走りも積載性もほしいという欲張りな夫婦にオススメなモデル

 クルマは走ってナンボでしょ、という男性に限って、クルマにはまったく興味がなかったり、AT限定免許しか持ってなかったり、高速道路は怖くて運転できない、なんて女性を伴侶とすることも少なくないですよね。お互いに、自分にはないものを持っているところに惹かれ合うものなのでしょうか。

 それはそれで良いことですが、困るのは「さぁ、我が家もクルマを買いましょう」となったときです。とくに都心部では一家に1台しか所有できないことも多いですから、夫婦で共用するとなると、たいていはどちらかが希望をガマンすることになりがちです。ダンナさまはワインディングを楽しめるようなスポーティなクルマが欲しいのに、買い物のアシが欲しいだけの奥さまは「そんなの私、運転できないわ」と突っぱねるわけです。とくに、マニュアル車なんかを候補に挙げた日には、「ハァ?」と呆れられる可能性大。

 そこで注目したいのは、AT車で比較的コンパクトサイズで誰でも運転しやすいのに、ちゃんと走ればメチャメチャ楽しくて、荷物もしっかり積めるという生活密着型のスポーツモデルたち。死んでもマニュアル車がいいという人は仕方ないですが、最近はAT車だからって操る楽しさが感じられないなんてことはないし、むしろ手もとのパドルシフトなんかでヒュンヒュンと小気味よくシフトチェンジできて、気分はF1レーサーなクルマも多いのです。スポーツモデルはマニュアルトランスミッションじゃなきゃ、という古臭い固定概念さえ捨てれば、奥様の希望も叶えつつ、休日が待ち遠しくなるようなクルマを手に入れることも可能になるのです。

1)トヨタ・ヤリス

 まず1台目のオススメは、もう間もなく発売になる、トヨタのヴィッツ改め新型ヤリス。もちろん、走り好きならWRCを闘うために特別装備が山盛りのGRヤリスが欲しいところですが、そちらは6速MTだし、見るからに玄人っぽい内外装で奥様には顔をしかめられることでしょう。でも、通常のヤリスだって十分に走りを突き詰めたモデルになっているのでご安心を。

 エンジンは1リッターと1.5リッターのガソリン、1.5リッターのハイブリッドがあるのですが、操る楽しさをもっとも優先するなら、1リッターモデルがオススメです。素直なハンドリング、目一杯使って走り抜ける高揚感は、このクラス随一の座を奪還したと言っていいでしょう。奥様にとっても、コンパクトで運転しやすいし維持費もリーズナブルだし、満足度は高いはずです。

2)日産ノートe-POWERニスモ

 次に同じくコンパクトカーで検討するなら、エンジンを発電用のみに搭載してモーターで駆動するという、未来の走りの楽しさをもたらしてくれる、日産ノートe-POWERニスモはいかがでしょう。こちらは日産のモータースポーツDNAを色濃く反映したNISMOのチューニングが施してありながら、見た目はとってもさりげないスポーティさで、奥様が普段の買い物などに使うにも抵抗ナシ。そこがいいですよね。

 ただし、走りのほうは話題のワンペダル走行、e-Pedalで新たな世界観が感じられ、0km/hからフルトルクを発生するモーターならではの爆発的な加速にはびっくり仰天。たちまち病みつきになるはずです。もともとノートは、見た目よりずっと広くて快適な後席や、フロアを二段階に変えられる使い勝手のいいラゲッジをもつことから、ファミリーで使ってもなんの文句もありません。これならきっと、夫婦の希望を両立してくれると思います。

夫婦双方の希望が叶うクルマは価格も維持費も現実的

3)スズキ・アルトワークス

 続いて、駐車場の広さや維持費などの関係で軽自動車がいいなと考えているなら、スズキ・アルトワークスを要チェックです。ベーシックなアルトでもキビキビとして元気のいい走りは手に入りますが、アルトワークスはそもそも、80年代〜90年代の全日本ラリー選手権で大活躍し、軽自動車初のシリーズチャンピオン獲得をはじめ、通算10回もトップの座に君臨した輝かしい経歴の持ち主。

 最新モデルは、現代では驚異的な670kgという軽量ボディに、特別にチューニングされた最大トルク100N・mにもなるエンジンを搭載。専用開発の5速MTだけでなく、セミATとなる5速AGSでも存分にダイナミックな走りが堪能できます。もちろん、快適な室内と使いやすいラゲッジも犠牲にしていないので、奥さまも思わずヒュンヒュンと街中をカッ飛ばしちゃうかもしれないですね。

4)スバルWRX S4 STI Sport

 そして、もう少し大きなボディサイズでも奥さまが許してくれるならば、スバルWRX S4 STI Sport。見た目はちょっとイカメしい印象にはなりますが、クルマに詳しくない奥さまなら「ま、こんなもんなのかな?」とスルーしてくれそうなギリギリの線ではないでしょうか。見る人が見れば、4本出しのマフラーなど「お!」とくすぐるパーツが奢られているので、ダンナさまとしても満足度が高いと思います。

 そして走りは、STIが100分の1秒単位でチューニングし、リニアな反応を突き詰めたハンドリングや、路面の突き上げを上手にいなしつつ、しっかりと路面を蹴り上げて駆け抜けるような、独特の乗り味。スポーティなだけでなく、上質感もあって乗り心地も良くなっているのがいいですよね。しかも、なんだか運転が上手くなったように感じさせてくれるのが、STIが得意とするチューニングです。これなら奥さまも、乗り続けるうちに運転がどんどん好きになりそうですよね。

5)ホンダ・ヴェゼル ツーリング Modulo X

 さて、最後はまだまだ人気が続くSUVから、ホンダ・ヴェゼル ツーリング Modulo Xです。Moduloは、スーパーGTなどにも参戦するホンダアクセスが手がける、匠の技術を注いで特別に仕上げた純正コンプリートカーのこと。これまでは足まわりやアンダーカバーなど空力のチューニングがメインでしたが、なんとこのヴェゼルはそれに加えて、Moduloとして初めてフロントシートを専用設計としたのがポイント。なので、運転する・しないに関わらず、座った瞬間から「あれ、なんか違う」と感じるはずなんです。しかもそれが包まれるような快適さで、奥さまもきっと気に入ってくれるはず。

 ヴェゼルはもともと、コンパクトSUVのなかでも走りの良さに定評があるモデルですが、それがさらに磨かれており、ワインディングも爽快に走れること間違いなし。ハイブリッドモデルにはAWDもあるので、ウィンタースポーツが好きなご夫婦や、積雪地域に住むご夫婦にも一見の価値アリだと思います。

 というわけで、お互いの希望がまるで違うご夫婦でも、よくよくチェックすると双方の希望が叶うクルマは、意外にあるものです。しかも比較的コンパクトサイズで、価格も維持費も常識的なモデルばかりを選んでみましたので、ぜひ検討して夫婦円満も叶える愛車をゲットして欲しいと思います。