黒毛のマウス、起源は江戸時代のペット用ネズミ 国立遺伝学研究所
遺伝情報の欠損によって生じるアルビノ等の毛の変色。マウスにも、毛が黒色に変化する「古典的変異」が発生しうる。国立遺伝学研究所は1日、この変種が江戸時代に普及した愛玩(ペット)用ネズミから遺伝的に引き継いだことが判明したと発表した。
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■変異の原因だと長年信じられた中南米のマウス
マウス遺伝学において、毛が黒色や茶色、白色に変異する現象は古典的変異と呼ばれている。毛が黒色に変異する原因は1994年に報告された。それによると、中南米に生息するげっ歯類「アグーチ」が起源だという。アグーチは、毛の1本1本が根元から先まで黒色、黄色、黒色の特徴的なパターン(野生色)を形成する。野生色の原因である「Agouti」と呼ばれる遺伝子内に、「VL30」と呼ばれるレトロウイルスに由来するDNA配列(レトロウイルス様配列)が感染し、野生色から黒色に変化したという。
毛が黒色に変化した原因はVL30だと四半世紀のあいだ信じられてきたものの、VL30の配列の中には未知の配列も含まれており、黒色に変化する等の発現に異常がみられる分子メカニズムは不明だった。
■黒色への変異の起源も特定
国立遺伝学研究所の研究グループは、Agouti遺伝子上に挿入した配列を詳しく解析した結果、VL30の中にさらに入れ子状に挿入された別のタイプのレトロウイルス様配列「β4」の存在を突き止めた。研究グループは、ゲノム編集でβ4を正確に欠損させたマウスを作製したところ野生色に戻ったことから、β4が黒色に毛が変異する原因だと判明した。研究グループはさらに、さまざまな実験用マウスと野生マウスにおけるAgouti遺伝子にVL30やβ4等の配列の挿入があるかを確認した。その結果、野生色を示すヨーロッパ産のマウスには配列の挿入は確認されず、アジア産のマウスはVL30のみ配列の挿入が確認された。
一方、江戸時代に存在していた日本産の愛玩用マウスから、VL30とβ4の入れ子状の挿入配列をもつことを発見した。このことから、標準的な実験用マウスでみられる黒毛の変異は、日本産の愛玩用マウスから広まったことが判明した。
今回の研究は、マウス遺伝学の古典的変異の仕組みを明らかにしただけでなく、レトロウイルス様配列の挿入による発現異常のメカニズムとゲノム進化の理解に貢献するだろうと、研究グループは期待を寄せている。
研究の成果は、英科学誌Communications Biologyにて2日に掲載されている。
