日本食ブームなのに日本酒がピンチ 蔵元の倒産・廃業が続く中で若手の新しい取り組みも
和食文化の1つ、日本酒が危機に瀕している。国内の日本酒(清酒)消費量は1973年がピークで、現在は約4分の1に落ち込み、メーカーである蔵元も倒産や休廃業に歯止めがかからない。
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帝国データバンクがまとめた「清酒製造業」(日本酒製造、蔵元)に関する調査結果によると、2024年度の蔵元約1000社の利益合計は93億円にとどまり、「赤字」「減益」と合わせた「業績悪化」の割合は6割を超えている。
日本酒を含む伝統的酒造りは2024年、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録され、日本食ブームで日本酒の海外輸出は増えている。日本酒造組合中央会によると、2025年の日本酒の輸出量は前年比8%増、輸出額は6%増で、いずれも過去最高だった2022年に迫る水準だ。また、輸出先は過去最多の81か国・地域に広がっている。
国内の日本酒危機の主な要因は、人口減と若者のアルコール離れだ。かつて宴席では日本酒が当たり前だったが、ビールやハイボールなどの選択肢が増え、日本酒は選択肢の一つにすぎない存在になった。日本酒消費の主力だった団塊の世代でも飲む量は減っている。
若手が世界に向けて日本酒を発信
そんな中、若手の中から日本酒文化を世界に広めていこうという動きも出ている。日本酒の普及や地方創生を手掛けるスタートアップcamoを立ち上げたカワナアキ氏は、これまで全国200蔵以上を取材して発信してきた。イベントプラットフォーム「SAKEJUMP」では、イベントやECサイトを通じて酒蔵の価値向上を推進する。2025年から日本酒の未来を語るカンファレンス「SAKE LEADERS SUMMIT」を手掛け、現場の声を政策にまで提言している。
例えば、「日本酒市場の再興に寄与したいと考える新たな造り手たちがいる一方で、戦後約70年新規の免許が付与されておらず、よりコストとプロセスのかかるM&Aしか選択肢がない状態」と、国の政策が硬直していることを指摘する。
そのカワナアキ氏とJR東日本グループ・ルミネのタイアップによる日本酒イベント「混祭2026」が、10日から高輪ゲートウェイ駅前のNEWoMan高輪で行われている(14日まで)。
北海道から鹿児島まで、5日間日替わりで総勢100を超える蔵元が集結する。日本酒だけでなく焼酎など「日本のおさけ」を、来場者は造り手と直接交流しながら楽しむことができる。おつまみやノンアルコールの甘酒アレンジドリンク、かき氷なども販売されるので、飲まない人でも楽しめる内容になっている。
9日に行われたオープニングイベントであいさつしたカワナアキ氏は「毎月、全国どこかの蔵元3つずつ廃業している状況」と業界の長期低迷を訴えた。さらに、能登の復興イベントを手がける中で「能登にあった11蔵元のうち3つが廃業した」と明かした。
カワナアキ氏によれば、業界の売り上げはトップ10社が全体の9割を占める状況で、海外の日本酒ブームの恩恵を受けられるのは輸出力を持つ有力ブランドに限られており、大多数の中小蔵元には届いていないということだ。
あいさつに登壇した新潟・柏崎の阿部酒造6代目、阿部裕太氏は業界の活性化には新規プレーヤーが不可欠との考えから研修生制度を設け、酒蔵創業を志す人材の育成・支援に力を入れているという。和食文化継承のためにも、こうした若手の新しい取り組みに期待したい。
文/横山渉 内外タイムス
