「金で幸せにはなれない」大病院の跡取り息子が選んだ、埼玉出身地味女の正体
結婚。
それは多くの20代、30代の人々にとって関心の高い出来事の一つだ。
しかし結婚したいと心から望んでも、いざそれが実現しそうになると、直前で怯む人は多い。
「本当にこの人でいいの?」と考えたり、相手の家族とうまくいかなかったり、結婚式の準備で揉めるカップルも多い。
そう、それが世に言う“マリッジブルー”。
マリッジブルーにハマってそのまま抜け出せない人、無事結婚まで辿りついた人さまざまだが、29歳という節目でマリッジブルーに陥った人たちに焦点を当てる。

内科医、30歳。跡取り息子が夢見た、普通の恋愛
「裕子さんはどちらの大学出身なの?」
そう聞かれたときから、嫌な予感はしていた。
僕の実家は代々続く大病院。都内の医学部を出て私立病院に勤め恋に落ちたのが、同じ職場にいる看護師の裕子だった。
医者という職業柄出会いの数は少なくて、周りも看護師と結婚するか医者同士が多い。
彼女は看護学校を出て、今の私立病院に勤務しているごくごく普通の女の子だ。そんな彼女を、僕は大好きだったし、お互い真剣に恋していたはずだった。
…母親に会わせるまでは。
病院の跡取り息子が苦しめられる母親の存在とは?
母親との面会での質問攻撃。笑顔を絶やさない彼女だったが…
「裕子さんは、どちら出身なの?」
「裕子さんは、どちらの大学に通ってらしたの?」
そんな彼女の質問攻めが行われたのは、帝国ホテルの『レ セゾン』だ。母親は、ここのフレンチが好物で、東京に来る時は必ずここを使う。藤色の着物を綺麗に着こなし、しかしこの場にはその一寸の隙もない着物姿は威圧的に映るだけな気がした。
彼女に会わせたのは、桜が美しく咲き乱れる4月の、まだ寒さが残る日だった。可哀そうに、質問攻めにあった彼女は身を縮こませていた。
「埼玉です。」
「○○専門学校です。」
大人しそうに見えるが芯の強い彼女は、その質問一つ一つに丁寧に答えながら、笑顔を崩さなかった。
私立一貫校から公立高校へ。裕福な環境に馴染まない男
僕の家はかなり裕福なほうだった。そのことに気付いたのは、小学校から通っていた一貫校を出て、公立の高校に入ったときだ。
両親に言われるがままに受験して通っていた、金持ちの子息子女が通う一貫校に僕は昔から馴染まなかった。うちの両親を見て育ったからかもしれないが、決して人は金で幸せになるものではないと思う。
病院を経営しながら政界ともパイプがある父親は成功者だったが、浮気を繰り返していたし、母親は浮気を知りながらも別れることはなく、仕返しのように高い着物や宝飾品を買い漁った。

そんな家庭で育った俺は、「金があるからと言って幸せになれる訳ではない」という思いが昔から強くあった。そして、出来る限り質素で地味な女と付き合うことを好んだ。そして、出会ったのが裕子だった。
裕子はとりたてて可愛い訳ではない。埼玉のサラリーマンの家庭を出て、看護師の専門学校に行ったごくごく普通の女だ。でも、俺はそれがとても気に入っていた。
社会人になってから両親とはできるだけ距離を取っていた。できれば結婚も両親に会わせることなくひっそりとしたかったが、さすがにそれが許される訳はない。
プロポーズして両親に会わせる段階になったとき、俺はとても憂鬱な気分になった。
面会後の2人の仲はどうなったのか!?
平凡だったはずの元カノ。実は彼女にも策略が…?
母親との面会後、予想通りぎくしゃくし出した。裕子は普段から冷静で取り乱すことはなく、その食事会後も「あんな母親でごめんな」と謝っても首を傾げながら微笑むだけで、罵倒してくれた方がどんなに楽か、とこちらが思っているのを知る由もないだろう。
案の定、1週間後に彼女に振られた。
理由は深くは語らなかったが、「あなたと私は釣り合わないかも」ということを言われて、そうではないと一生懸命説得したが、全ての言葉が上滑りして、彼女の心に届いていないのは一目瞭然だった。

あんな母親に家柄や学歴を聞かれたのだ。当たり前だろう。
僕はその後、とても憂鬱な気分になった。この母親がいる限り、一生平凡な幸せを望めないのかもしれない。
人にあれこれ言っておきながら、母親は秋田にある農家の娘だ。美人なので地元ではかなり有名だったらしいが、彼女が誇れるのは容姿だけだろう。
そんな母親は「病院長の妻」という肩書を決して手放さなかった。それは容姿だけが取り柄の女が、ようやく手にした幸せだったのだろう。だからこそ、裕子のような地味な女が易々と同じ地位を手に入れることが許せなかったはずだ。
しかし、僕はその後衝撃的な事実を聞かされる。
裕子は、その後多くの食事会に参加し、一回り上ほどのIT企業の役員と結婚したという。聞くところによると、見た目によらずとても金にうるさい女で、僕と別れた後は経営者にターゲットを絞っていたらしい。
それを聞いて、もし大病院の跡取り息子じゃなかったら、僕と付き合っていなかったのだろうかと考えてしまった。
地味な顔をした女と派手な美人の母親。
2人とも風貌はまるで違うが、打算的でしたたかな女だということは全く同じだ。
もし彼女と結婚していたら、第二の母親を生み出していたのかもしれない。もうしばらく、結婚は懲り懲りだ。
次週12.14 水曜更新
結婚前の火遊びは男だけじゃない…?
