理美容業の倒産件数

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人手不足がトリガーとなった中小規模事業者の破綻が目立つ

2019年(1-11月累計)の理美容業の倒産件数は167件と、4年連続の前年比増加となり、既に2018年(165件)を上回って過去最多を更新する勢いを見せている。

 一方、負債総額は負債10億円以上の倒産は発生しなかったが、56億円(前年同期比40.8%増)となった。理美容業ともに地域に根付き小規模運営を行う業者が多いことから、負債規模別では「5000万円未満」が全体の約9割と小規模倒産が大半を占め、1件あたりの負債額の平均は約3300万円にとどまった。

 総じて労働集約型にある理美容業界にとって、「人手不足への対応」が急務だ。今年9月には、フィットネスクラブ併設型のエステサロンを全国30店舗経営していた(株)ビーゲイト(神奈川県川崎市麻生区)が事業を停止した。同社は多店舗化に見合う集客を得られず、エステティシャンの確保も進まなかったことが主な破綻要因となった。主な倒産企業の事例で挙げた(株)アキュートリリー(東京都渋谷区)においても、人手を確保するための賃金引き上げが資金繰り悪化を招いた格好となり、人手不足がトリガーとなった中小規模事業者の破綻が目立った。

参入障壁が低いゆえの競争激化 中小規模事業者の淘汰進む

 こうした業界環境の中、エステ大手各社は人材確保や育成等サービス面を拡充して業務効率化を図る向きがある。これまでの出店拡大の見直しや脱毛エステを中心とした低価格戦略の見直しを進め、この施術単価引き上げ分を、予約・施術面の性能向上のための投資に充当する動きが見られる。

 他方、個人経営の理容業者や美容室では、店舗開設に伴う借入金の返済負担が重荷となる中、同業他店との競争激化や代表者の病気・体調不良が重なり営業体制を維持できなくなるケースが散見された。さらに、美容師の独立やフリーランスへの転身で人材確保が困難となる状況が続いているうえ、参入障壁が比較的低いため、店舗過剰化を背景に顧客獲得は厳しさを増し、体力に乏しい中小規模事業者の淘汰は今後更に進んでいくと見られる。