英国におけるGT-R「ゴジラ」 ハコスカ+R32スカイライン 50周年比較試乗 前編
もくじ
ー 誕生から50年を迎えたスカイラインGT-R
ー 英国にも存在するKPGC10「ハコスカ」GT-R
ー 両車に共通するGT-Rを象徴する特徴
ー 3500〜7000rpmのフィーリングは虜になる
ー 技術大国のピークだった時代を映すR32 GT-R
誕生から50年を迎えたスカイラインGT-R
近年では、ビデオゲームからハイパフォーマンス・モデルの名前を覚えることも珍しくない。英国人にとっては、日産スカイラインGT-Rが2019年で誕生から50周年を迎えるということは、驚くべき事実だったりする。初代GT-Rが誕生したのは1969年。生産台数そのものも少なく、輸入された台数もわずかだったこともあり、日本からやってきた最古のゴジラは、英国へは大きな影響を与えなかった。
エンスージャストにはハコスカとして知られる初代GT-Rは、今に継承される血統をしっかり備えていた。デビューから3年足らずの間に日本でのツーリングカーレースで、50勝以上を挙げる活躍を残している。ちなみにハコスカは、箱車の「ハコ」とスカイラインの「スカ」の造語だ。

一方でBNR32スカイラインGT-R、通称R32型は、ヨーロッパにおいても比較的馴染みがあるモデル。こちらも既に、2019年で誕生から30周年を迎えるが、残念ながら英国へは正規輸入されていない。モデルとしては4万台以上が製造されており、1990年台後半からの並行輸入ブームが手伝って、英国でもしばしばR32スカイラインを目にすることがある。
オーストラリアのホイールマガジンは、オーストラリアで開催されていたツーリングカーレースを席巻したR32スカイラインGT-Rのことを「ゴジラ」と表現。プレイステーションのゲーム「グランツーリスモ」シリーズに登場したR32は主役級の人気を獲得する。いまもゲームの中で愛車として楽しんでいる読者もいるのではないだろうか。コンピューター制御による当時としては先進的な技術を搭載したR32GT-Rは、コンピューター・シュミレーションゲームにもうってつけだ。
英国にも存在するKPGC10「ハコスカ」GT-R
英国に限らず各国で、「スカイライン」という名前は日本車自体の代名詞でもある。英国フォードにおける、シエラやモンデオのようなもの。GT-Rはその名前に続くグレード名だった。その伝説ともいえる物語は、1965年に発表された2世代目のスカイライン2000GTから誕生した。まだ日産ではなく、プリンス自動車が製造していた時代だ。
日本では自動車創成期にあった当時、政府からの強い働きかけもあり、日産とプリンスとが合併。その後、3代目スカイラインをベースにしたPGC10型の初代2000GT-Rが誕生する。4ドアサルーンのボディで、1969年に発売されると、日本国内のツーリングカーへ大きなインパクトを与えた。

魅力的なスタイリングをまとったクーペボディのGT-Rは1970年に誕生。今に続くGT-Rの礎を築いたといって良い。4ドアサルーンと比較してホイールベースは70mm短縮され、車重は20kgほど軽量化。コードネームには「K」が追加され、「KPGC10型」と呼ばれるようになる。
4ドアも2ドアも、日本国内のツーリングカーレースで大活躍を果たし、トヨタ1600GTやマツダRX-3に対して圧倒的な強さを見せつける。この初代GT-Rに搭載されていたエンジンは、プリンス自動車が開発した、ミドシップのレーシングプロトタイプR380スポーツに搭載されていた、2ℓの直列6気筒エンジンのデチューン版。
ダブル・オーバーヘッドカム(DOHC)にウェーバー製キャブレターを3基搭載し、各シリンダーには4本のバルブが搭載された24バルブユニット。最高出力は160psでリミテッドスリップデフを介して後輪を駆動。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式で、リアはセミトレーリングアーム式が採用されている。
両車に共通するGT-Rを象徴する特徴
英国の輸入業者、トルクGTがサッカー選手のためにクルマを日本から輸入したのは数年前。英国に存在するわずか4台のハコスカGT-Rのうちの1台となった。価格は最低限、日常的に走れるような状態で13万ポンド(1768万円)、状態が完璧なオリジナルモデルなら20万ポンド(2720万円)ほどは必要だという。
一見するとハコスカ・スカイラインとずっと現代的なR32スカイラインとの間に、エクステリアデザインでの関連性を見出すのは難しい。両車に20年以上のブランクがあることにもうなずけるだろう。しかし、じっくり観察していくと兄弟関係のつながりも見えてくる。力強く水平に伸びるボディラインと、同じく水平に伸びるルーフライン。どちらも実用的な2+2のパッケージングを作っている。

大きなドアはピラーレス。長方形のシルエットを描くボンネットとトランク。そして、スカイラインの特徴でもある4灯のテールライト。古いクルマの方が、今見るとイタリアンな雰囲気も漂い、エレガントだ。ハコスカでは一般的なように、工場出荷時のスチールホイールは15インチのアルミホイールに交換してある。ボディにボルトオンされた幅の広いオーバーフェンダーは、メーカーが取り付けた純正品だ。
低い位置のバケットシートに座り、20度ほど角度がつけられた、垂直に近いダッシュボードに向き合う。黒いプラスティック製の内張りに木目調のパネルが取り付けられ、シートはビニール・レザー張り。細身の3スポーク・ステアリングホイールと、つぼみのチューリップのような細長いシフトレバーは操作しやすい位置にある。
3500〜7000rpmのフィーリングは虜になる
アシストの付かないステアリングは、太いタイヤを履いていることも加わり、低速域ではかなり重い。しかしスピードを上げていくと徐々に軽さが出てくる。ステアリングのレシオは標準のスカイラインよりだいぶクイックに設定してあり、俊足なGT-Rに合わせるように、ハンドリングのレスポンスが高められてある。
クラッチは比較的軽くつなぎやすい。シフトノブは小さなクリック感を伴って、ゲートを滑らかに動く。柔らかめのサスペンションは標準装備のままだが、多くの場合は車高が下げられ、硬く改造されている。インスツルメント・パネルには双眼鏡のような円形のパイプが並び、タコメーターのレッドゾーンは7500rpmと高回転で切ってある。

ただし、今回のクルマは、イングランド北東部のダラムにあるGT-Rヘリテージ・センターで最近リビルドされたばかりだから、あまり回転数を上げないようにしておく。ヘリテージ・センターのボス、デーブ・ウォーレナーによれば、3500rpm以下のパフォーマンスは大したことはないが、そこを超えるとエグゾーストノートの音質が変化し、7000rpmまでのフィーリングは虜にさせてくれるユニットだと話す。
「ハコスカも今でも飛ぶように走ります。GT-Rのボディ自体は標準のスカイラインと大きな違いありません。ハコスカGT-Rの価格の大部分は、桁外れのSR20エンジンが占めていると思います。しかも手に入れたとしても、リフレッシュに5万ポンド(680万円)ほどは掛かるんです。GT-Rのシャシーのポテンシャルを引き出すには充分な力強さを秘めていて、メカニカルグリップにパワーが勝つほど。コーナーで攻め込んでいくと、オーバーステアになりやすい性格も備えています」 とウォーレナーは話す。
技術大国のピークだった時代を映すR32 GT-R
ハンドリングは活発で評価できるものでも、ブレーキは致命的にプアだ。シングルピストンのキャリパーが掴むのはフロントのディスクのみ。リアはドラムブレーキで、しかもマスターシリンダーは小さく、押し出されるブレーキフルード量も限られている。カーブのだいぶ手前から減速し、コーナリングの早い段階からスロットルを開けていくスタイルが、初代GT-Rを楽しむ方法なようだ。
GT-Rとしては2代目に当たるKPGC110型が製造されたのは、オイルショックが襲う1973年初めの3ヶ月間のみ。その後もスカイラインの高性能版はリリースされていたが、GT-Rを名乗ることはなかった。しかし1989年、満を持して3代目となるR32スカイラインGT-Rが登場すると、ハイテク満載のマシンに市場は驚きを隠せなかった。

エクステリアデザインは美しいというよりも獰猛という表現が適切。ジェット戦闘機のアフターバーナーのように光るテールライトと、アニメ「ガンダム」に登場するロボットのようなスクエアなスタイリング。マッスルカーのような雰囲気さえ漂わせ、日本という国が技術大国のピークだった時代を映しているようにも見える。
エンジンは1969年の伝統を受け継ぐ直列6気筒。しかし2基のパラレル・ターボを搭載している。驚くことに1989年の同時期に、日産はV型6気筒ツインターボを搭載したフェアレディZ300ZXもリリースしているほか、電子制御4輪駆動システム「アテーサE-TS」と後輪操舵システム「スーパーHICAS(ハイキャス)」という技術も発表された。日産の黄金期状態だったといえる。
R32スカイラインの続きは、後編にて。
