プレジデントオンラインは全上場企業の「平均年収ランキング(2019年版)」を作成した。調査対象会社3708社のうち、平均年収が1000万円を超える企業は98社で、昨年から11社増えた。ランキングの1位は2478万円のM&Aキャピタルパートナーズで、昨年より516万円ダウンした。一方、昨年7位だったGCAは504万円アップで3位、昨年10位だった朝日放送グループHDは227万円ダウンで32位に急落した--。

■平均年収1000万円以上の企業が増加

プレジデントオンラインは、全上場企業の「平均年収ランキング(2019年版)」を作成した。もとにしたデータは直近の年次決算期における有価証券報告書(2018年7月期〜2019年6月期)。データ抽出では企業価値検索サービスの「Ullet(ユーレット)」の協力を得た。

結果、社員の平均年収が1000万円を超えている上場企業は98社で、昨年の87社から11社増えた。内訳は、M&A助言会社や投資ファンド、メガバンクなどの金融関連が24社、医薬・化学・食品が14社、マスコミが12社、機械や住宅設備などのメーカーが12社、総合商社と不動産がそれぞれ7社、建設が5社、ITなどのコンサルが4社、IT・通信・ゲームが2社などとなった。

ランキング全体でも年収は増加傾向だ。前年のデータがない5社を除いた上位495社のうち対前年比アップは343社、ダウンは152社だった。

全上場企業のうち最も平均年収が高かったのは、昨年に続きM&Aアドバイザリーを手がけるM&Aキャピタルパートナーズ。平均年収は2478万円。全上場企業の平均年収は606万円(商江リサーチ・2018年決算 「上場企業2591社の平均年間給与」調査)だから、そのおよそ4倍だ。

■朝日放送グループHDが10位から32位に転落した理由

ただし平均年収は昨年の2994万円から516万円下がった。M&Aアドバイザリー関連企業はその年のM&Aの規模や成否によって年収が左右されるため、来年以降も同水準となるかについては不明である。

近年、この業種はランキング上位の常連だ。ほかにもGCA(3位)、ストライク(8位)、の2社がベスト10にランクインしている。しかしストライクは昨年1777万円で4位だったが、今年は1539万円で8位に沈んでいる。マイナス237万円はトップ500社でM&Aキャピタルパートナーズに次いで下げ幅が大きい。

平均年収で今年1位となったM&Aキャピタルパートナーズの従業員数は75人で、平均年齢は31.3歳とトップ500社の中で最も若く、平均勤続年数も3.3年と短い。同社は国内の中堅・中小企業オーナーを対象に、事業承継を目的としたM&Aに注力。調剤薬局に強みを持つほか、住宅や建設、コンサルティング会社など、豊富なM&A実績を誇る。

それ以外の業種では金融やテレビ局、商社などが上位を占めた。商社は軒並み平均年収がアップ。社員の平均給与は三菱商事(1607万円)を筆頭に伊藤忠商事(1520万円)、三井物産(1430万円)、丸紅(1389万円)と続く。

15位のテレビ東京HDは1411万円で前年比19万5000円増、19位のテレビ朝日HDは1387万円で前年比10万7000円増となった。

一方、32位の朝日放送グループHDは前年よりマイナス227万8000円の1251万円で昨年10位より転落。トップ500社で3番目に大きな下げ幅となった。その理由について、同社の総務局長は「従業員の年収が急に下がったわけではない。2018年4月よりホールディングス制に移行し、従業員数が641名から53名に減少した。その結果、管理職の割合は増えたものの、時間外手当が多く支給されていたディレクターなど現場で働く人間が事業会社に移っていった。平均年収を算出する際の対象者は、管理職と経理や総務など管理部門だけになったため、数字の上では平均年収が下がった」と説明する。

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鎌田 正文(かまた・まさふみ)
ビジネスリサーチ・ジャパン代表
1995年、ビジネスリサーチ・ジャパン設立。金融・流通・メーカーなどの各分野から経済全般まで、幅広く取材、執筆。『2012年版 図解 これから伸びる企業が面白いほどわかる本』など、業界研究の著作多数。
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(ビジネスリサーチ・ジャパン代表 鎌田 正文 図版作成=大橋昭一)