできる」 そう明かした男性は、若い時から薬や暴力が蔓延る世界に足を踏み入れてしまい、人生の半分にあたる30年以上を獄中で過ごしてきた。それでも自分を信じ続けてくれた亡き母の思いを胸に、過去を清算するためのけじめとして大学へ進学、このほど優秀な成績で見事卒業した。『ABC7 News』などが伝えている。

米カリフォルニア州在住のジョセフ・ヴァラデスさん(Joseph Valadez)は、62歳でカリフォルニア州立大学ロングビーチ校の社会学部を卒業した。この年齢で卒業したということだけでも驚きだが、ジョセフさんは 最優秀成績者の1人である“President’s Honor List”として表彰されたのだ。

同大学では各学期に12単位以上を受講し、その成績を表すGPA(最大4.0)が3.75以上だった人が表彰されるというシステムだ。

アメリカの大学では3.5以上の高いGPAを維持するために予習復習を欠かさず、授業では積極的な質問や発言、さらに提出物の期限厳守はもちろんのこと、そのクオリティも高いものが求められる。ジョセフさんはこれらのことをコツコツと努力し続けて優秀な成績をおさめたのだ。

ここまで聞くと「元から真面目な性格だったんだろう」と思う人もいるかもしれないが、実はそうではない。ジョセフさんは11歳の時に薬物にのめり込み、そのままギャングのメンバーと繋がりを持つようになってしまった。そして薬物依存に陥っては投獄されるという生活が、約38年間も続いたという。

「私が犯した罪は、全て薬物の売買に関わるものでした」と明かすジョセフさんはこれまで40回も投獄されたが、2013年の54歳の時に負のスパイラルから抜け出すことを決意した。しかし長年の習慣を1人で立ち切るのは簡単なことではなかった。

「知り合いに連絡して助けを求めてみましたが、私を必要とする人は誰もおらず、誰1人助けてくれる人もいませんでした。」

希望を失いかけていたジョセフさんだったが、同州アナハイムにある依存治療センター「Salvation Army Anaheim Adult Rehabilitation Center’s」から更生プログラムの話を持ちかけられた。そして1年間のプログラムを終えたジョセフさんは、同州コスタメサにあるオレンジ・コースト大学に入学、その後カリフォルニア州立大学ロングビーチ校に転校し、好成績で卒業したのだ。

ジョセフさんは『ABC7 News』のインタビューに、嗚咽を漏らしながらこのように述べている。

「母が亡くなってから14年が経ちます。母はどんな時も私に対して希望を捨てず、『お前は頭が良い子だから、何にでもなれるよ』と言い続けてくれました。優秀な成績で大学を卒業できたこの姿を、母にも見せたかった。」

ジョセフさんの母アニータ・ヴァラデスさん(Anita Valadez)は、薬物と暴力に溺れて監獄とホームレス生活を繰り返すジョセフさんに優しい言葉をかけ、見守り続けていた。

「私みたいな人間は、間違ったイメージが付きやすいです。私はそのイメージを変えたいと思いました。」

そのように明かすジョセフさんは現在、同大学の博士課程に進むための申請をしているそうで、「こんな私が変わることができたのだから、誰だって変わることはできるんです。私は誰かのモチベーションや希望となり、助けていきたいと考えています。それがこれからの私の役目なのです」と前向きに語っている。

画像は『Long Beach Post 2021年2月16日付「‘If I can do it, anyone can’: CSULB grad’s journey from addict to A-student goes viral」(Photographs by Miguel de la Rosa)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)