スマホからミサイルまで欠かせない…世界が求める「半導体」の供給を脅かす「重要鉱物」という死角

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スマートフォンから自動車、医療機器、そしてミサイルまで、現代のあらゆる製品に使われている半導体。しかし、先端半導体を製造できる国はわずか数カ国に限られ、「地経学(Geoeconomics)」の本質が表れる戦略物資にもなっている。そんな半導体産業の全体像と、懸念されるサプライチェーン途絶リスクにどう備えるかを読み解く。

※本稿は、国際文化会館 地経学研究所・編『世界の構造と経済の本質をイッキにつかむ 超図解 地経学』(あさ出版)の一部を再編集したものです。

「地経学」の本質が表れる戦略物資

地経学を考えるうえで欠かせないのが半導体です。まさに、経済安全保障政策の「一丁目一番地」にもなっており、昨今、特に注目が集まっている産業分野です。

半導体とは、導電体と絶縁体との中間の性質を持つ物質を指し、そこに特殊な作り込みを行うことで、電気を通したり、止めたりすることを可能にしたものです。

現在では、シリコンウェハの上に、複雑な電気回路を何層にも積み上げることで、半導体チップは極めて高度な計算能力を持つまでに進化しました。

誰もが持つスマートフォンにも、家電製品にも、自動車や鉄道、医療機器にも、さらにはミサイルや人工衛星にまで半導体が使われており、半導体の性能がその製品の性能を重大に左右するという状況になっています。

そんな半導体ですから、世界の国々が、できるだけ自国に必要な分量を確保したい、可能ならば、自国内で生産をしたいと考えるのは自然なことですが、それにもかかわらず、半導体を製造できるのは、本当に限られた国のみです。

特に高性能の先端ロジック半導体を製造できるのは、なんと、米国、台湾、韓国、日本くらいしかないと言っても過言ではないほど、集中しているのが実態です。

限られた技術、製造能力を世界が求める。半導体こそ地経学の本質が表れる分野なのです。

バリューチェーンの全体像を理解する

半導体のサプライチェーンを考える際に重要なのが、業界のバリューチェーンの全体像を理解する、ということです。

サプライチェーンという言葉は、多くの場合、製造業の観点で川上にある原材料の供給ルートについて議論するときに使う言葉ですが、実際には、製造された半導体チップが川下方面に流通していくルートもあります。

コロナウイルスが蔓延した頃に、自動車向けの半導体や交通系ICカード向けの半導体が不足したといったことがありましたが、これは川下のほうの、「製品としての半導体チップのサプライチェーンの問題」でした。

日本も、先端半導体の製造能力を他国に依存していてはいけないと、TSMC(台湾積体電路製造)を熊本に誘致したり、Rapidusを北海道に設立したりといった対応をしてきています。

一方で、半導体を製造する際に、川上からの原材料の供給が途絶するリスクも考えられます。こちらは、「半導体製造の原材料サプライチェーンの問題」と言えます。

そもそも半導体のバリューチェーンを川上から辿っていくと、様々な原料の「採掘」「製錬」「加工」という事業者が並んで存在しています。そこで一旦、部品や化学品材料に加工されたものが、製造装置や製造材料そして副資材などとして、半導体チップの製造工場の中で使われていくということになります。

半導体の製造では、髪の毛の10万分の1というナノの細さで回路を転写したり、溝をガスで掘ったりといったことが必要になります。極めて高性能な装置、極めて高純度な材料が揃ってこそ初めて高性能な半導体チップが製造できるのです。

懸念されるサプライチェーンの途絶

そして、それら装置メーカーや材料メーカーを川上で支えるのが、材料加工のメーカー群になります。

特に、純度がイレブン・ナイン(99.999999999%)のシリコンウェハを作ったり、各種の薬液・洗浄液などをファイブ・ナイン(99.999%)の純度で作ったりするメーカーや、真空状態を作ったり、プラズマを発生させたり、ウェハを吸い付けて搬送したりする数々の要素技術のメーカーは戦略物資である半導体製造において重要な役割を担っています。

半導体の製造は難易度が高く、技術・ノウハウを持っている企業や社員も世界的にかなり限られているということもあり、多くの部分で、サプライチェーンの途絶が懸念されています。

特に、昨今話題となっているのが、装置・材料の様々なところで使用される可能性のある重要鉱物です。二次電池や永久磁石と比べても、半導体製造に利用される重要鉱物は、その数と質において、さらに把握・対応が難しいと考えられています。

外国による重要鉱物の輸出規制に照らしても、ガリウムやゲルマニウム、アンチモン、インジウム、タングステン、モリブデンなど、半導体製造の工程のどこかで微量ながら使用されているという鉱物もあり、それらのサプライチェーンの洗い出しや緊急対応策の策定などが課題となっています。

サプライチェーン途絶にどう備えるか

では、サプライチェーン上の供給途絶については、どのような対策を採ればよいのでしょうか。国レベルと企業レベルとで異なる対応が考えられます。

まず国レベルですが、日本の場合、経済安全保障推進法の重要物資の条項により、半導体を含む国民生活や経済活動に不可欠な物資についてのサプライチェーンの強靭化の対応を法制化しています。

企業としても、こうした国家支援の枠組みも活用しながら、自社としての製造ライン停止、営業損失の計上、製品生産継続不能といった事態を起こさないために、独自の対応を考えていく必要があります。

主な対応策としては、在庫の積み増しや代替調達源の探索、新規鉱山の開発、代替材料技術の開発、単位当たり使用量の低減、リサイクルの推進など、様々な方向性が挙げられます。

それぞれの企業において、自社のどのような材料が、なぜサプライチェーンの途絶の恐れのある重要鉱物に該当するのか、その対応策をどうすればよいのかなど、引き続き真剣に考えていかなくてはなりません。

また一企業では対応が難しいものは、政府の力を借りたり、同志国との間でサプライチェーンを相互補完的に再構築したりすることも重要です。サプライチェーンの問題の解決には、まだまだ時間がかかると考えられます。

地経学リスクがますます高まったりした場合には、さらに大きな喫緊の問題として議論されることが増えていくでしょう。

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