成河「一手間かけ」ハムレット、演出・ニシサトシと10年ぶりタッグ…「翻訳四つ並べ」戯曲読み解き
俳優の成河(そんは)の勢いが止まらない。
今年はじめに自治体を擬人化したキャラクターを演じた後、現実と虚構が入り交じった一人芝居で観客の度肝を抜いた。次に控えるのはシェークスピアの名作「ハムレット」。だがしかし、普通に表題役を演じるわけでは当然ないらしい。(小間井藍子)
成河は法政大在学中、東京大駒場キャンパス内にある演劇サークルで芝居を始めた。その姉妹劇団にいたのが今回演出を手がけるニシサトシだ。「僕が1年のころ、東大の6年生で劇団の小屋に“主(ぬし)”のように寝泊まりしているのがニシさんだった」と振り返る。
その後、成河はつかこうへい主宰の劇団を経て若手実力派俳優として注目を集めていく。一方、ニシは演劇界を離れたり戻ったりしつつ、世界文学史における演劇とは何か研究を続けてきたという。そんなニシから「遊んでみないか」と誘われて「マクベス」を池田有希子との漫才形式で上演したのが2016年。ニシとのタッグはそれ以来10年ぶりとなる。
2人の特色は徹底的に戯曲を読み解く「読み下(くだ)し」と呼ぶ作業。「四つぐらい翻訳を並べて、時には原典もたどります。するとやっぱりシェークスピアって日本語化することが困難だと分かる」。かつては、有名な翻訳家が手がけた戯曲をそのままやるべきでは、との思いもあったが、07年に英演出家ジョン・ケアードが手がける「夏の夜の夢」に出たことが転機となった。日本を代表する翻訳家・松岡和子が「ごめんね、これじゃ言いづらいよね」と躊躇(ちゅうちょ)なく訳の変更について議論するのを目の当たりにしたからだ。「彼らは読み物として世に出すことが仕事。芝居として出すのは我々ですから、そこは汗をかいて一手間かけなくては」
デンマーク王子ハムレットによる、父を殺した叔父への復讐譚(ふくしゅうたん)。今回の方向性としては抽象空間で役を俳優5人に振り分け、ハムレットと、恋人オフィーリアの父ポローニアスを“対”の存在として置く。「清濁併せのんだ人間ポローニアスと、併せのむかのまざるか悩む若者ハムレットという構図。善人も悪人もいないことが自然に伝えられたら成功でしょうか」
今年2月にKAAT神奈川芸術劇場「冒険者たち」シリーズで「カナガワ県」を演じ、4月には一人芝居「ナルキッソスの怒り」が話題を呼んだ。独創的な役作りが今回に生きるのではと問うと、「むしろニシさんとの“研究”が先にあって、それらをやる上で役立っている」と即答。成河の原点がうかがえる舞台が期待できそうだ。
東京・目白のシアター風姿花伝で22日〜7月12日。
